『春の花』

アルベール=エミール・アルティーグ

(1900)

 

 

 

***2020年1月10日の日記***

 

 

パーティー会場で、

風の彼女と私はメアリー先生に

お祝いの花束を渡すと、

 

そのあとはふたりで、

会場内の美味しそうなお料理を

物色していましたニコニコ

 

 

そんな時にたまたま

近くにいたおじさん達と、

自然とおしゃべりが始まり。

 

いろいろ話していました。

 

 

そのおじさま方はどこか上品で、

とても紳士な感じで。

 

芸術のことにも

造詣が深い方々でした。

 

 

そうして話しているうちに、

おじさんのひとりが。

 

 

「ベジャールとは知り合いでね。

この間も会って」

 

・・・とおーっ!

 

サラッとすごいことを

言った時は。

 

私は一瞬。

 

今、自分はどこにいるんだろう?

一体、誰と話しているんだろう???

 

・・・みたいな気持ちに

なりましたニコニコ

 

 

「ベジャールって、

あのベジャールですか?アセアセ

 

・・・と訊くと、おじさんは。

 

「うん、そうだよ」

 

・・・と。

 

 

*******

 

 

ベジャール。

 

モーリス・ベジャールというのは、

バレエ界では知らない人は

いないくらいの大御所。

 

振付家。

 

 

彼の『ボレロ』は超有名で、

元オペラ座エトワールのギエムが数年前。

 

その引退を。

 

彼女の最後の舞台を。

 

この『ボレロ』で飾りました。

 

しかも、この日本で。

 

 

 

 

あの時のジルベスタの

カウント・ダウンは。

 

本当に最高でしたおやすみ

 

 

この『ボレロ』の振付家である

あのベジャールと知り合い?

 

そんな人がなぜ、

今、私の前にいるの?!びっくり

 

そんな人と普通に話している

この状況って何?!おーっ!

 

・・・みたいな。

 

ちょっと。

 

変な感覚になりました。

 

 

こういう感覚は、

昔も経験したことがありました。

 

それは、

中川翔子ちゃんと翔子ママと一緒に

食事をしていた時のこと。

 

本来なら交わるはずのない世界と、

なぜか身近に交わってしまったみたいな。

 

そんな、変な感覚。

 

 

遠いはずなのに、

なぜか近い。

 

・・・みたいな。

 

 

メアリー先生のパーティーで、

あのおじさんとベジャールの話をしたのは、

 

このギエムの引退よりも

何年も前のことなので、

 

その頃はまだ、

ベジャールも生きていました。

 

 

ベジャール。

 

・・・というと、

どういうわけか私の中には

ゲーテの『ファウスト』に出てくる

 

メフィストフェレス。

 

・・・が浮かんでくるのですがニコニコ

 

 

そんな話をして、

あのおじさんと笑い合ったりも

しました。

 

 

そしてあの時。

 

「メフィストフェレスが~」

 

・・・みたいな話を、

普通に出来てしまうことが。

 

なんだかとても、

嬉しかったのを覚えていますおやすみ

 

 

*******

 

 

ふと見ると、

近くに火の彼女がいたので、

声をかけました。

 

 

「今日はお疲れさまでしたにっこり

とっても素敵だったよにっこり

 

・・・と。

 

 

すると、

彼女の顔がパァッと明るくなり。

 

その瞬間からいきなり、

彼女との距離が縮まったような

感じがしました。

 

 

私がああいうと彼女は。

 

唐突にこんなことを

言ったのです。

 

「ありがとうございます!!!

あの、あなたのこと、アンナマリアって

呼んでもいいですかっ?」

 

・・・と。

 

 

火の彼女とは、

ワークショップの初日に

少し挨拶をしただけで。

 

それ以来、

ほとんど話したことは

ありませんでした。

 

 

そしてその時にやっと、

まともに会話したと思ったら

いきなりグイグイくる彼女に。

 

ちょっとびっくりしましたニコニコ

 

 

「えーと。

なんで、アンナマリアなの?」

 

・・・と訊いてみると。

 

「うーん。わかんないけど。

とにかくあなたは、

アンナマリアって感じなんです!!」

 

・・・という返事が

返ってきましたニコニコ

 

 

彼女はメアリー先生や

他の生徒たちもあっという間に

巻き込んでいき。

 

そこからずっと、

私のことをアンナマリアと

呼んでいました。

 

 

あの時私は。

 

「さすが劇団員だなぁ」

 

・・・と思っていました。

 

 

なんだかんだ言って。

 

私は聖書にもご縁があったり

しましたし。

 

そういう「何か」、

そういう「匂い」を。

 

彼女は「感覚」で

察知したのだろうなぁ。

 

・・・なんて

思ったりしました。

 

 

そういう感覚が。

 

とても敏感なのだろう。とおやすみ

 

 

*******

 

 

火の彼女の周りには、

人がたくさん集まっていて。

 

メアリー先生も。

 

他の生徒さん達もほとんどが、

その輪の中にいました。

 

 

風の彼女と私だけが

会場内をあちこち放浪して、

 

全然違うところで

話していたんだ。と。

 

その時初めて気がつきました。

 

 

隣に座っていた生徒さんのひとりが、

 

「さっきあなたと話していた人。

メアリー先生のパートナーさんだよ」

 

・・・と、教えてくれました。

 

 

え!そうだったんだびっくり

 

・・・とその時初めて知って

驚きました。

 

あのおじさんはそんなこと、

一言も言っていませんでしたから。

 

 

メアリー先生の交友関係には。

 

さっきの五木寛之さんといい、

ベジャールといい。

 

なんだか、

有名人が多そうでしたが。

 

メアリー先生ご自身は、

そういったことにはまるで

触れませんでした。

 

 

西洋は個人主義だからなのかも

しれませんが。

 

誰かの手柄は

誰かの手柄でしかなく。

 

なので、

その人と知り合い。

 

・・・ということは、

特に自慢にはならないようです。

 

 

よくよく考えてみればそれは、

当たり前のことなのですが。

 

日本ではそのあたり、

少し違うような気がしますぼけー

 

 

これよりももっと

あとのことですが。

 

英会話の先生。

 

その人はイギリス人でしたが、

彼がこう言っていました。

 

 

日本人に、

自分はリバプール出身だというと、

いつもだいたい。

 

「あ、ビートルズと同じなんだ。

すごいな~」

 

・・・とか言われるんだけど。

 

 

自分は自分であって、

ビートルズではないのだから、

関係ないんだけどね。

 

・・・と。

 

 

*******

 

 

火の彼女たちの輪の中で、

しばらく盛り上がっていましたが。

 

ふと気づくと、

いつの間にか風の彼女が

いなくなっていました。

 

 

「あれ?あの子は?」

 

・・・と訊くと、火の彼女が、

 

「あぁ、帰ったみたいよ」

 

・・・と言ったのですが。

 

 

彼女のその表情や言い方から、

なにやら不穏な空気を感じ。

 

なんとなく、

イヤな予感がしました。

 

そしてそこから、

予想通りの展開が始まって

いったのでした。

 

 

つづく

 

 

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