従来の活性化リンパ球療法とは異なる、極めて個別化された免疫療法
同症例から採取したがん組織小片に由来する TIL (腫瘍浸潤リンパ球 tumor infiltrating lymphocyte;TIL,ティル)を高濃度のIL-2(インターロイキン2)の共存下で培養し、
非同義変異(アミノ酸の置換を伴う変異)に基づくスクリーニングを行った。
症例独自の腫瘍特異的な変異抗原(ネオアンチゲン)として、SLC3A2、KIAA0368、CAD2、およびCTSBが特定された。
これらの変異ペプチドに反応する細胞の中から、T細胞受容体(TCR)を指標とする細胞仕分け(ソーティング)、および
1細胞ごとの遺伝子解析により、ネオアンチゲンに反応するT細胞クローンの型(クロノタイプ)を同定した。
こうしたプロセスを経て、治療用のTIL細胞製品を調製した。
②
キイトルーダを併用しているが、併用による上乗せ効果は不明瞭
腫瘍完全退縮という効果に対するキイトルーダの影響を様々な解析を用いて評価したところ、キイトルーダは効果にほとんど、または全く寄与していない可能性が示唆された。
治療前に右乳房の病変を急速に増大させていた、TILの資源として採取した腫瘍は、陽性の間質を伴うCD3陽性PD-1陽性T細胞が豊富に存在していたが、腫瘍細胞にはPD-L1は発現していなかったというのが理由の1つである。
複数の治療に抵抗性を示していた治療前の胸壁生検標本では、CD3陽性PD-1陽性の限局した小領域があり、腫瘍や間質にはPD-1リガンドであるPD-L1の発現は認められなかった。
悪性黒色腫や喫煙に誘発される肺がんなど体細胞変異の頻度が高いがんと異なり、乳がんや卵巣がんといった体細胞変異の頻度が低い上皮性のがんは、免疫チェックポイント阻害薬や活性化リンパ球療法の効果を得られる可能性が低いと考えられている。
また、キイトルーダについては、トリプルネガティブ乳がんに対する効果については第2相試験(NCT02447003)にて有効な可能性が示唆されており第3相試験が実施されているが、ホルモン受容体陽性乳がんに対する活性を示す報告もない。
ー◆ー◆ー◆ー◆ー