永遠の愛を君に ③ | 美夕の徒然日記。

美夕の徒然日記。

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「 そろそろお時間です。聖堂の方へ…。」

その教会の信徒らしい年配の女性がドアを開けて声を掛ける。
 その瞬間、フランソワーズの表情に緊張が走った。
心做しか、肩を小さく震わせているように見える。

「  フランソワーズ…。」

カトリーヌはフランソワーズの両手を取ると、強く握り締めた。

「 神様の前で永遠の愛を誓って、幸せになるのよ、フランソワーズ。」


そうカトリーヌに声を掛けられ、フランソワーズは小さく頷いた。

「 さあ…フランソワーズ…」

ギルモアが促した。


  フランソワーズは静かに立ち上がると、ギルモアの腕を掴む…。
まだ緊張した面持ちだったが、笑みが浮かんでいた。




聖堂では参列者が起立し、司祭の入堂を迎えていた。他の参列者と共に、ゼロゼロナンバーサイボーグの仲間達も起立していた。
  司祭に先導され、ジョーも入堂し、祭壇の前に立った。
少し緊張した面持ちのジョーを、仲間達は微笑ましく見守った。

「 見ろよ、ジョーを…。あんな神妙な顔のジョーを見るのは初めてだぜ…。」

少し皮肉っぽい口調で言ったものの、ジェットも他の仲間と同様にジョーを微笑ましいと思っていたのだ。人並みの幸せを掴もうとしているジョーが羨ましいとさえ思うと共に、幸せを願わずには居られなかった。

  そして…。

聖堂入口に、ギルモアに伴われながら、フランソワーズが入堂し、パイプオルガンに合わせてゆっくりと祭壇に向かって静かに歩き出した。
  純白の花嫁衣裳に包まれたその美しい姿に、列席した者は皆ため息を漏らした。
そして通路側に着席していたジェットは、フランソワーズが横を通り過ぎた瞬間、その余りにも美しい姿に息を呑んだ。甘い香りがジェットを包む…。
その時、ジェットは心の中に甘酸っぱい感情が広がるのを覚えた。

( ふふ…俺としたことが未練がましいぜ…)

自嘲気味にジェットは笑みを浮かべ、祭壇の前の方に進んでいくフランソワーズの後ろ姿を見守った。

  祭壇の前に立っていたジョーは、花嫁を途中まで迎えに行く。
目の前に立っていたフランソワーズを、ジョーは眩しげに見つめ、少し含羞んだ笑みを浮かべた。
  ウエディングヴェールに包まれたフランソワーズは俯いたままギルモアと共に、ジョーの近くまでゆっくりと歩んだ。

(わしの娘を頼んだぞ…。)

ジョーの前まで来た時、ギルモアは声には出さず、そう目でジョーに伝える。
 ジョーはそんなギルモアに応える様に、大きく頷きながらこう心の中で言った。

( はい…ギルモア博士。必ずフランソワーズを幸せにしてみせます。)

その言葉をジョーは自分で噛み締め、あらためて、決意を固めるのだった。

  
 ジョーとフランソワーズは腕を組んで司祭の待つ祭壇の方へと、ゆっくりと歩み出した。
 そして祭壇の前まで来ると二人は立ち止まりその場所に立った。
 司祭はにこやかに二人を見守り、結婚を祝福した。
やがて聖歌が歌われる。
パイプオルガンの荘厳で美しい伴奏が聖堂中に響き渡る。
それを聴いていたフランソワーズは思わず胸が熱くなるのを覚え、涙が零れそうになった。
  聖歌が歌われた後、友人として、親友のカトリーヌが祭壇横に立ち、聖書を朗読する。
その後、司祭が福音を朗読する。
 そのひとつひとつの言葉を、ジョーもフランソワーズも耳を傾けながら噛み締めた。
  そしていよいよ、誓約の儀が行われる。
ジョーとフランソワーズは司祭の前で向かい合って握手を交わす。
次に司祭は二人に向かって、結婚への忠誠への決意を尋ねた。
ジョーもフランソワーズも、共にはっきりと「はい。」と答えた。
やがて 司祭はジョーに向かってこう尋ねた。

「 ジョー島村、あなたはフランソワーズ・アルヌールを妻とし、病める時も健やかなる時も生涯愛することを約束しますか?」

司祭に尋ねられ、ジョーは緊張しつつも真剣な表情で答える。


「 はい…!約束します。」

と…。

今度は司祭はフランソワーズに向かって尋ねた。


「 フランソワーズ・アルヌール…。あなたは島村ジョーを夫とし、病める時も健やかなる時も生涯愛することを約束しますか?」


司祭の問いに、フランソワーズは頷き、こう答えた。

「 はい…。約束します。」

と…。

その瞬間、彼女の一筋の涙が零れ落ち、頬を伝った。
脳裡に、過ぎ去って行った様々な出来事が走馬灯のように過っていった。
全ての運命が大きく変わってしまった忌まわしい過去であった。けれども、ジョーとの出会いがフランソワーズの心に光明を与え、生きる希望をも与えたのだ。
いつしか心惹かれ、彼の傍にずっと居たいとさえ願うようになった。
例え、結ばれなくてもいい。ただ傍に居られればそれでいいのだと…。
  そう思っていただけに、今日この日を迎えた事が、まるで夢の様にさえ思えてならなかった。
胸が詰まり、涙が後から後から、零れ落ち、フランソワーズは手袋をはめた指で涙を拭った。

  ジョーとフランソワーズの握手している手にストラを添え、司祭は祝福の祈りを唱える。
その祈りを終えると、二人は手を離し、夫となった新郎は、妻となった新婦のヴェールを持ち上げ、後ろへと垂らした。
その後すぐにジョーはフランソワーズの頬に優しくキスをする。
その瞬間、フランソワーズの頬を涙が伝った。

  いよいよ式もクライマックスを迎えた。
司祭は二人を祝福し、指輪に聖水を掛ける。ジョーは司祭から指輪を受け取ると、

「この指輪は、私達の愛と忠実のしるしです。」

そう唱えながら、フランソワーズの左手の薬指にそっとはめた。
続いてフランソワーズもまた、同じことを唱えると、ジョーの左手の薬指に指輪をはめた。

  こうして二人は神の御前で晴れて夫婦となったのだった。
 仲間達は始終二人を暖かく見守っていたが、誰よりもこの瞬間を喜んでいたのは他でもない、ギルモアだった。
ギルモアの脳裡に過ぎ去って行った様々な出来事が走馬灯の様に駆け巡っていた。それはギルモアにとって忌まわしい思い出でもあった。
自分の子供達のように慈しんで来た彼らゼロゼロナンバーサイボーグ達の幸せを願い、中でもやはり唯一の女性でもある、フランソワーズを娘のように愛し、幸せを願って来ただけに、この時を迎えられ、感無量であると共に、長年の良心の呵責から漸く解き放たれた様な気がしてならなかった。
 零れ落ちる涙をハンカチで拭おうとした時、隣に座っていたグレートがそっとギルモアに声をかけた。

「 博士、漸く肩の荷がおりましたな…。ごらんなさいよ。あの幸せそうなフランソワーズ…いや
新婦の笑顔を…。あんな幸せそうな顔は今まで見たことはありませんですぞ…。」

 祭壇の前にジョーと並んで立っているフランソワーズを、グレートは微笑ましそうに見つめる。
ギルモアも涙を拭いながら、フランソワーズを見つめる。その表情はまさに父親そのものであった。


続く…