【政党ガバナンス改革】 ~ 衆院選2021 にあたり再掲 | 宮沢たかひと Powered by Ameba

衆院選にあたり、ブログから2016年当時のレポートを再掲します。私の持論は変わっていません。政党ガバナンスを制する党が選挙を制するはずです。各党の健闘を祈ります。

 

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【政党ガバナンス改革】   2016-02-01 15:16:28

 

■ はじめに

 

 2012年12月の衆議院議員選挙において橋下徹氏という発信力あるリーダーに率いられた日本維新の会が誕生したが、これは国民の政治に対する不満と期待の表れであった。この時の「不満のマグマ」は現時点でも変わっていない。従来の内閣に比較すれば安倍政権の業績は高く評価したいが、国家の統治機構改革については未だ十分とは言い難い。そのような中、「政党と政治家のあり方」が問われている。

 

■ 政党の機能不全

 

 政党は政治を行う上で不可欠の組織であるが、憲法に政党に関する記載は無く、政治資金規正法はあっても政党自体を規定する法律は無い。それ故か、明治維新以降、日本政界においては様々な政党が生まれては消え、政党の歴史は混迷を極めてきた。過去に数々の政治家の汚職事件が発覚し、未だに「政治とカネ問題」が絶えないために、多くの若者は政治家という職業に興味を持てずにいる。

政党は本来、「政策」と「党内ガバナンス」の両輪がうまくかみ合ってこそ、成長し、長続きする。従来の政党では、政策議論は活発であったが、党内ガバナンスを議論する場と機会は多くなかったように思われる。それ故、自民党以外の新生野党は長続きしなかった。また、自民党を含め、国民に党内ガバナンスの方法論を明示した政党もない。

個々の国会議員を見ると、現在の国会議員の多くが世襲議員であり、若年時から政治家である「職業政治家」が多い。「世襲議員」と「職業政治家」の価値と必要性を否定するものではないが、その比率が多すぎるのも問題である。さらに、当選回数至上主義が徹底しているため、民間の優秀な人材がせっかく議員になっても国会で思う存分活躍できず、当選回数を重ねるまで我慢しなければならない。結果として、党内有力議員は高齢化し、民間から優秀な人材は政界に入ろうとせず、引退する議員の後継者は世襲となる。

 

■ 政界再編

 

 政界再編を語るとき、ベテラン政治家もメディアも「政策」を中心にした政界再編を考えるが、個々の政策にあまりこだわり過ぎると政党はどんどん細分化されて小さくなる。もう少し異なった視点で政界再編を考えてはどうかと思う。すなわち、「目指す国家像と理念」を核に優秀な政治家を募って政党をつくる。一つの政策について異なる意見が政党内に存在しても、その政策分野を専門とするグループをつくり、その中で議論を戦わせてより良い政策を生む党内議論と意思決定の仕組みを構築する。これが洗練されれば、国民に支持される「ブランド力ある政党」になりうる。政界再編に際して、党内の異なる意見は国民意見の多様性を反映するものと捉え、党内専門家集団による質の高い精緻な政策議論を経て党の政策を最終決定する仕組みは重要である。

そして、党代表と幹事長以外に、党内ガバナンスを監視し考察する三つ目のポストがあってもいい。このポストにつくのは首長でも民間人でもよい。むしろ議員でないほうがいいかもしれない。

 

■ 政党ガバナンス十か条

 

 政党は、「政治家で居続けたい人」を政治家にするのではなく、優秀で他者を慮ることができ、状況を的確に判断し、バランスのとれた決断のできる優秀な人材をそろえなければならない。そこで、理想的政党のガバナンス十か条(私見)を以下に列挙する。

【政党ガバナンス十か条】

一 常に上質の人材を準備し、国民に提供する

二 当選回数至上主義の否定と、民間からの優秀人材の登用

三 定年制による世代交代促進

四 女性政治家の登用促進

五 ベテラン政治家と学者による政治家リーダー養成システムを構築

六 選挙候補者の徹底した能力スクリーニング

七 選挙至上主義から実務業績至上主義へ

八 党内専門家議員グループによる徹底的議論を経た政策決定

九 十分かつ洗練された党内討議と、適宜の多数決採用

十 党議拘束のあり方について規定を置く

このような条件を満たした政党が信頼を獲得したうえで斬新な政策を発信すれば、必ず支持を得られるであろう。但し、政治家を選ぶ国民自身が選挙において投票しない、あるいは利益誘導を主な動機として投票をするようであれば、政党がいくら良い人材をそろえても、それは徒労に終わる。

 

■ 政党ガバナンスの脳科学的考察

 

 「政党ガバナンスを変えなければダメだ!」とただ叫んでも、何も変わらないであろう。政党ガバナンスを政治家個人に落とし込むと、「個々の政治家の脳機能」に行きつく。脳科学者の端くれとして、私の持論を述べてみたい。

 まず、政治とは「異質な他者」の「異質な意見」を聞き、それに対して論理的かつ冷静に反論および説得できなければならない。感情的に「とにかくハンタイ!」と吠えるだけで、そこで止まっているようでは政治にならない。政治的決断をするためには、論理的に思考されたエッセンスをわかりやすく発信し相手を諭すことができなければならないが、当然そのためには勉強と柔軟な思考が必要である。

 また、人間が好き嫌いの感情をもつことはやむを得ないが、政治の世界では感情、特に「怒り」をコントロールできなければならない。怒りの感情は脳内の「扁桃体」が源になっているが、その扁桃体をコントロールするのが前頭葉である。意識すれば前頭葉による扁桃体コントロールは可能である。同機能は高齢化により低下し感情的になりやすくなることが、政治家定年制の徹底を提唱する理由でもある。

 最後に重要なポイントは「寛容」である。さらに上位の言葉として「海容」という言葉がある。海のようにすべてを包み込む寛容さという意味であるが、政治家が備えてほしい素養である。

 

■ おわりに

 

 本レポートでは「政党ガバナンス」と「政治家のあり方」を中心に議論を展開し、政党ガバナンス改革について述べた。「政治とカネ問題」については多くを語らなかったが、しっかりとした党内ガバナンスを確立すれば自ずと「政治とカネ」に対しては綱紀粛正作用が働くはずである。政治家それぞれに、改めて政党ガバナンスのあり方について考えてもらいたい。