コロナ禍での防衛医科大学校 考 | 宮沢たかひと Powered by Ameba

この度の、新型コロナウイルス感染症パンデミックにおける自衛隊医系技官の活躍が注目されています。知事の派遣依頼により、自衛隊医官数名が旭川市と大阪府に派遣されましたが、日本国全体の医療安全保障体制に影響しますので安易な依頼は慎むべきでしょう。
自衛隊医官や看護官、旭川に10人・大阪府は5人程度派遣で調整 : 政治 : ニュース : 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp)

 

私が衆議院議員であった当時、自衛隊中央病院の視察に一回だけ訪れました。私が防衛医科大学校の教官であった当時、自衛隊中央病院に勤務したことのある医官が周囲にたくさんおり、同院の高機能体制や充実ぶりを聞いていましたので、主に医師としての興味が優先していました。

https://ameblo.jp/miyazawa007/entry-11727414512.html
 

話に聞いていた通り、病院そのものの耐震構造、災害時への備え、災害時対応のシミュレーション等、どれをとっても秀逸でした。ただ、上記記事にもある通り、災害で他の病院が壊滅状態になった時、どのようなガバナンスで体制を維持できるのか未知数でした。

 

さて、ここで考えたいのは、私が1993年から2009年までの16年間勤務していた防衛医科大学校についてです。

 http://www.ndmc.ac.jp/

同校は設立当初はさまざまな政治的混乱に巻き込まれた時期もあったようですが、その後優秀な卒業生を多数輩出し、全国で防衛医官あるいは普通の医師として活躍しています。同病院は埼玉県の所沢市にあり、通常の地域の基幹総合病院としての役割も担っています。

 

私は防衛医科大学校脳神経外科学講座の教官として、防衛医科大学校在学の医学生に講義や臨床指導を行い、同病院内では研修医、さらに脳外科を志望して入局してきた専修医を指導してきました。彼らは非常に優秀で忍耐力と集中力に優れ、熱心で、医師としての姿勢には頭が下がる人材が多かった、というのが私の印象です。

 

ただ、私が在籍した当時の同校の状況を考えると、災害時や今回のような感染症パンデミックに対して同組織がどの程度の役割を果たせるのか、疑問です。私の一国民としての当時の同組織に対する感想は、
 

『防衛医科大学校は通常の医学部と異なるが、かといって有事や災害に真に役立つ防衛医官を育成する教育をしているのだろうか?中途半端ではないか?』
 

というものです。実際、教育に当たる教官は普通の医学部出身の普通の医師が多く、教える側が有事や災害に特化しているとは言い難い状況でした。その後、校長は防衛医科大学校出身者に代わり、同校卒業生の教授も増えてきていますので改善する方向に向かっているとは思いますが。

 

私は、防衛医科大学校と同病院は、自衛隊中央病院と同様、有事および災害時、さらにこの度のような感染症パンデミックに最大限機能できる組織に生まれ変わるべきであると思います。最悪の事態を考えるのであれば、細菌兵器や化学兵器で攻撃された時も想定して防衛防疫体制のシミュレーションをしておくべきであり、併設されている防衛医学研究センターもそのために特化した研究所にすべきです。そのためには、

 

1.    病院および医官育成組織(医学部)は、有事や災害時に活躍できる特殊な医官を育成する専門組織とする。

2.    医官育成組織のカリキュラムや教官の選考方法は、有事や災害時を想定した内容に特化する。

3.    その場合、通常の医学教育とは大幅に異なるので、現在の医師資格とは別の国家資格、あるいは追加国家資格の新設を検討する。

4.    同時に、防衛医科大学校の医官育成組織(医学部)の受験に際しては、有事や災害時に活躍できる特殊な医官を育成する専門組織であることを謳い、修学中に税金を支給するのは従来通りとし、卒業後特殊医官として従事するのであれば今まで以上に高額な報酬と待遇を提示する。

5.    現在の防衛医科大学校にあてる予算は決して潤沢ではないので、上記のような組織改革をできるのであれば大幅に予算を増やし、教育と経験のためにも、有事や災害時には医学生の段階から活躍できるような法整備も必要。

6.    その際、厚生労働省および文部科学省の参画および協力を仰ぐ。

7.    現在同病院は通常の総合病院であるが、診療科の設定も有事と災害を特化したものにしてもいいのではないか。

8.    一方で、現存する防衛医科大学校病院の地域の基幹病院としての機能が制限されるのはやむを得ない。日常の病院機能は、近隣病院に委託する

 

以上が、現時点で思い浮かぶ私の政策提言です。私は防衛医科大学校に2009年までしか在籍していませんので、その後の約10年間で内部改革が進み、私の感想と政策提言がピント外れであれば指摘していただいて構いませんが、検討に値する部分がありましたら是非国会あるいは防衛省内で議論していただきたいと思います。

 

さらに、今回のような感染症パンデミックによる国家的危機に際して、上記のような専門知識と経験をもつ政治的リーダーを輩出できる組織に生まれ変われるのであれば、私の本望です。