宮沢レポート【AI(人工知能)普及時代の社会開発論 】 その1 | 宮沢たかひと Powered by Ameba

 







   
はじめに

社会開発の目的は、計画的に人々の生活福祉(well-being)と人間の能力を高めることであり、経済開発に付随するのではなく、むしろ経済開発に先行させるべきものであると理解した。そのためには「人間の意識改革」が必要である。人間が長生きすること、楽をすること、快適さ求めることだけに価値を置き、経済も社会も発展するだけでいいのであろうか?今や、ボタン一つ押すだけで様々な作業が可能となり、インターネットのおかげで容易にコミュニケーションをとれるようになったが、それが果たして人間のwell-beingを満たすことにつながるのであろうか?

本レポートでは、昨今話題となっている人工知能Artificial Intelligence (以下、AI)が未来の社会開発にもたらす影響を、主にSocial Capital(社会関係資本、以下SC)の健康福祉分野に与える影響について考察を試みる。尚、本論説で「AIロボット」はヒト型AI、単なる「AI」はヒト型でないAI(コンピューターのイメージ)を指す。

 まず、AIが人間の思考と行動に与える一般的影響について考えてみる。

 

    AIが人間の思考と行動に与える一般的影響

 

産業革命で始まった近代化からコンピューターの溢れる現代までの系譜を顧みると、科学と技術の進歩にあたり、人間と社会に与える影響を事前に思慮深く検証し、ときには進歩を抑制することを人間に期待することは難しい。進歩を好む人間は、AIの進歩による便利で、楽しく、ワクワクする未来をイメージするであろう。

将来、人間的な喜怒哀楽を表出でき、人間の気分を害さないコミュニケーション能力を備え、それぞれのヒトの好みで作製された容姿や声を持ったAIロボットが現れれば、多少高価であっても人間はそれを求め、ビジネスとしても成立するであろう。ロボット犬AIBOの故障を悲しんで修理をしてくれる技術者を探す愛犬家が存在し【参考1】、マツコデラックスのアンドロイド出演番組が高視聴率であることを考えると【参考2】、AIロボットへの依存は容易に想像できる。一方で、当然AIロボット売買はビジネスになり、AIロボットを購入できる人とできないヒトの間、あるいは性能差による格差が生まれるかもしれない  【1】。
 

さらに、若者が恋愛や結婚から遠ざかり、独身が増え、独居老人が増加する今の社会状況のままであるとすれば、AIロボットに依存する人間が激増すると予想される。AIロボットは孤独な人たちにとって福音となるのみでなく、人間同士のコミュニケーションが苦手とされる若年層ならずとも、煩わしい人間との関係よりAIロボットのほうが良いと考える人が増えることも予想され、人間社会が変質することは間違いない【参考1、2,3,4,8,9,10,11,12】。