近藤理論を突き崩す(胃がん編)④欧米の劣悪な手術成績を隠して日本の胃切除術を否定する | がん治療の虚実
2014-05-20 17:34:44

近藤理論を突き崩す(胃がん編)④欧米の劣悪な手術成績を隠して日本の胃切除術を否定する

テーマ:近藤誠氏への反論

近藤誠氏は日本の胃がん手術もやり過ぎだと主張している。
以下、複数の著作から引用する。
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【医者に殺されない47の心得】p114より
日本の胃がん手術の大きな問題は、胃の周囲のリンパ節を切除するリンパ節郭清(ごっそり切除すること)があたりまえとされていることです。胃の周りには、胃に近いほうから1~4群の数多くのリンパ節があります。進行胃がんの場合、胃の切除と共に2群リンパ節まで郭清する「D2胃切除」をおこなうのが一般的です。
~中略~
それでも何かメリットがあるならいいのですが、すでにイギリスとオランダの臨床試験で「D2胃切除は生存率の向上に寄与しない」という結果が出ています。

【「がんもどき」で早死にする人、「本物のがん」で長生きする人」】p118より
ところが「胃がんを切ると、切らないより延命できる」というデータは、ビルロート教授の初手術から132年の月日が流れた今も、実はひとつも出ていないんです。
手術はむしろ命を縮めます。~中略~
ある研究グループは日本の国立がん研究センターにリンパ節切除を習い、患者を「胃袋を切るグループ」「胃袋とリンパ節できるグループに分けて比較試験をしました。すると、リンパ節を切っても生存率は変わらず、合併症を増やすだけでした。イギリスでも同様の試験が行われ、結果同じでした。
現在、欧米の常識は「胃がんの手術で、リンパ節切除は不要」、ところが日本では、国立がん研究センターも含めて、現場切除が今も標準治療です。自分たちが関与した試験結果を無視しているのです。

【がん放置療法のすすめ】p163より
D2手術の目的は表向き、生存率の向上が掲げられてきました。
しかし、すでにイギリスとオランダの臨床試験で、生存率の向上をしないという結果が明らかにされています。
それなのに、いまだにD2手術に固執する日本胃癌学会は猛省すべきではないでしょうか。
現在、がん治療における世界の体勢は、可能な限り臓器を温存する方向に向かっています。いたずらに拡大手術に走っても、がん患者の生存率向上に貢献しないばかりかがん患者の生活の質の低下させてきたからです。進行胃がんのEさんのように、無治療のまま様子を見るという選択は、究極の臓器温存療法といえるのかもしれません。
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欧米の臨床試験でD2郭清の有効性は否定された、と主張し、挙げ句の果てに放置すべきだとしているがほんとうだろうか。
このブログではかつて、この問題を議題にしたことがある。

検診、手術至上主義に対する疑問への回答③欧米の胃がん治療成績は日本には通用しない
http://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-11448803579.html#main
より再掲

胃がん切除術はがんの発生した胃に加え、転移があるかもしれない近傍の所属リンパ節も切除します(郭清術)。
がんが所属リンパ節に転移再発することを防止あるいは、察知するためにおこないますが、D2郭清に加え大動脈周囲のリンパ節まで郭清するD3郭清術は予後は向上しないことが日本国内の比較臨床試験(JCOG9501試験)で結論づけられています。
さて、広範なリンパ節郭清の有効性に否定的な比較試験とはオランダを中心におこなわれた胃切除術にD1か D2郭清のどちらかをおこなう比較臨床試験( Dutch Gastric Cancer Group Trial)
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15082726.
がおこなわれ、より広範にリンパ節郭清をおこなうD2郭清の有効性が証明出来なかったことをNANAさんは言及していると推察しました。
エビデンス度の高い臨床試験で否定的だからそれに従うべきと思われているかもしれませんが、事はそう単純ではありません。

まず上記のオランダの臨床試験を指導した兵庫医科大学 外科教授 笹子三津留先生の数年前にあった講演から引用します
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嘘のような本当の話
・米国ではstage Iの胃がん切除後の5年生存率は50%(日本は90%以上)
・欧州では胃内視鏡検査時に写真を撮らない
・欧米では術前に早期胃癌という診断は困難
・英国では胃がん治癒切除後の断端陽性率(がん取り残しのこと)は20%
・欧州では胃がんと診断されれば病巣がどこにあっても胃全摘術を行う人がまだ多い
・欧州では進行胃がんに対して化学療法のセカンドライン(二番目の種類の化学療法)はほとんどおこなわれない
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欧米で胃がん切除術を受けるのは本当に命がけです。
信じ難いかもしれませんが10人に1人は術死する(10%)と言われていますから、日本の胃がん手術環境とは雲泥の差です(日本のD2郭清術の手術死亡率は2%以下)。
なぜこんなに差があるかというと
・欧米では胃がんが少なく、切除郭清術が成熟していない
・欧米人は肥満や虚血性心疾患合併が多く、手術が困難。
・欧米人は術中、術後の血栓症が多い。

さらに前述のオランダの試験は胃がん切除術にあまり習熟していない医師、施設が多く参加したため、術死が多かったのではないかと言われています。

日本の外科手術は優秀とされていますが、欧米でも食道がんなどのもっと難度の高い外科治療は患者が専門施設で集中的に治療を受けるので手術成績は悪くありません。
しかしあまり多くない胃がん手術は一般病院では日本よりずっと劣ると考えられています。

ただそれでもしっかりトレーニングを受けた外科医が手術した場合はD2郭清でも治療成績が向上したというスペイン、イタリアからの報告があります。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15028313.

また欧米では胃癌治療に放射線療法が使われることがあります。
これは胃の上部(噴門部周囲)から発生するがんが多く、放射線照射しやすい(胃の上部はあまり位置が蠕動で動かないから)ためもありますが、手術が相当危険なので、あるいは術後断端陽性率が高いため効果不十分な放射線治療の選択肢が用意されていると考えられます。

ちなみに日本ではもともと胃がん患者が多く、一般病院においても手術が多く成績も良いため、放射線治療はほとんど考えられないとされています。

笹子先生が言うには
診断が違う⇒術前診断、術後病理診断
手術が違う⇒リンパ節郭清、切除断端
患者が違う⇒肥満度、心疾患などの併存疾患の違い
設備が違う⇒病院の胃がん手術症例が少ない

エビデンスを重視するのは大事ですが、臨床試験の結果だけでなく、その背景(人種や医療環境の差、試験デザインの内容)を勘案して評価すべきです。

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と、ここまで解説しているが、もう少し付け足す。

切除可能胃がんの術後成績は日本と欧米では全く異なる。
下図は胃がんの術後補助化学療法の有効性を検証した臨床試験だが、手術単独群の成績の悪さに注目してほしい。5年生存率がわずか2割で、それを術後化学療法で10%ほど向上させることができたという試験だ。
D2郭清率は10%,54%で、その低さが治療成績低迷の原因とされている。
MK欧米




次に日本の成績を見てみよう。

MK日本


やはり術後補助化学療法で5年生存率は向上していることを証明した試験だが、手術単独群でさえ6割を越えている。
近藤誠氏はこうした事実を隠して、日本のD2手術をおとしめている。
いかに氏が自分の主張のために虚偽の解説をして、患者さん達を混乱させようとしているかわかるだろう。

ちなみにアメリカのNCCNガイドラインではD2郭清の技術があるのであればそれを推奨している。

なお近藤誠氏が引用していたオランダの試験は2010年に15年経過観察後のデータが発表され、D2群がD1群に対して有意に局所再発が少なく、胃がんによる死亡率が有意に低かった事が報告された。これを根拠にヨーロッパ(ESMO)のガイドラインでは治癒切除可能な胃がんに対してはD2手術が標準であると改訂されたことを最後に書いておく。

※今回の記事は日本臨床腫瘍学会第22回教育セミナー、日本臨床72巻増刊号 「最新胃癌学」を参考にさせてもらいました。

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