入川保則さんの転倒骨折の理由 | がん治療の虚実

入川保則さんの転倒骨折の理由

「末期がんで余命宣告を受けながら延命治療を拒否している俳優・入川保則が、8日に入院している神奈川県内の病院で転倒し、大腿(だいたい)骨を2カ所骨折していたと所属事務所が10日、発表した。
延命治療はしていないが、がんの進行は鈍化している状態。10月から終のすみかと決めた同病院に入院以来、歩く機会が減り、足腰が弱っている可能性があるという。」

という報道があったのでちょっと一言。

個人的にはよく知らない方なのだが、直腸がんの全身転移があって延命治療(抗がん剤?)を拒否しているとのこと。
今回はその治療拒否の事を書くわけではなく、転倒骨折のことを述べたい。

抗がん剤治療や支持療法、緩和療法に関しては最近は多くの関心と報道があるが、廃用症候群については意外と知られていない。

もちろん本人がどういった経緯で転倒したか詳しくはわからないが、高齢者の転倒骨折は介護関係ではもちろん大問題となっている。
高齢者にがんは多いが、がんそのものより転倒による骨折で治療を諦めなければならないケースは結構多い。

がん化学療法の常識②安静にするほど良くない-1
http://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-10709087265.html

今回大腿骨骨折に対する手術を予定しているらしいので、まだ数ヶ月以上余命は有ると思われているのは不幸中の幸いだが、がん治療をするしないにかかわらずQOLは著しく低下するだろう。

ちなみに余命という言葉は曲者なのでそれを越えて延命できていても実は珍しくない。

くせもの(医学)用語解説 I「余命」②
http://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-10797590904.html

抗がん剤治療をしていた自分の患者さんでも転倒骨折するケースが稀ではなく、治療が頓挫することがあった。

がんの場合良性疾患と違って安静はよくないのだが、どうしても皆安静にしてしまう(場合によっては周囲が強制的にそうさせる)。

寝てばかりいたらまず足が弱って,寝たきりになりますよとしつこく言っても、まだ足の筋力は大丈夫だろうと思っているのだろう。
ところが、問題となるのは不意の動作、ちょっとした事でつまずきやすくなることを自覚できてないことだ。

暗い所、足場の悪い所も非常に危険になるから、「まだ大丈夫は、もうあぶない」と思った方が良い。

抗がん剤治療する人もしない人も、治療と安静によってこういう予想外の危険があることを肝に銘じてほしい。