近藤誠氏「抗がん剤は効かない」批判③氏が現代がん医療の破壊者だとする理由 | がん治療の虚実

近藤誠氏「抗がん剤は効かない」批判③氏が現代がん医療の破壊者だとする理由

-------ここから引用-------p.211
現実的対処法に話を戻すと、ありがちな問題の一つに、担当医の無理解や横暴があります。患者・家族が抗がん剤を止めたいと思っても,医者が許してくれないので困っている,と言うのが典型です。(中略)
そこで病院を代えることを考えましょう(中略)
代えることがかなわぬ場合、最後の手段は演技です。理屈を言えば角が立つというように,医者は患者・家族から「抗がん剤は効かないそうですね」と事実や理屈を指摘されるのがしゃくに障る。しかし,情に訴えかけられるのはオッケーです。
まず大げさに「点滴は苦しい」「気分が悪い」等々訴えながら「止めたい」と言う。そうすると医者は恐らく、「副作用が弱い,良い経口薬がありますよ」と言うでしょう。それをもらって、飲まないというのが一案です。
------ここまで-------


担当医の無理解や多少の押しつけは問題であろうが、患者さんが演技をして抗がん剤治療を避けるというのは言語道断である。
これは抗がん剤治療を真面目に受けるべきという意味で言っているのでない。
医療側と患者さん側の相互理解、意思疎通不足から発生している最も根本的問題に真正面から向き合うのを避ける泥縄式の最悪のアドバイスだからだ。

その昔転移、再発がんの患者さんに5FU系の経口抗がん剤が投与されることが多かった。
治癒手術は不可能で点滴の本格的な抗がん剤治療もすでに難しい段階の患者さんに対し、医者が何もしないのは気が引けるので、5FU系経口抗がん剤を外来で処方していたのだ。
もちろん点滴の抗がん剤よりは副作用が軽いからと思っているからだ(ただしTS-1, ゼローダのような強力なものは出ていない頃の話)。
患者さんもあまり苦痛を訴えず、医者側は終末期に近い患者さんには悪くないと思っていた。
ところが実際にはそれなりに副作用があるため患者さんは徐々にその薬は飲まなくなる。
医療側にそのことを伝えるのに気が引けるため、勘違いした医者は悪くない薬だと思いどんどん経口抗がん剤を処方し、患者さんの家に山のようにたまっていくと言うパターンが少なからずあった。そしてその後の医療への悪影響は言うまでもない。

またかつてクレスチンというサルノコシカケ似たキノコから作った抗がん剤があったが、一時期日本の医薬品の売り上げ第2位(一時、年間600億円以上の売り上げ)になるまで売れた。
これはがんには全く効果なかったのだが、その分副作用もほとんど無かった。それで患者さん、医者側にとっても形だけでも治療継続している面で都合がよかったのだ。

さすがにこれはスキャンダルとしてクレスチン単独使用は認可取り消しになった。
これは患者さん側としては最後まで何らかの治療継続を希望することが多い証拠でもある。
医療側の目的はあくまでも患者さんの苦痛軽減だ。したがって訴えを聞いてその患者さんにあった治療の軌道修正を常に心がける。
それを上記のように演技してまで医療側と敵対しようとするのでは何のための医療かわからないし、事故さえ起きかねない。

このブログでは常々訴えているが、患者さんの価値観と希望を正確に訴える方法を見つけ、相互理解と方針の折り合いをつけることこそがん治療に望まれる方向性だ。
もちろん医療側が訴えを聞いてくれない、忙しそうで訴えにくい、治療しないなら転院してくれと言われたなど問題は山積しているのは事実だし、医療側が改善すべき事も多い。
しかし医療側が変わることを待ってられないのが今の患者さんの現実だろう。
根本原因は患者さんががん治療の意味、治療を受ける権利、意思疎通の手段の工夫が足らない所が大きいとあえて断言したい。
多くの患者さんから反発を受けることを承知した上で提言しているが、検査とは違って訴えてもらえない事には患者さんの心の中を医療者が知ることができないからだ。
忙しい医療側は訴えがなければ問題ないのだろうと勝手に思ってしまっている(そうしないと身が持たない)。
残念ながら限られた医療予算、人材ではリッツカールトンホテルのドアマンのような至れり尽くせりの心配りは不可能だ。
一方患者さん側は主治医はわかってくれているはずと思い込んでいるケースも稀ではないから問題の根は深い。

では現実問題どうすればいいか?
過去のリンクをとりあえず参照してほしいが、
患者医師間の意思疎通問題④医師に聞きたいことを聞く良い方法
http://ameblo.jp/miyazakigkkb/entry-10738774641.html

近い将来主治医に患者さんの思いを伝える効果的な方法を簡潔にまとめたいと思います。