もし我が子が「死にたい」と口にしたら……親としては、とても平静な気持ちではいられないことでしょう。
私のところにも、「どうしたらいいでしょうか」「どうか、うちの子を助けてください」といった、悲痛な相談が寄せられることがあります。
親も、どうしていいか分からなくなる状況ではありますが、お子さんが「死にたいと思うほど苦しんでいる」ということを真剣に、かつ冷静に受け止める必要があります。
そこで私からは、次のようなことをお伝えしています。
「死にたい」なんて、軽々しく言えるものではありません。お子さんがあなたにそう言えたということは、親子の信頼関係がしっかりできているということです。
親であることに自信を持つことで、あなたご自身の気持ちを落ち着けてください。
たとえ信頼関係ができていたとしても、「死にたい」と口にするのは、とても勇気のいることです。
「よく打ち明けてくれたね」
「気が付かなくてごめんね」
「生きててくれてありがとう」
と抱きしめてあげてください。
その上で、死にたいと思うほどつらい気持ち、苦しい気持ちは何なのか、聞いてあげてください。
何も話してくれないときは、無理に聞き出そうとせず、ただただそばにいてあげてください。何時間でも。
子どもが嫌がらなければ、肩を抱く、手をにぎる、髪をなでてもいいでしょう。
もし話し始めたら、「あなたの気持ちを教えてほしい」というスタンスで、聴いてあげてください。
親としては、歯がゆい気持ちになったり、「どうすればいいか」と解決策を考えてしまいがちです。ただこの時点では、「この子の胸の内を知りたい」という思いで聞いてください。
×「死にたいなんて、バカなことを考えるんじゃない!」と言いたくなりますが、多くの場合逆効果です。
誰だって、死にたいなんて思いたくはないのです。「そんなこと考えるんじゃない!」と言われると、ダメなことを考えてしまう自分は、やっぱりダメな子なんだと、ますます自分を責めます。
×「どうしてそのとき〇〇しなかったの」も、子どもを責める言い方です。そうできなかった自分を責めて、ますます落ち込みます。
×「つらいのはあなただけじゃない。みんな我慢してるんだ」という言い方も、逆効果です。みんなが苦しんでいるなら、どこにも希望がないことになります。
〇「そうか、そう思ってしまうんだね」と、気持ちを認めることが大事になります。
人は、話を聞いてもらうと、自分の気持ちを分かってもらえたと安心します。それに、「こんな気持ちになってもいいんだ」と、自分を肯定することができます。
また、気持ちを言葉にしているうちに、気持ちの整理ができることもあります。
子どもの気持ちが落ち着き、そばを離れるときはこう言ってあげてください。
死にたいと思うことはあるかもしれない。でも、絶対に行動に移しちゃいけないよ
あなたが死んだら、私は生きていけないかもしれない
あなたは、かけがえのない宝物、私の生きる希望だから
人の気持ちには波があります。一旦落ち着いたとしても、また「死にたい」という気持ちに襲われることはよくあります。
「死にたい」という言葉をタブー視するのではなく、「その後どう?」「まだ、死にたいと思うことある?」と、むしろ時々話題にしてください。
親は子どもの状態を把握することができるし、子どもは、気持ちを言葉にすることで、冷静さを取り戻します。
そして、「死にたいと思っても、絶対に行動に移しちゃいけないよ」は、繰り返し伝えてください。
以上が初期対応で、次は、苦しみやつらさの原因に対処するステージに入ります。
ただ、すぐにそのステージに入れることはまれです。
子ども自身も、自分の本当の気持ちに気付くのに時間がかかる場合があります。それに、原因究明や対処には、学校や、精神科医などの専門家の協力が必要になる場合もあります。
お子さんの安全を確保した上で、焦らず、長い目で取り組むことが必要になります。 (完)
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