HIFUの効果、コケることについて | 美容外科開業医の独り言

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昨今話題のHIFU(ハイフ)について今回は書いてみたいと思います。

 

ご存知のようにHIFUはたるみ治療のスタンダードになってきました。当院でも3種類のHIFUを用いて治療をしています。

先日厚生労働省の通知(こちら)がありましたが、HIFUは、「医師が行うのでなければ保健衛生上危害を生ずるお それのある行為であり、医師免許を有しない者が業として行えば医師法第 17条に違反すること」になりました。かなり厳しい見解ではありますが、これを遵守しなければなりません。

各種組織を熱で損傷させるので、照射法を間違えれば皮膚に熱傷を生じたり、神経などの損傷があり得ます。その分、その修復過程にょって、しっかりとしたコラーゲンなどの生成、組織の再構築による引き上げがあるのです。

 

さて、HIFU照射をすると脂肪が減ってやつれてしまう、こけてしまうという意見があります。これは正しくもあり、間違いでもあります。

様々な医師が理論に基づかない経験などで話をすることにやや耐え難く、ちょっと見解を述べようと思います。

HIFUを高いエネルギー(J)で照射すればどうなるか、これはダメージを受ける熱量が増す(より強く焼ける)よりボリュームが増えるという要素の方が大きいのです。

これには論文上の根拠があります。

(HJ Laubach etc.  Intense Focused Ultrasound: Evaluation of a New Treatment Modality for Precise Microcoagulation within the Skin.より引用)

 

これらの写真のようにエネルギーが大きいほどダメージを受ける範囲が広がります。つまりボリュームゾーンが大きくなるので、脂肪が減りやすくなります。一方、組織のタンパク変性温度は65℃ほどなので、強く照射してそれを超える温度にしても効果はあまり変わりません。

よって、単純に強力に照射すれば強く引き上がるだけではなく、脂肪が減り得ます。実際にあるメーカーの資料では、設定エネルギーが大きくなるほど脂肪減量効果が高くなることも示唆されています。一方で高いエネルギーではなくとも同じ部位に重ね打ち(マルチパス)をすれば、複数のダメージが重なり合って大きな体積となるので注意が必要です。

しかし照射する部位を熟慮すれば、強く照射することのメリットも沢山あります。医師の知識と技量によるでしょう(ただ、まあそんな小さな点状焼灼で脂肪が減るのかという根本的な議論も必要ですが)。


ということで、闇雲に強く照射しない、強く照射するときは顔面の構造をきちんと把握して照射のラインを厳密に決定する、引き締めたい部分は重ね打ち、そうでない部分は重ねない、などの工夫で引き上げ効果を最大に得ることができます。このあたりは各医師の腕の見せ所でもあり、決まった照射プロトコールで適当に実施するのは怖いことであり、効果を最大限利用できないことが理解できると思います。患者個々の顔立ちによって照射方法は変えていかないといけません。

 

さらに、ここにはHIFUの周波数MHzというものも関係します。周波数が大きいほど超音波は指向性が増すので小さな範囲に集束されます。Hzが大きなトランスデューザー(アタッチメント)ほどダメージを受ける範囲は小さくなるのです。またメーカーごと、超音波の音響レンズの形状由来で先ほど挙げた到達温度が違います。

これら複雑な要素を加味して、ベストな照射方法を見つけていく必要があります。

 

また標的とされるSMASは「筋膜」ではなく腱膜様組織です。脂肪の中に索状の線維が混じっているようななんとも頼りない層構造であり、はっきりわかるのは耳下腺のあたり(耳下腺被膜)程度で、あとは剥がすとなんとなくあるなあと思われる構造物です。引っ張れば引き上がるのはフェイスリフト手術で証明されていて間違いないですが、頬全域にわたって膜が張っているようなものではありません。

つまりしっかり照射するべき部位を考えないと、単なる無駄打ちです。こけるだけです。また顔を支えている支持靭帯などに熱影響を与えることも重要です。解剖を理解し、有効なショットをすること、これがトラブルを防ぎかつ効果を得るコツになります。

そもそもHIFUの元祖であるウルセラは日本販売当初、形成外科医のみに販売をしていたという経緯があるのです。それだけ解剖学的知識が重要です。

 

以上のようなことを理解して初めて、やつれることなく「引き上げ」効果を得ることができますし、顔立ちによっては少し引き締め効果を得ることもできるのです。

一方的にHIFUはコケる、コケないの議論をするのは不毛です。様々な要素を加味して必要であれば引き締め、また引き上げることこそが医師の技量だと思うのです。

もちろん私自身も100%完璧とは言いません。センスの優れた医師からすればそんな理屈どうでも良いと言われるかもしれません。ただ、医療行為である以上、感覚ではなく万人共通に結果が出せる理論を重視したいです。きちんと知識を持った医師が患者本位でHIFUを自ら照射し、最大限の効果を得るそんな流れになると良いなと思います。厚労省の通知で医師による施術が求められている今こそ、学術的にHIFU治療に取り組む医師が増えることを期待しています。

HIFUは決まったやり方で照射してもそれなりに結果は出ますが、知識と技能があるほどにより良い結果を出せる面白い機器でもあります。

 

さて、先週末はまた出張。福岡に行って企業主催のセミナーにてピコ秒レーザーと脱毛レーザーの講演をしてきました。

 

前夜は寿司を頂き、それ以外はなかなか時間はなかったのですが、博多駅そばの「次男坊」で豚骨ラーメンも。

 

今週末はやっと休息したいところですが、その先も続く国内外学会のプレゼン作りが待っています。英語講演が今年あと5つ!