たるみ治療のHIFU(ハイフ)は医療機器 | 美容外科開業医の独り言

美容外科開業医の独り言

美容医療とは人間愛!という信念で仕事をしている美容外科医のブログです。
レーザーなど最新の美容情報や普段の診療で感じたことなど、ぼやきを交えながら書いていきます。
外見だけではなく心も綺麗になり、自信が湧いて幸せになれる、そんな美容医療を目指しています。

最近流行りのたるみ治療機器HIFUですが、昨日付で消費者庁から意見書が各省庁に提出されました。

 

「HIFUは医療機器と見なして施術者の制限、輸入の制限をする」とのことです。

今朝の読売新聞に記事が掲載されていました。

 

昨日付で消費者庁から意見書が各省庁に提出されました。

「HIFUは医療機器と見なして施術者の制限、輸入の制限をする」とのことです。

 

消費者庁の意見書はこちら

 

HIFUは人体内を超音波で焼いてダメージを与え引き締める機器です。

昨今、耳障りの良い言葉として、「機器でコラーゲンを再生、増やして若返り」なんて言われていますが、熱でダメージを与えると傷が生じるのでそれを修復する力とは

きずあと=コラーゲン

なのです。

ケロイドや肥厚性瘢痕というものはコラーゲンの塊です。

それゆえ若い人にあまりHIFUをしてほしくないのです。

 

今回の意見書は神経損傷ややけどなどを生じているという訴えが消費者庁に届いたことが発端です(実は消費者庁から当院へ意見聴取の依頼もありました)。

 

それだけダメージを生じさせうるHIFUですから、正しく使用するにはある程度の医学的知識が必要ですし、トラブルが生じたら「治療」が必要です。つまり医療行為として実施しないといけません。エステ施術と異なり、医療行為というものには絶対安全ということはないのです。リスクが伴います。だからこそ、リスクのある治療は医療行為という位置づけになります。人体に傷害を与えると医療行為とされるのは法で定められたルールです。医師のみがそのリスクのうえで治療する事を認められています。

 

「皮膚を焼いて」と説明した瞬間、その施術は医療行為になり、医師法違反となるのです。

レーザー脱毛も「毛根を破壊して」と言った瞬間、医療行為になります。人体組織の破壊は医療資格者のみに認められる行為です。

グレーゾーンはもちろん多々あり、例えば入れ墨などは人体に針を刺すことから資格を要するはずですが、有史以前からおこなわれている行為で、また諸外国などの慣習を鑑みて、最近裁判で医療行為に該当しないような判決も下りました。

 

さて、今回の意見書で、HIFUによる健康被害が報告されていますが、これには医療機関での施術も含まれます。当院でも軽い傷害を起こすこともあります。だからこそ慎重に、かつきちんとした診断の元に治療を受けるべきです。医療機関側もあまりに手軽に、魔法のように、ファッションのように、SNSなどで語るべきではありません。厚労省の定める医療機関におけるウェブでの情報提供ルールには、リスクも含めて提示する事が明記されています。

 

そしてこの問題、実は闇が深いのです。世界各国ではHIFUは医療機器として国がしっかり認可しています。

日本は、、、、認可していません。

医療機器として認可していないから、医療機器ではない、エステだって輸入できますという論理が成り立ちます。

我々はというと、医師の個人的責任で全てを管理します、という条件付で、個人輸入をしています。機器メーカーは厳密には輸入手続の代行をしてくれるだけです。どんなトラブルがあっても我々が責任を取るという条件で輸入できます(逆に機器が悪くて傷害を生じても日本の業者は責任がありません、それを納得しないと機器は輸入できません)。

 

厚労省は認可していない、経産省は何でも規制はしない、このような方針で進むと当たり前ですが、最終的にはボトムラインである患者側が最大の被害を被ることになります。

もちろん申請すれば認可してくれます。でも膨大なデータとお金、様々な規制がこれを阻みます。新規の機器は尚更です。一般医療のように大きな市場規模ではありませんから、弱小メーカーはお金をかけることが現実的には出来ません。

今では当たり前のように実施されているレーザー脱毛だって、ちょっと前までは医療機器として認可されていなかったのです。注入用のヒアルロン酸製剤も世界では100社を優に超える会社が製造していますが、我が国で認可されているのは現時点では2社だけ。お金をかけて真剣に認可を勝ち取った大きな規模の会社製品だけが認可されています。

 

医学知識、法的知識のないエステの人達も、ある意味被害者かもしれません。医療機器ではないから気軽に購入してビジネスしよう、そう思って当然でしょうし、セルフエステに置いておくことだって、そんな大ごとには考えていないと思います。そもそも販売業者でさえもそのあたりの知識がない人が多いですから。

もちろんエステでも協会を作っていて、これに所属する店はHIFUを置いていないそうです。しかしその加盟店は1割にも満たないのです。

 

いずれにせよHIFUは医療機器であるという見解が、これからは一般化するのではないでしょうか。