たるみの機器治療 その予防効果と開始年齢 | 美容外科開業医の独り言

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現在、機器による顔面たるみ治療には様々なものが登場しています。
最近では20代でも治療したいと来院される方もいます。若い方は顔貌などによっては僅かなたるみでも疲れて見えたりする事があり、多くの場合は頬への注入によって顔貌を変える事で対応しています。では機器治療は何歳からが良いのでしょうか。極論ですが10代でも予防的に治療をする方が将来にとって良いのでしょうか?

そもそも機器治療の多く、痛みを伴うタイプは熱によるダメージで傷を作り、その治癒過程で新しいコラーゲンなどの組織を再生します。誤解を承知で言えば、これは若返りではありません。単に傷を作っただけです。新しいコラーゲンで張りを出すのはあくまでキズの修復能を利用しているのです。
コラーゲンなどの加齢で失われて皮膚老化の原因となる構造物を作る線維芽細胞は普段は大人しく寝ていて、その代謝過程は非常に緩やかです。安定した構造を維持するだけの代謝しかおこないません。ここを注入剤、サイトカインなどで活性化して若返りを狙う治療法もありますが、効果は限定的です。
しかし傷ができた時などでは一気に活動してくれるのです。細胞の活性化は傷が出来た時に限ります。機器は傷をつけて自己再生の力を利用しているのです。
じゃあ傷痕だらけになってるかというとそうではありません。細胞レベルで見ると少しコラーゲンが増えたかなという議論を我々は学会でしているくらいです(遺伝子レベルでは細胞の若返りになっているという報告もありますが)。そもそも外科的手術はもっと皮膚の下が傷痕だらけになり癒着します。傷痕が出来るのは問題かというと、現実にはそういうリスクはほぼありません。どちらかというと質の良い組織を再構築します。

この新しい質の良い組織を作れる事が機器治療のメリットです。たるみきってから照射するより少したるみ始めた頃に照射した方が良いのです。たるんでしまったら元に戻すのは大変です。
では何歳からか。出来上がったコラーゲンなど細胞外基質が照射前のものよりも質が良いかどうか、になります。20代では傷となって出来た再生組織は多分本来のものよりも質が悪く弾力に欠けるでしょう(一方で年齢に関係なく、傷痕ができると軽い癒着を生じさせ、皮膚が下垂しにくくなる、という現実もあります)。
という事でベストな時期とは、経験上、30代後半あたりではと考えます。この年代が境界になるのではないかと思います。
ただ、あくまで今の話は皮膚のたるみです。たるみには骨の萎縮や皮下脂肪の質の変化、支持靱帯の劣化など他の要因もあります。皮膚が硬く引き締まっても限界はあります。これらには深部加熱をおこなう機器群(テノールなど)が有効であり、20代後半からでも治療して良いと考えます。もちろんこれらはダメージを生じさせないので、効果が望めない事を理解されるなら別に10代でも害自体はありません。もちろんあまり意味はありませんが。

いずれにせよたるみが強くなる前に開始するのをお勧めしています。
予防的意味合いかねて早く組織再構築をおこなう機器治療をするなら30代後半から。ただ、目に見える結果を求めるなら40から50代。
では60や70代は無効でしょうか。もちろん皮膚は引き締まります。それが目に見える結果となるかどうかはたるみ具合によります。

それなら諦める?しかし年齢は戻せないのなら、ベストな時期は1番若い時、つまり「今」です。