美容医療の一般化とトラブル | 美容外科開業医の独り言

美容外科開業医の独り言

美容医療とは人間愛!という信念で仕事をしている美容外科医のブログです。
レーザーなど最新の美容情報や普段の診療で感じたことなど、ぼやきを交えながら書いていきます。
外見だけではなく心も綺麗になり、自信が湧いて幸せになれる、そんな美容医療を目指しています。

平成最後の日のブログです。

思えば、昭和の終わりは国外で知りました。韓国に旅行中、ソウルの景福宮にて、お土産物屋のおばさんから昭和天皇ご逝去を教えて頂いたのでした。ネットもない時代だったので、海外に行くと情報を得ることが出来ず、現地の人に日本の一大事を教えてもらうという、恥ずかしい出来事でした。

平成の最後は国内で迎えております。

 

さて、

私は平成2年に医師になりました。平成の殆どを医師として過ごしたことになります。医療において31年という歳月は大きく、昭和と平成では格段の進歩がありました。その中でも美容外科は大きな変化を遂げました。一般外科が内視鏡や腹腔鏡で、大きく切らない方向に進んだ以上に、美容外科はそもそも切らない、『外科』ではない手技が発展してきました。レーザー等の機器やヒアルロン酸などの注入、いわゆるnon-surgicalな治療です。

 

国際美容外科学会において施術数の統計が取られています(リンクはこちら)。

これによると我が国の形成外科医による施術のうち82.5%が非外科的手技でした(米国は63.7%、タイは17.95%)。皮膚科医の統計ではないので、実際には美容医療の殆どが非外科的手技という事になります。

但し、2016と2017の比較では手術は4%増加し、非外科的手技は5%減少しています。やや限界に達してきているという状況でしょうか。特に注入系に比して機器系の減少率は激しいようです。新しい治療機器が出てきていないことが如実に出ています。

 

さて、外科と比較してリスクが少ないとされる注入や機器治療ですが、アレルギーなど避けられない副作用は別にして、様々なトラブル症例も報告されています。

最近海外で話題となっているのは、私の友人Lin Shangli先生(台湾)のところに相談に来た症例です。他院におけるサーマクールでの大やけどです(リンクはこちら)。

痛み止めのために麻酔をかけて、強い出力で照射したそうです。もちろんそれだけが原因とは限りませんが、痛みというのは重要な情報です。麻酔していなければ患者さんはあまりの痛さで耐えられず、ここまでの惨状にはならなかったでしょう。痛みがないことに患者さんは安心するかもしれませんが、実際にはこのようなこともあり得ます。機器が故障、異常動作していた場合などでも、患者さんの強い痛みを機に気づくことも多いものです。

ヒアルロン酸注入でも皮膚壊死や失明などのトラブルがあり、医師が熟練していても100%は避けられません。タクシーのベテラン運転手と初心者マークのドライバーでは事故率は違うかもしれませんが、タクシーが絶対に事故を起こさないという保証はありません。確率が低くても運転時間が長ければトラブルは生じ得ます。

 

美容医療が一般化した平成の時代、さあ令和になってどう変わっていくのでしょうか。トラブルを避けるためのノウハウ、正しい美容医療の普及が望まれます。