ヒアルロン酸注入の私見 | 美容外科開業医の独り言

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美容医療とは人間愛!という信念で仕事をしている美容外科医のブログです。
レーザーなど最新の美容情報や普段の診療で感じたことなど、ぼやきを交えながら書いていきます。
外見だけではなく心も綺麗になり、自信が湧いて幸せになれる、そんな美容医療を目指しています。

先月末に大きなイベントがあり大忙し、その後プライベートの事情で早めの夏休み。ブログ更新は久しぶりです。

 

さて、

近年、ヒアルロン酸注入による若返り治療が一般化してきました。メディアでの紹介による認知や、厚生労働省の承認製品なども登場し、一般患者様の意識のなかで安全性に対する漠然とした不安感がなくなってきたことが大きいのかもしれません。

 

このブログでも何度も書いていますが、以前は「ほうれい線」に注入する、いわゆる溝を埋めるパテのような使用法が主流でした。今でももちろんこの手法を用いますが、それに加えて顔の輪郭を作る,老化による萎縮した形状を充填する、顔面をつり下げている靱帯を補強して引き上げるなどの手法が次々に登場し、より自然で綺麗な若返りを得ることができるようになりました。

 

しかし一方で、過剰な注入による「ヒアル顔」、パンパンに張った頬、リスがえさを頬張っているような顔も有名人などで見受けられます。

皮膚が加齢で伸びてしまってるのに注入だけでそれを解決しようとするとどうしてもボリューム過多になります。そんなの変になる前に自分で気づくだろうと思われるかもしれませんが、理由が2つあります。

 

まず一度の注入でそのような顔になったわけではありません。注入時はベストでも徐々に吸収されてボリュームが減少すると、ゼロになる前にご本人は再注入したくなります。初回治療後と同じ顔になると良いのですが、満足度を得るには少しだけ量が多くなる傾向にあります。これが常態化すると、継ぎ足し注入によって顔が数年かけて大きくなります。最初の治療前の顔を本人は基準にするのではなく、直前の注入前の顔を基準にしますので、本人はボリューム過多とは全く気が付きません。最初の顔からしばらく見ていなかった人からすると、「うわぁ!」と思うような顔になっていても案外気づかないのです。

そして、局所の僅かな窪みが我慢できないこだわりの患者様にありがちなのが、鏡を顔に近づけてここの窪みに入れてと指示されることです。もちろん希望に添うように注入はしますが、大抵ちょっと量が多くなります。これも何度もおこなうと明らかにボリューム過多です。でも本人は局所で見てしまいます。その場合、近づけている鏡をぐっと引き離して、全体で顔を見るようにお話しをしています。

過剰注入は駄目ですよと、治療しないでお帰り頂くこともありますが、納得されずに他院で注入されて、当院は藪医者扱いになります。。。。

いくら患者本位の治療と言っても客観性に欠ける治療を私は好みません。

 

ただ、ビジネス的に考えると来た患者様の希望通り、どんどん注入した方が儲かります。延々と時間をかけて説明をして,診察料のみ頂き最後には患者様に怒られるのは,時々空しくなります。

 

一般医療でも、風邪引いたから今すぐ注射して治せ!と言われ、何も言わず注射するか、正当な医学的知識で患者様に説明して最後は非難されるか、それと同じです。

美容は患者の主観も大事、だからこそより難しいし、医師の技量以前の問題にもなります。

 

またシミなどの治療で、1〜2割程度の確率で重篤な副作用が生じると思えば特定のレーザー治療を患者様にはお勧めしませんが、納得されずに他院で照射することもあります。逆に言えば8〜9割は結果が出ます。さて、治療した医師は名医なのでしょうか。

できないと言った医師は腕が悪いのでしょうか。医師の信頼も失い、クリニックの収益も失います。ただ、あくまで確率論。1〜2割の患者様を不幸にすることに何の疑問も感じなければ治療した方が正しい医師かもしれません。

 

ちょっと極論でしたが、得体の知れない注入や治療をおこなって、殆どの患者様は満足し、魔法のような画期的治療と思っても、その中には僅かに重篤なトラブルを起こす患者様がいます。遠方から何とか治療法はないかと来院されますが、胸が痛くなります。

もちろん医療技術が至らず、トラブルになることや、また医療の不確実性という問題もあります。100%成功する医療などありません。リスクはあります。しかしその材質・性状に依存するトラブル、それが何%になれば悪い治療なのか、難しいです。

 

最後はちょっと話がそれてしまいました。。。。