ヒアルロン酸注入とその役割 | 美容外科開業医の独り言

美容外科開業医の独り言

美容医療とは人間愛!という信念で仕事をしている美容外科医のブログです。
レーザーなど最新の美容情報や普段の診療で感じたことなど、ぼやきを交えながら書いていきます。
外見だけではなく心も綺麗になり、自信が湧いて幸せになれる、そんな美容医療を目指しています。

週末はヒアルロン酸注入剤メーカーであるアラガン社が主催するセミナーを聴講してきました。

講師は現在世界で売り出し中のDr. De Maio。顔面に様々なポイントを定めて、若い顔貌・綺麗な形状を作っていくという手法の講習会です。

注入によって溝を埋める「プチ整形」が一般人の持つヒアルロン酸のイメージだと思いますが、現在ではそのような考え方は古いものとされており、いかに綺麗に形状を作っていくかに主眼が置かれます。ただ膨らませて「ヒアル顔」と言われるぱんぱんな形にするのでもありません。

但し、非常に多くの本数を要する手法でしたので、そのままでは日本においては難しく、自身の持つテクニックに付加する形で上手く取り入れていきたいと思います。

 

ヒアルロン酸の注入は日本では厚生労働省承認を得た2つのメーカーが注入テクニック、コンセプトを提案しています。ただ海外に目を向ければ、世界には数多くのメーカーがあり、また数多くのキードクターがいます。つまりコンセプトも沢山。それぞれに熟慮されていて、参考になることがあります。ですから海外の学会・セミナーにも参加して、それらを吸収してきます。その上で、自分自身の治療手技を組み立てていくことが注入療法において重要と考えています。他の医師との差別化でもあります。

よく患者様にヒアルロン酸注射を勧めると、以前実施したけど良くなかったから嫌とか、テレビで顔が膨らんだ人を見ると不自然で嫌だと言われることが多々あります。しかしこれは打ち方次第です。

ショートケーキで言えば、初心者が作るスポンジが膨らまずダマになっていて、クリームもべっちょりのものを食べて、美味しくないから嫌いと思った人が、プロが作る、しっとりふっくらと焼き上げたスポンジに、とろけるようなふわっとしたクリームを載せたものも不味いと思うかどうか。

同じものでも技術、コンセプトによって結果は全く異なります。

 

さて、

ヒアルロン酸は上記のように綺麗に形状を作っていくものです。最近のトレンドは皮膚などを支える靱帯を補助したり、加齢で萎縮した骨を復元したり、表情に追随するような自然な形状を作ったりというものです。

 

これは家で言うと,柱を支える、土台を固めるもの、になります。

一方他の治療はというと、

機器:壁の塗り直し、家の掃除、環境の整備

糸:柱の補強、新しい柱を立てて傾いた家を戻す

手術:新築そっくりさん

といった感じでしょうか。

 

つまり機器だけでは若い頃に戻れません。現状の薬剤や再生医療でもそれは同じです。肌や浅い層のレベルまでしか効果は出ないのです。

注入剤を高度なレベルで使用・併用できてこそ、若い状態を作り出すことができるし、実際に土台としての老化予防の一面もあるのです。

 

もちろん、機器ではテノールを用いて「家の掃除、環境の整備」をしてあげることも重要です。傷まないように,コントロールしていきます。

 

いずれにせよ様々な治療法を時には併用して総合的に若さを保つ、若い顔貌を作るため、機器だけでなく注入剤、糸などを自在に使いこなせる、そういった美容医療が今後は必要になっていくでしょう。