ハイパワーで痛くない?機械 | 美容外科開業医の独り言

美容外科開業医の独り言

美容医療とは人間愛!という信念で仕事をしている美容外科医のブログです。
レーザーなど最新の美容情報や普段の診療で感じたことなど、ぼやきを交えながら書いていきます。
外見だけではなく心も綺麗になり、自信が湧いて幸せになれる、そんな美容医療を目指しています。

当院ではたるみ治療機としてウルセラシステム(高密度焦点式超音波HIFU)を導入しています。この機器には思い入れがあります。機器の理論を聞いた時に、これは絶対にこれからのスタンダードになると確信し、製造会社がアジアでの症例データを収集する際に日本の大学病院でという話が出た時、製品があるなら購入したいという強い希望を伝え、開業医の分際で研究に割入って導入したのです。当時はまだ米国でも承認を得ていない機器であり、製品として正規に販売をしていなかったことから、世界的にきちんとお金を出して購入した最初の医師となりました。

そのため、初期には臨床データ解析装置も設置して、モニターに協力頂いて実際の効果を得るための照射方法などを検討した経緯があります。その後あっという間に美容医療市場を席巻し、今やたるみ治療機器のスタンダードとなったのは、美容医療機器に興味を持っている患者様ならご存じの通りだと思います。


このウルセラシステム、照射時に痛みを伴います。そのため、当院では痛みを和らげるためにバイブレーターを使って振動を与えたり、冷却装置を用いたりします。我慢できないレベルではないですが、全く痛くないように治療してほしいと言われても、それは難しい機器です。
しかし、同類の製品(HIFUというジャンル)で、痛みが少ないことを売りにしている機器があります。このこと自体はもちろん間違いではありません。但し、理論が「全く」同じであれば、深部を焼灼することに変わりはないため、同じような効果を出すには同じ痛みが生じます。全く同じ理論で痛みは少ない、効果はもっと強いなんて謳うものもありますが、当然これは商業ベースの物言いです。医師である以上、これを鵜呑みにする事は出来ません。

では痛くない理由は何か。
一つには点状に焼灼する密度が低い場合です。隣接する焼灼点との距離が離れていれば、痛みが少なくなります。
最も大きな理由は、焼け方の違いです。超音波の焦点を絞って集束させる(ちょうど凸レンズで光を集めるのと同じ)機器ですが、この焦点の度合いが異なると、しっかり焼けるかどうかが変わります。焦点が甘いとあまり焼けない、つまり痛くありません。
実際に人体に当てた比較データがあるそうで、ウルセラは他と比較して焦点がしっかりと合って焼灼されていました。

同じ出力で同じ理論の機器であれば、痛みが違えば何か違うはずです。

逆にこれを利用して、効果を落とす代わりに痛みを減らすという考えもあります。
当院で導入しているベロHIFUという機器です。クリニックホームページ上ではまだ掲載していませんが、通院中の患者様には既に施術をしています。
フリーハンドのHIFU(ウルセラ)という位置づけで、おそらく焦点も甘く、また手を動かす速度で焼灼する密度が変わる機器です。
通常HIFUという機器は、スキャナが内蔵され、自動的に10~20個程度の焼灼点が決められた高密度/間隔で発生します。ベロHIFUはスキャナを搭載しておらず、自分の手を動かしてマニュアルで焼灼点の位置を移動させていきます。いかようにでも調整できるのです。
動かしながら照射すると痛みは殆どないですが、ゆっくり手を止めていくと痛くなってきます。
当院ではサーマクールやウルセラのような強いたるみ治療の後のメンテナンスとしてお勧めしたり、痛みが苦手な人のための軽いたるみ治療としても実施をしています。
効果の違いを利用して、同じ理論の機器を使い分けていくことも重要だと思っています。

しかし、理論が同じ機器で、痛くないから優れているというのは大きな間違いで、痛いということは実は効果の上では重要なのです。
これは様々な機器で同じです。超音波HIFUに限りません。特にコピー製品でその傾向が強く、我々医療側は正しい事を伝えなければいけません。

最近の美容医療、新しいものが導入される際には業者の言うことを医師が盲信し、いかに他と差別化するかばかりが考えられる傾向にあります。
賢い患者様はそれらをお見通しなので、我々サイドももっと勉強していかなければいけません。