2887.徳(16)徳有る者は必ず言有り | 論語ブログ

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徳(16)徳有る者は必ず言有り

 

子曰わく、徳有る者は必ず言有り。言有る者は必ずしも徳有らず。

    仁者は必ず勇有り。勇者は必ずしも仁有らず。

   憲問第十四  仮名論語202頁5行目です。

   伊與田覺先生の解釈です。

先師は言われた。「有徳の君子は、必ずよい事を言うが、よい事を言う者が必ずしも徳があるとは限らない。

仁者は必ず勇気があるが、勇者は必ずしも仁があるとは限らない」

 

「徳有る者は必ず言有り。言有る者は必ずしも徳有らず」・・・有徳の君子は、必ずよい事を言う。しかし、よい事を言う者が必ずしも徳があるとは限らない。

徳有る者とはどういう人の事でしょうか。徳とは、その人の身に得た品性や生まれつき備わった能力の事を指し、人徳とは、人間そのものが持つ気質や品性という意味合いがあります。その為、徳というのは、その人が生まれつき持っている能力やその人から漂う品の事を指すという事になります。

人を見抜くのは本当に難しい事です。その理由の一つの、私達がおちいりやすい錯覚があります。それは簡単な事なのですが、「AはBである」という事が強く脳裏に焼きついていると、ついつい「それならBはAだろう」と勝手に思い込んでしまいます。孔子はこの錯覚を指摘しているのです。

「徳有る者は必ず言有り」・・・孔子が言われる、徳の備わった人には、必ず善言があります。心の中に蓄積された徳が、おのずから外にあふれ出て言葉となるからです。なぜなら自己の最善を他者に尽くし切ることを実践して生きているから。

「言有る者は必ずしも徳有らず」・・・しかし、善言を出す人が、必ずしも徳のある人とは言えません。言葉巧みに愛想のよい顔付きで、外を飾る人もいるからです。言葉を手段として、上手に並び立てる事ができれば、何かを証明する事は可能です。勇気と称するものを手段として、派手に行動することで何かを立証することもできるでしょう。言葉が一定のカタチに整えられれば、世間では一応の納得を得ることもできるでしょう。時間とコストをかければ形態を飾り付ける事も可能でしょう。十分な下準備と演出が行き届いた舞台で、言葉の形式と論理がしっかりと整えられ、聴かせるテクニックに長けたプレゼンや演説に対して、人は喝采と賛意と共感を示します。しかし、カタチの整った言葉がいつも真実を語っているとは限りません。勇気というものも同じです。たとえば、武闘派を称する者が命がけの喧嘩や果たし合いを誇りにするかもしれませんが、自らの身を犠牲にして他の人を救うという行動が出来るとは限りません。勇気にも蛮勇と真勇があります。言葉にせよ行動にせよ、それらの勇気をただの手段として使うのか、それ以上の何かに基づくかによって違ってくるのです。

「徳有る者は必ず言有り。言有る者は必ずしも徳有らず」に続けて、「仁者は必ず勇有り。勇者は必ずしも仁有らず」と言っています。本当に人間らしい心を持った人は勇気があります。それは、心に私念がなく、義であれば行動を起こすからです。しかし、勇者は必ずしも仁者ではありません。中には血気の勇ともいうべき、道に外れた勇もあるからです。蛮勇必ずしも勇者にあらず。ですね。

勇気のある人が必ずしも本当に人間らしい心をもっているとは限りません。表現力・勇気、これらは優れた資質です。だからといって人間的に優れていると早合点しては危ないのです。

以前、言葉巧みに愛想のよい顔付きで、外を飾る人もいる。と書きました。この「巧言令色」について孔子は次の章のように言っています。「子曰わく、巧言令色鮮なし仁」・・・ことさらに言葉を飾り、顔色をよくする者は、仁の心が乏しいものだ。といういみです。

「巧言令色鮮なし仁」というのは有名な言葉ですが、口さきがうまく顔つきがよいということが、どうして仁徳が少ないということになるのでしょうか。ただ、「巧」は元々材料を折り曲げてうまく細工するという意味ですから「巧言」はただうまい言葉。美しい表現と言うだけではなく、細工された言葉という意味もあるのです。

また、これを裏返したとみられるのは次の章です。「子曰わく、剛毅木訥仁に近し」・・・「剛毅木訥」一本気で無骨・真っ正直で飾り気の無いあり方が仁徳に近いと言っています。

あなたは、どんな人間を目指し、自分磨きをしていますか。

 

 つづく

                                                                                           宮 武 清 寛

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