2842.楽(20)鼓方叔は河に入る | 論語ブログ

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楽(20)鼓方叔は河に入る

 

大師摯(しし)は齊に適(ゆ)く。亞飯干(あはんかん)は楚に適(ゆ)く。三飯繚(さんはんりょう)は蔡に適(ゆ)く。四飯缺(しはんけつ)は秦に適(ゆ)く。鼓方叔(こほうしゅく)は河(か)に入(い)る。播鼗武(はとうぶ)は漢に入る。少師陽(しょうしよう)・擊磬襄(げっけいじょう)は海に入る。

   微子第十八 2891行目

   伊與田覺先生の解釈です。

楽長の摯は齊に行き、亞飯の干(かん)は楚に行き、三飯の繚(りょう)は蔡に行き、四飯の缺(けつ)は秦に行き、鼓(こ)師の方叔(ほうしゅく)は黄河のほとりに隠れた。振り鼓師の武(ぶ)は漢水のほとりに隠れた。楽長の補佐役の陽と磬(けい)を打ち鳴らす役の襄は、海を越えて島に隠れた。

  *殷の末、音楽が乱れたので、各(おのおの)に批難したのであろう。

 

この章は、文化の象徴、ないしは、文化による政治の象徴として重要なものであった宮廷の雅楽を担当する楽師たちが、その維持が困難な政治情勢となったことを悲しみ、各地に離散亡命してしまった、状況を示しています。

摯・干・繚・缺・方叔・武・陽・襄は人名です。

楽器として出てくるのは「鼓」と「磬」です。

磬は昨日書いた通り、への字型に曲がった石の打楽器です。鼓は円筒状で中空の胴に革を張って鳴らす打楽器の総称です。

私達論語普及会では毎年9月28日に行われる台北の「釋奠」に参列していますが、この祭典の開始は「鼓初厳」といい楽生が儀門の西に横向きに置かれた晋鼓(しんこ)を叩きます。最初に枠を軽く、次いで中心を強く数回叩いてから、次第に遠く強めに盛り上げ、またゆっくり弱い調子に戻り、最後に強く一回叩きます。これを受けてもう一人の楽生が儀門の東に置かれた鏞鐘を強く一突きし、それは長い余韻を残します。太鼓と鐘とが鳴り響き、参列者に孔子への尊敬の念を呼び起こして「釋奠」が始まります。続いて「鼓再厳(二の太鼓)」「鼓三厳(三の太鼓)」と多くの太鼓を使い釋奠は進んで行きます。

晋鼓(しんこ)・大型の太鼓で木枠の上に置かれる。孔子廟內の晋鼓は大成鼓とも言います。

建鼓(けんこ)・鼓身に四角い穴があり、柱が通り立てられます。柱の底部は十字形で、四頭の獅子が彫られている。転班鼓とも言います。

應鼓(おうこ)・底部が十字形で柱で立てる。

鼗鼓(とうこ)・太鼓の一種で小さく、柄が付き両脇に振子があり、柄を持って搖らして振子を当てて音を出す。また搏浪鼓とも言う。下についている柄を三回回すことにより諸楽器が合奏を始めます。

摶拊(はくふ)・一種の小鼓で、手で叩いてリズムを取ります。

釋奠では、上記のような太鼓の演奏を聞くことができます。

「大師摯(しし)は齊に適(ゆ)く」・・・。大師は楽団長でその摯は齊に亡命した。泰伯第八仮名論語105頁6行目の師摯(しし)はこの人物です。魯に仕えていた時に季桓子が斉に女楽を受け入れたため魯の音楽が乱れたとして斉に逃れたのだそうです。

亞飯・三飯・四飯は諸説あります。天子の食事は四の膳まであり、各膳ごとに音楽が演奏され、亞飯は一日のうちで二度目に取る食事・昼食の時に演奏する係の楽官で以下三飯・四飯はその係の楽官というのが一説ですが、単純に次席・三席・末席と考えてもいいでしょう。

「亞飯干(あはんかん)は楚に適(ゆ)く。三飯繚(さんはんりょう)は蔡に適(ゆ)く。四飯缺(しはんけつ)は秦に適(ゆ)く」・・・亞飯の干(かん)は楚に行き、三飯の繚(りょう)は蔡に行き、四飯の缺(けつ)は秦に行った。

鼓・播鼗は楽器の名前です。

「鼓方叔(こほうしゅく)は河(か)に入(い)る」・・・鼓の係の方叔(ほうしゅく)は黄河のほとりに隠れ、「播鼗武(はとうぶ)は漢に入る」・・・振り鼓の係の武は漢水のほとりに隠れました。

少師は大師に次ぐ副楽団長・擊磬は磬という楽器を叩く係です。

「少師陽(しょうしよう)・擊磬襄(げっけいじょう)は海に入る」・・・楽長の補佐役の陽と磬(けい)を打ち鳴らす役の襄は、海を越えて島に隠れた。という事です。

殷の末、音楽が乱れたので、各々に批難したのでしょう。

孔安国も「魯の哀公の時、礼壊れ楽崩れ、楽人皆な去る」と言っています。

朱子は、賢人の隠遁であるという点から前の章にくっついたのであろうが、必ずしも孔子の言葉ではあるまい。と言っています。

 

つづく

                                                                                            宮 武 清 寛

                                                                                              論語普及会

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