273系 特急やくも / やくものくも | 安芸もみじ / Photos, Historys, Trains - Hiroshima JAPAN

273系 特急やくも / やくものくも


今さらではありますが、日本初の特急列車は1912(明治45)年6月に誕生した特別急行列車です。

鉄道開業以降において、急行列車より速い列車にはその種別を表示するにあたり「最急行」と表記されました。

1906(明治39)年4月に新橋~神戸間で運行開始された最急行 1・2列車は、運賃とは別に初めて速達料金を徴収する列車とりました。

この列車が運転区間を延伸して関釜連絡船接続の国際連絡運輸列車となる際に、種別名称を特別急行 = 特急と改めた訳ですが、1914(大正3)年12月に東京駅が開業すると、東京~下関間の運転区間となります。




昭和の時代に入ると金融恐慌が発生して世界的に大不況に陥るのですが、経済活性化を目的に人の流動を増やしての消費と、生産性の向上を促す目的の1つとして、特急列車の愛称を公募しました。

優等列車に名称を付けて経済活性化させる方法は、既に諸外国で実施されて一定の成果を出していたため、日本でもそれを倣ったものでした。

そして誕生したのが1929(昭和4)年9月15日にデビューした、特急富士と特急櫻でした。

列車名の無い時代から通して見ると、日本最古の特急列車は富士ですが、富士は2009(平成21)年3月13日で廃止となっており、現存する日本最古の優等列車は新幹線として走る さくら 昨年100周年 を迎えています。





さて現存する優等列車としての日本最古は さくら ですが、しかしちょっと違った角度からネームドを見てみると、そこにはまた別の列車名が顔を出してきます。


「八雲立つ 出雲八重垣 妻ごみに 八重垣つくる その八重垣を」

(やくもたつ いずもやえがき つまごみに やえがきつくる そのやえがきを)


これは日本最古の和歌で、素戔嗚(スサノオ)命が愛しい妻を思って詠んだ歌です。


記紀は実際にあった史実と、偉大な王を称えるために創られた伝説とで、織り成されている物語です。





しかしこの歌の部分は、雲が幾重にも湧く出雲の地で、新婚の妻との新居によい場所を見つけた。妻のために垣根を幾重にも造ろう•••••••と歌ったもの。


1万年と2000年前から愛してる~はアクエリオンの歌ですが、何千年経っても変わらないかけがえのない大切な人を思う気持ち••••••••愛してる思いに胸を高鳴らせた1人の男の純粋な心です。


そんな2000年の時を超えた愛する人への思いが、この 優等列車の名前••••••••特急やくもです。


ところで八雲と言えば、やはり連想するのは出雲大社(いずもおおやしろ)なのですが、出雲大社は大国主(オオクニヌシ)命を祀るお社です。





本殿の天井には色彩豊かな雲 = 瑞雲が7つ描かれており、太古の昔から天井画は補修されていないにもかかわらず、色が褪せることなく上の写真の通りなのですけれど。

資料館には色彩を付けていない実物大の瑞雲が、展示されていてそのデザインに心を奪われるのですけれど、この瑞雲が新型やくも 273系の雲のデザインの基となっています。

7つの瑞雲が描かれているカードは、出雲大社 平成の大遷宮の際に、本殿へ昇殿した時に頂けた記念昇殿証です。

出雲大社 本殿内の天井画を転載した図柄なのですが、381系 特急やくものヘッドマークには、その名の通り8つの雲が描かれいます。




これは国鉄と言う国の機関として存在していた時代にデザインされたもので、JR西日本となってから描かれた特急マリンやくもにも、8つの雲が継承されています。

このことは、歴史的背景から八雲は出雲大社の天井画からではなく、あくまでも日本最古の和歌 スサノオの愛の歌がモチーフであると、堂々と主張しているものだと言えます。

273系となって雲の数は1つになってしまいましたが、基本4両編成だと12の雲が描かれていて、デザイナーさんも8にこだわるとバランスが•••••••との、苦肉の選択だったのでしょう。






ただ″8″ではなく″八″と漢字で表すと、元々の末広がりと言う意味から、日本語本来の意味である″幾十にも″とのことばになります。

八雲立つ 出雲の地•••••••八百万に出で立つ雲の地。

増結8両編成だと24の雲が走り抜けることになる特急やくもですが、8つの雲にこだわらずにことば本来の意味に立ち返れば、将来12両編成で走ることがあっても、神々のふるさと特急であらんこととなり得るのでしょう。

そこに愛はあるんか?と問われても、特急やくもこれまでもこれからも、2000年の愛を背負って走り続けますので、是非、カップルでご夫婦でご家族で。




ちなみにスサノオの娘と結婚したのがオオクニヌシなのですが、 出雲大社も縁結びの詣での聖地ですよね。

で、なぜ出雲は出雲と呼ばれるのかは歴史学者の中でもいろいろ議論があるのですが、出雲大社本殿の天井画の雲を、一番デザイン的に忠実なのは、準急やくものヘッドマークだと私は感じます。

出雲大社の本殿へ入れるのは60年に1度なのですが、次の昇殿の時には私は109歳なので生きているかどうかは分からないのだけれど、できることならあの美しい瑞雲の天井画をもう1度、この目で見てみたいものです。

それと古代は出雲の地の1つ、現在は松江市と言う行政区分になっている佐草(佐久佐)町には、素戔嗚命が建てた″八重垣の宮″のあった場所へ、八重垣神社が建立されていて、こちらも縁結びの神さまとして霊験あらたかな聖地となっています。

と、話しが逸れたついでなのですが、列車名の公募結果を最後に••••••••1位「富士」、2位「燕」、3位「櫻」、4位「旭」、5位「隼」、6位「鳩」、7位「大和」、8位「鴎」、9位「千鳥」、10位「疾風」、11位「敷島」、12位「菊」、13位「梅」、14位「稲妻」、15位「宮島」、16位「鳳」、17位「東風」、18位「雁」 でした。



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