今日の京都2月21日(水) | 都のかほり日記

都のかほり日記

京都、奈良、滋賀、神戸、東京。私のテリトリーです。
そこでのさまざまな出会いを綴っています。
仏像が大好きで、美味しいもの、スィーツ、美しいものが大好き。あちこちと出没しています。

おはようございます。
今年、NHKの大河ドラマは「光る君へ」です。平安時代を舞台に、「源氏物語」の作者「紫式部」(むらさきしきぶ)の波乱万丈な人生を描いた物語で、楽しく観ています。




そこで、ふと、思い出したことがあります。
今年の夏、紙幣(お札)が変わります。
2000年に発行された二千円札を覚えていらっしゃいますか。あまり、流通もしないで、見かけなくなりました。もし、お手元ににこの二千円札がおありの方、ちょっとご覧になってみてください。
この二千円札には紫式部が描かれています。
表側に沖縄の守礼門がデザインされています。これは、二千円札が発行された2000年が、九州・沖縄サミットの年だったためです。
 紫式部の姿は裏側に描かれています。正確には「紫式部の肖像画」ではなく、「源氏物語」と共に、「紫式部日記絵巻」の紫式部の絵がデザインされています。紫式部が採用された理由として、財務省は「源氏物語が、今からおよそ千年前の平安時代中期、紫式部により書かれた、我が国が世界に誇るべき文学作品であることから、採用したそうです。なお、『鈴虫』の詞書については、絵の場面とは異なりますが、『鈴虫』の冒頭にあたり、『すずむし』の文字が見られ、また、文字の美しさという点で評価が高いことなどから採用したものだそうです。






【『源氏物語』と椿餅】
急に紫式部や『源氏物語』を思い出したのは、椿餅からです。
今の季節、和菓子屋さんには椿餅が並びます。



椿餅は「つばきもち」と読みますが、「つばいひもち」と読むのが古来からの読み方です。
椿餅、椿の葉の緑がとても鮮やかです。この椿餅は平安時代から食され、『源氏物語』にも記載があるのです。

『源氏物語』は五十四帖からなる大作です。光源氏をはじめとして、登場人物の心理描写素晴らしい恋愛小説です。それだけではなく、四季折々の自然の変化や当時の貴族の生活も描かれていて、わくわくしながら読んだものでした。
「椿餅」が登場するのは『源氏物語』第34帖「若菜上」です。この時、光源氏41歳で3月の夕暮れ、六條院春の御殿で光源氏のお召しにより若者達が蹴鞠に興じていました。蹴鞠ののち、饗宴が催され「椿餅」の名が登場します。



 
わざとなく、椿餅、梨、柑子やうのものども、さまざまに箱の蓋どもにとり混ぜつつあるを、若き人びとそぼれ取り食ふ。さるべき乾物ばかりして、御土器参る。

(訳:気楽に、椿餅、梨、柑子のような物が、いろいろないくつもの箱の蓋の上に盛り合わせてあるのを、若い人々ははしゃぎながら取って食べる。適当な干物ばかりを肴にして、酒宴の席となる。)


蹴鞠後の賑やかな雰囲気のまま、若い貴公子たちは、はしゃぎながら果物や椿餅を食べたと記されています。

椿餅は、最古の和菓子といわれ、南北朝時代に書かれた源氏物語の注釈書『河海抄(かかいしょう)』によると、椿の葉を合わせて餅(もちい)の粉に甘葛(あまずら)をかけて包みたる物と説明されているようです。
当時、砂糖のような甘味料はなく、甘味は生地に甘葛 (あまづら:つたの汁を煮詰めたもの) をいれる程度で、その糖度は、今の5分の1程度だったかと思われます。
餅粉に甘葛をかけて丸めたものを、椿の葉二枚で上下をはさんだもので、形としては現在の椿餅と同じようなものだったようです。

この椿餅の他に供された、
果物としては、奈良時代に栽培が始まっていた橘(たちばな)、甘子(こうじ)、柚子(ゆず)、枳(からたち)などがあり、他の果実では桃、梨、木通(あけび)、郁子(むべ)、柿、梅、
枇杷(びわ)、棗(なつめ)、苺(いちご)、茱萸(ぐみ)などがありました。
また、乾物は、蒸鮑(むしあわび)、干鯛(ほしだい)、焼鍛(やきだこ)の他、楚割(すわやり)、干鳥(ほしどり)などが代表的でした。
楚割は鮭を細く切って干したもの、干鳥は雉(きじ)肉を干したものです。

このように椿餅は平安時代に蹴鞠の後に供される定番の菓子でしたが、江戸時代初期に書かれた『蹴鞠之目録九拾九箇条』(1631)にも、「鞠場へ可出物之事」として名前が見えます。現在、蹴鞠保存会などで、蹴鞠が行われていますが、椿餅を用意することはないそうです。


【『源氏物語』の中に出てくる菓子】

この『源氏物語』の中には椿餅の他にも、いろいろなお菓子が登場します。
○ 源氏物語 第19帖「薄雲」(うすぐも)
唐菓子(からかし・からがし・からくだもの)
唐菓子(中国から製法が伝わりました)の多くは、米粉や小麦粉を水でこねて形作り、油で揚げたものでした。
亀屋清永 さんの清浄歓喜団や餢飳(ぶと)が現代に伝わっています。






○ 源氏物語 第49帖「宿木」(やどりぎ)
『源氏物語』の注釈書『原中最秘抄(げんちゅうさいひしょう)』(14世紀成立)によれば、粉熟は稲(米)、麦、大豆、小豆、胡麻などの粉に、甘葛(あまずら)を加え、こねた物をゆでて餅のようにしてから、竹筒に入れてしばらく置いた後、突き出して切ったもの。

○源氏物語第9帖「葵」
「葵」には旧暦十月亥の日の亥の刻(午後9時~午後11時)に食べる亥の子餅が出てきます。

 『源氏物語』では、光源氏と紫の上の新婚第二夜に、亥の子餅が登場する場面があります。



光源氏と紫上の結婚の翌日に出された亥の子餅(いのこもち)を翌々日の子(ね)の日に三日の餅(みかのもちい)として転用したところから、たわむれて言った言葉です。
三日の餅・三日夜の餅とは平安時代以降、婚礼三日目の夜に新郎・新婦が祝って食べる餅のことです。
光源氏が初亥の日に差し出された亥の子餅を見て、明日の夕方に紫上にお供えするようにと言ったのを受けて、光源氏の家臣・惟光は子の子(ねのこ)の餅、亥の日の翌日は子の日なので機転を利かせて、いかほど用意いたしましょうかと伺ったところ、光源氏はこれの三分の一ぐらいと言った件に、「子の子餅」が出てきます。
光源氏のユーモアあふれる言葉に、惚れ惚れしてしまいます。

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和菓子屋さんで並ぶ椿餅にも、こんないわれがあり、それが千年以上も、少しずつ姿形や味も変えながらも、今なお作られ、食されていること、感動です。
今日、椿餅を求めて、その歴史と共に味わいたいと思います。
今日は一段と気温降下の予報が出ています。気温情報を見ながら、着るものの調整をなさってくださいね。
どうぞ、今日もお元気で笑顔の楽しい1日でありますように!
行ってらっしゃい!

【今日の京都令和6年2月21日(水)】(No.3383)


※掲載の情報等が変更になる場合があります。お出かけ前にご確認ください。

中止になっている行事もあります。
お出かけの際にはご確認の上、お出かけください。

https://ja.kyoto.travel/news/format.php?id=143

○弘法市/東寺





日程2月21日

弘法大師の月命日の21日に行われる弘法市。東寺の境内に、骨董、特産品、植木、園芸、陶器等々、1200軒の露店が並びます。
アクセス
近鉄電車 東寺駅下車 徒歩約10分/市バス 東寺東門前下車すぐ/JR京都駅下車 徒歩約15分

○足腰祭/護王神社





護王神社は足腰の神様として知られています。 毎月21日の午後3時に足腰祭が行われます。参列者は本殿での祈願祭の後、表門前の御千度車を回し、足腰の大御守の下をくぐって足腰の健康安全を祈願します。
(参列自由) 

日程2月21日
時間午後3時

アクセス
地下鉄丸太町駅下車
市バス烏丸丸太町下車 

○ 北野天満宮 梅苑公開(〜3月下旬)

○ 第58回 京の冬の旅 非公開文化財特別公開(〜3/19)

○ しだれ梅と椿まつり(〜3/22)/城南宮


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