花 255 | 舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

腐女子向けのお話ブログです。

「うーん………。おれにはよく分かんない」





印籠よろしく大野さんに向けたスマホ。オレンジくんの禍々しい葉っぱの写真。


それを見て大野さんは言った。





ですよね〜。


そうですよね〜。


普通はそうなりますよね〜。





葉っぱ1枚を見せられて、見て、どうこうなんて。


これを見て怒ってるだの恨みだの言えるのは、森田さんぐらいだ。





「ただ」
「………え」
「ん?」
「あ、いえ。すみません。『分かんない』から続くとは思ってなくて」
「あー、いいならいいけど」
「いえいえすみません‼︎聞きます‼︎聞きたいです‼︎ぜひ聞かせて下さい‼︎お願いします、大野さん‼︎」
「必死かよ」
「必死ですよ、そりゃ‼︎だって殺気だのコロされるだの言われてるんですよ、俺‼︎それもあなたに‼︎他の人の見解なんか、聞きたいに決まってます‼︎」
「知らねぇよ。お前が勝手に恨まれてるだけだろ」
「だからそれ‼︎何故⁉︎ほわーい⁉︎が、知りたいんです、俺は‼︎何でこの葉っぱを見てそう思うか‼︎」
「だから知らねぇよ。そう思うから言っただけだろ」
「俺はそう思わないというか思いたくないんです‼︎だから根拠‼︎理由プリーズ‼︎下さい‼︎」
「櫻井くんって、相葉ちゃんとこ行ってキャラ変えたの?」
「………え?」
「何か面白くなってるよ。前は森田さんにそこまで言えてなかったのに」
「………え?」





え?





キャ………キャラ変?





は、してないけど。


したつもりはナッシングだけど。ZERO〜だけども。





けど、俺今めっちゃ言い返してた?よね?そういえば。確かに。


ヒットマンともヤ◯ザとも言える森田さんを相手に。ごく普通に。





もちろん、教えてくれという切実な願いはあるのだが、それにしたって。





やべぇ、やっちまった‼︎って少々焦ったものの、当の森田さんはというと、別に、だ。


俺に対して怒るとかキレるとか圧をかけるとかは一切ない。普通。





………あれ?





森田さんって実は全然、俺が勝手にビビってただけで。


もしかして、ただ口の悪い、見かけだけこわい人?なの??





っていうか俺、リーフシード行ってからたくましくなった?かも?





ってそりゃな、あの四人を相手にしていればな。たくましくもなるって話だ。





「で?ただ何だよ、大野」





俺が目をぱちぱちして森田さんを見ているのが気に入らないのか単に続きが気になるだけなのか、森田さんが大野さんを促した。





ああ、そう。今はそれ。その先、続き。





「怒りを絵で表すなら、色は赤だし、形は尖らせるよね」
「………っ」
「って、思っただけ」
「ああ、お前絵描くんだっけ」
「少しね」





………怒りを絵で表す、なら。





そもそもだ。


そもそも俺も思っていた。感じていた。


最近のこの葉っぱは怒っているように見えると。





だからだろ。


だからだよ。


こんなにもこわいと思うのは。





森田さんの言葉も、大野さんの言葉も。





「あと、森田さんの危険察知力は、信じた方がいいよ」
「………え」
「この人こんなだけど超ビビりだから、そういうセンサーが敏感にできてる」
「はあ⁉︎誰がビビりだよ、誰が‼︎」
「森田さん」
「ビビりじゃねぇよ‼︎」
「ビビりじゃん」
「どこがだよ‼︎」
「全部」





………このふたり、どっちが年上だったっけ?





って、森田さんのが年上だけど。





そうか、森田さんってこういう人だったんだ。知らなかった。





じゃ、なくて。


もちろん、そうじゃなくて。





オレンジくんだ。





オレンジくんは、もう完全に………黒なのかもしれない。





「相葉に言っとけ。そいつ、なるべく早く処分した方がいいって」
「………」





もう一度スマホの画面、オレンジくんの葉っぱの写真を見ていた俺に、森田さんのトドメの言葉。





そんなの、言えるわけ。





それは、スマホを持っていた手を、言えるわけないだろって力なくだらんと下げた時だった。





どこにそれは、今まで潜んでいたのか。





ひらり





落ちた。





葉っぱ。





「うわあああああ‼︎お前‼︎」
「………っ」
「ん?」
「おまっ………何で連れて来てんだよ‼︎連れて来んなよ‼︎バカじゃねぇの⁉︎」





黒く、赤く、棘棘しいオレンジくんの葉っぱが。





俺の、足元に。





ドッドッドッドッドッ………


ドッドッドッドッドッ………





やばい。





ドッドッドッドッドッ………


ドッドッドッドッドッ………





『聞かれた』。





背中にぞくりと、冷たいものが走った。