「もう生きてんじゃん、コレ」
「………え?」
森田さんの言葉が衝撃的過ぎて、俺の意識が一瞬にして宇宙までどっかんした。
………生きてる?
え、生きてる?は?生きている?これが?オレンジくんの葉っぱが?
ドウイウコト?
昨日俺は、雅紀に連れられて松本さんオススメの神社に行ってきた。
お祓いをしてもらうために。
俺としては別に悪いことばかりでもなかったから、その必要はないと思っていたのに、だ。
十分悪いよ‼︎って力説されて。しかも俺以外の4人に。
そうだろうか。
そうなのだろうか。
けど俺、雅紀という超絶愛しい存在を手に入れたんだよ?手に入れちゃったんだよ?
フリーから一転、単に『想う相手ができた』じゃ、ないよ?
手に入れちゃった、だよ?
いや、手に入れたと言っても、アレコレ色々致してはいても、まだ最後の一線はこえてはいないが。そう、まだ。
ここまで致しておいてウソだろ⁉︎と、自分でも思うが、完全に余談であるが、これには実は深い深い事情がある。
事情。
それは。
一線をこえる前に俺のパオンが萎むという深い事情。
萎むというか、萎まされるというか。
お天使顔の凶悪超絶絶倫パオン男雅紀の手によって、一線をこえる一戦に挑む前にな。しょぼんにされる。俺のパオンは。故にこえられずにいる。未だ。
心は絶対、100%手に入れているのに、身体はまだ。99.9%で止まったままだ。
しかも不慮の?事故により両手両膝をやられた俺はさらに戦闘不能。
またしばらく一線をこえる日は遠のき、昨夜も今朝もなされるがまましかなせないのである。俺は。俺のパオンは。
そう、もうずっと、お天使のおもちゃ状態のもちパオンなのである。
などという話は置いておいて。
昨日雅紀と神社に行き、思いがけずのデートを楽しみ、翌日の今日は雅紀と大学に、研究室に、森田さんのところに赴く予定だった。
だがしかし。
駄菓子菓子。
ケガには注意だ、たかはしたかし。
雅紀が行けなくなった。
風間さんとふたりで取引先に行かないといけなくなった。
もちろん雅紀はゴネた。風間さんに。風間ぽんひとりで行ってきてよ、と。オレ行かない、と。
でも、ゴネてもダメだった。
まーくん、会社潰す気?ってイっちゃってる目で。風間さんが。
しかもそのままの目で
『いいけどね?潰すんなら潰すで、おれはもう一生遊んで暮らせるお金を稼がせてもらったから、いいけどね?別に。まーくんだって困らないと思うけどね?別に。でも知らないよ?会社潰したらおれも櫻井さんもここに来る理由なくなるけど、いいんだね?いいってことだよね?それで。おれ知らないよ?風間コーヒー飲めなくなるけど、櫻井さん大学に戻って行っちゃうけど、ふたりで共同開発できなくなるけど、それでいいんだよね?いいってことだよね?まーくん』
正直、俺はあまりの恐怖にちびるかと思った。
ばっきばきにイっちゃってる目でソファーに座る雅紀を見下ろしながらのあの圧。
それでも雅紀は対抗した。『それぐらいじゃ潰れないよ』と。
信じられなかった。俺には。
まだそこで対抗できる雅紀が。
あの圧を前に反論できる雅紀が‼︎
『………は?』
それは爆弾。
圧倒的爆発力の『は?』であった。
さすがの雅紀も、その爆弾に降参して分かったよもうーって言った。
と、思った。
だがしかし。
駄菓子菓子。
本日二度目のたかはしたかし。
『そんなにオレと一緒にいたいの?』
え。
『しょうがないなあ、風間ぽんは』
え?
もはや武器とか兵器並の威力の『は?』だ。
風間さんって絶対ただの弁護士じゃないって。ってぐらいの圧の。
そんな風間さんに、のほほんと、平然と、言ってのける雅紀。
うん。
雅紀も相当ただものじゃないよね。
うん。
知ってたけどね。
『当たり前でしょ?何言ってんの、まーくん』
………。
このふたりの友情は、俺にはよく分からないのである。
そんなこともあり、ひとりでソイ御殿お留守番も無理で、心配する雅紀を何とか説得して、ひとりで病院や手土産購入、丸山ぱんにての昼ご飯を経由し、到着した研究室。
『今日はあの変なやつ持ってきてねぇだろうな』
が第一声だった森田さんに、オレンジくんの葉っぱの写真を見せたら冒頭だ。
「生きてんじゃん、コレ」
「………え?」
「お前らまじ何飼ってんの?宇宙人か?」
「はい⁉︎い、生きてるって森田さん………」
「植物がこんな短期間にここまで形を変えるとかねぇだろ。表情だろ、これ。怒ってんだよ。お前めちゃくちゃ恨まれてるんだよ、絶対」
「………っ」
絶句。
森田さんの言葉に、俺は完全に言葉を失った。