ドッドッドッドッドッ………
ドッドッドッドッドッ………
心臓がうるさい。
その音は大きく、スピードも早い。
ドッドッドッドッドッ………
ドッドッドッドッドッ………
はち切れんばかりだ。
飛び出す寸前だ。
暴れている。
体内で。俺の心臓が。そして。
『俺』が‼︎俺のマグナムが‼︎パオンが‼︎
「風間ぽんに聞いたら、しょーちゃんに言えって言われたんだよ」
「か、風間さんに⁉︎」
「うん。しょーちゃんとキスするとオレのぴーがぴーしちゃうんだけどって。そしたらそれはおれにじゃなく櫻井さんに言ってって。そしたらきっと解決してくれるからって」
「解決⁉︎」
「うん。解決。だからしょーちゃん、オレのぴーを何とかして」
「なっ………ななっ………何とかって⁉︎」
「何とかだよ。しょーちゃんとキスするとオレのぴーがぴーしちゃうんだから、ちゃんと責任とってくれなきゃ」
「それはっ………そう、なんだけどもっ………」
ドッドッドッドッドッ………
ドッドッドッドッドッ………
早鐘………いや、超早鐘。まじで心臓がオロロンと飛び出そうだ。
風間さんに相談なんて。
風間さんに、キスだけでなくぴーしたぴーをどうしたらいいかなんてことまで相談しているなんて‼︎
今の今までに元気よく起立していた俺のパオンが、みるみるうちに萎びた。萎れた。
でもそれ以上に何かすごいことを言われてないか⁉︎
何かすごいことをやれって言われてないか⁉︎
頭が全然‼︎まったく‼︎微塵もついていかないんですけど⁉︎
と、パニックでパルプンテパルパルな俺は今、迷彩柄のラグの上にひっくり返され、ほぼバンザイ状態で床にはりつけにされている。
もちろん、雅紀によって。
だから今、俺の視界には雅紀のみ。
電気が煌々とついているから逆光ではあるが、それでも見えるその顔は、表情は決してお天使ではない。
妖艶。
色香を漂わす目、濡れて弧を描く唇。
それは雅紀史上最高に妖しく艶めかしい。
そう、妖艶。
ほぼバンザイになっている俺の両手首はそんな雅紀にしっかりつかまれ、微動だにしない。ぴくりとも動かない。
おかしい。
何故こうなった。
プレゼントを渡した後、買ってきたご飯を一緒に食べた。
おしゃれでおいしいと有名なお店のクリスマス特別ケータリングだ。
プレゼントしたグラスにノンアル飲料を注ぎ、誕生日おめでとうとグラスを合わせて、おいしいおいしいってふたりで食べた。
デザートもついていたからインスタントだけどコーヒーもいれた。もちろんさっきプレゼントした緑と赤のマグカップに。
そしていつも以上にまったりゆったりしていたら、しょーちゃんって雅紀からキスプリーズの『ん』を頂き………。
「どうにかしてくれるよね?」
「………えと」
「責任とってくれるよね?」
「………あの」
「じゃなきゃお願いしたのにしょーちゃんがどうにも何もしてくれないって、風間ぽんに言っちゃうよ」
「いや、それはっ………」
「しょーちゃん」
「はっ………はいっ………」
「えっともあのもいいから、今すぐオレのぴーしたぴーをどうにかして」
ぐいぐいぐい。
ぐいぐいぐいぐい。
ぐいぐいぐいぐいぐいぐいぐいぐい。
ノンアルで酔ったのこの子⁉︎
ってぐらい雅紀に迫られに迫られ迫られまくり。
「しょーちゃん」
「………っ」
もうこんなの耐えられるわけないだろ‼︎って。
俺も雅紀もびっくり、火事場の馬鹿力的に俺は雅紀のはりつけから脱出。
そのまま勢いで雅紀をひっくり返し、雅紀の上に乗っかった。
雅紀が俺を見上げている。
俺が雅紀を見下ろしている。
こっ………これは。
ひっくり返したはいいけど‼︎期待の眼差しで俺を見上げている雅紀に、俺は一体、この先は一体どうしたら⁉︎
………キス以上をするなら、曖昧あやふや流され本能はダメだ。
と、思う。
無責任にそんな、それ以上はしたらダメだ。
はっきり、させなきゃ。
理性をぶっ飛ばしてしまいたい気持ちを全力でおさえて、雅紀って、掠れに掠れた声で、お天使の名を呼んだ。
いいところでまた来週(笑)