「かいまきってあっついね」
そう言って雅紀は羽織っていたかいまきをちょっと脱ぐねって脱いだ。
帰って来て冷え切った部屋を温めるために暖房の温度を高めにしてあったからだろう。
俺もちょっと暑かったから脱いで、暖房の温度も少し下げた。
「実際これはかいまきって言うより着る毛布って言われてるやつで、本当のかいまきはもっと布団っぽいやつなんだよね」
「へー」
別にここでかいまきが何たるかなんて講釈を垂れなくてもいいとは思うのだけど、天才相葉雅紀に間違った知識を植え付けるのもなということで、俺はスマホでかいまきを検索して雅紀に見せた。
あまり興味はなさそうではあるが、そこはまあ俺の自己満のためだ。許しておくれ。
「え、これ、もう完全布団じゃん」
「うん。昔はこういうのを使ってたんだけどね。俺も」
「そうなの?」
「そうだよ。でも利便性を考えたらこっちの方が良くて、今はこっち」
「どっちでもしょーちゃんが着てるってのがかわいいよね」
「いや、別にかわいくは………」
ないと思うのだが。
小さい子が寝るときにお気に入りのタオルや毛布がないと眠れないって言うならまだしも。
アラサーだよ?俺。おじさんだよ?
この子のかわいいの基準は大丈夫だろうかと心配になってくる。
「だってこの時にも着てたんでしょ?」
って見せられた雅紀のスマホの画面には、今の雅紀ぐらいの頃の俺の写真。
しかも恥ずかしいことにキメ顔だ。まじやめろ俺。
っていうかこの写真何だ。何で風磨がこんなのを持っているんだ。
でもってこうして見ると、俺ってなかなか………かなり、チャラい。
髪の毛は金髪とまでは言わないけど、かなり薄い茶色だし。
これにピアスと………へそピアスまでしているってな。どんだけだよ俺。俺が俺に引くっつーの。
「えー、かいまきにつきましては、幼少期よりずっと愛用しておりまして………」
「この顔でかいまき着てるっていうのがいいよ。しょーちゃんサイコー」
「いや、顔はあまり関係ないと………」
「だって絶対着なさそうな顔じゃん」
「………確かに。超カッコつけてるからね、この写真は特に」
写真を一緒に見るためか、スッと隣、ものすごく近くに雅紀が座っての他愛もない話。
くふふふ、くふふふって柔らかい笑い声が、ものすごく耳に心地良い。嗚呼、至福。
しかもそこからはふわっと、それこそこの写真時代に使っていた香水のにおい。
何かあれだな。
プレゼントしといて何だけど、ちょっとマーキングっぽいよな。
自分のにおいを相手にって。
「この香水もこの頃?」
「え?あ………うん。そう。この頃」
「しょーちゃんこのにおいが好きなの?」
「あー、においが好きって言うか、これなら間違いないだろうって。ベタなやつだから」
「ベタなんだ、これ」
「結構がっつりベタだよ。ちょっと前に流行ってた歌にもあったじゃん?」
「歌?」
「知らない?香水って歌」
「知らなーい」
「一時期すごい流れてたから、聞いたことあるんじゃない?」
そう聞いたはいいけど、こんな歌だよって歌えたらよかったんだけど、結局俺もどんな歌だったっけってなってまたスマホで検索した。
タイトルって香水でいいよな?あれ違った?
と、少々どきどきしつつ。
検索したら無事ヒットして、ちょうど聞けたから雅紀と歌詞を見ながら聞いた。
俺の記憶ではこの曲ってかなり流れてたと思うんだけど、どうやら雅紀は初めて聞いたらしい。
そこはさすが雅紀と言うべきか。
流行より種だもんね。この子はね。ずっとブームは種だもんね。
「何か………悲しくない?この歌」
「うん。俺もちゃんと歌詞見るのって初めてだけど、こんな歌だったんだってびっくり」
「でもこれはしょーちゃんのにおいなんでしょ?」
「そう。俺が使ってたにおい」
「忘れられない人のにおいとかじゃないよね?」
「ええ⁉︎ちっ………違うよ‼︎違う違う‼︎絶対違う‼︎」
「忘れられない人のだったらやだよ?」
「だから違うって‼︎本当に俺が使ってたやつだから‼︎」
忘れられない人のにおいって‼︎
そんなのないから‼︎そんな人居ないから‼︎
めちゃくちゃ焦って色々言ったけど。
え。
忘れられない人のだったらやだよって。
忘れられない人のだったらやだよって。
忘れられない人のだったらやだよって‼︎
焦った後、え?え?ってなっている俺に、雅紀はまた柔らかく、くふふふって笑った。
神さま、お願い、助けて‼︎
雅紀がかわいすぎて、俺どうにかなっちまいそうです‼︎
今日のお話はプロデューサーによる『香水』の歌使ったお話書いてっていう無茶振り(笑)からできたお話です。
言われて書ける私って天才じゃない?←
言われて5分ぐらいでこの流れが思いついた私超天才じゃない?←
こうやってどんどん話数が増えていくのです(笑)
米お待ちしてます🌾