花 173 | 舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

腐女子向けのお話ブログです。

はっきり言って恐怖でしかない。


見つけたオレンジの葉っぱが。





何で、ここに?





って、多分俺の服とか雅紀の服にくっついていたのだろうが、はっきり言って拾いたくない。





のだが。





ここは店内。しかも飲食店。しかもいつもたくさんパンをくれる丸山さんのお店。





拾いたくない。触りたくない。何なら視界に入れたくないが。





「あ、もしもしぴーちく?相葉です」
「………へ?」





ゴミなのだから拾わないと、と、触りたくないの葛藤に、小さめのテーブルに置いたパンが山盛りのトレイの両サイドの手をぐっと握り締めて本気で悩んでいた時だった。


隣から、電話をかける雅紀の声で。





え?ぴーちく?


今、ぴーちくって言った?


え、ぴーちくって何?





「ぴーちくでしょ。別にぱーちくでもいいけど」
「え?ぱーちく?」





ぴーちくの次はぱーちくで、え、誰?って思わず雅紀を見た。


そしたら、雅紀はさっきの人って。





え。


さっきの人?


さっきの人って、まさか。





まさか。





「………ふ、風磨?」
「あ、うん。それ。その人」
「何でぴーちく?」
「ああ、その人ぴーちくぱーちくうるさかったから」





雅紀は今、電話をしている。


けど、俺が誰?ってなったから、電話の相手………つまり風磨をほっぽって誰かってのを教えてくれた。





風磨。





さっきはちゃんと風磨って呼ばれていたのに、もう忘れられていて、しかもぴーちくって。ぱーちくでもいいって。





ぶふっ………





今の今まで、床に落ちているオレンジの葉っぱのせいで恐怖一色だったはずなのに、それはそれは雅紀のナイス過ぎる風磨ネーミングでぶわっと消えた。





「写真ありがと。でもいくらしょーちゃんのカッコいい写真でも、ぴーちくが一緒に写ってるやつはオレいらない。え?いらないよ。もらったやつ一回消すから、アルバムの中身しょーちゃんだけにして送り直して。うん、そう。早くね。じゃあ」
「………え?」
「ん?」





え、ちょっと待って。


ちょっと待ってこの子今。





先ほど何回か鳴っていた雅紀のスマホ。


それはやっぱり風磨からで、俺の写真が送られてきていた。


雅紀の要望通りのはずなのに、ダメ出し。送り直し。





何故ならそこには風磨も一緒に写っている写真があったから。





「オレが欲しいのはしょーちゃんなんだよ。ぴーちくはいらない」





うっ………。





ずぎょん。





ずぎょん、だ。


今の雅紀の言葉に俺のハートがずぎょん。





分かっている。


大丈夫。俺にだってちゃんと分かっている。





だがしかし。


駄菓子菓子。


写真は好きかい?たかはしたかし。





オレが欲しいのはしょーちゃんって。


オレが欲しいのはしょーちゃんって‼︎





っっっっって‼︎





写真のことだと分かっているが‼︎


だがしかあああああし‼︎





「コーヒー持ってきたで〜。あ、何や、葉っぱ落ちとるな」
「………あ」





葉っぱ。





今度は丸山さんの言葉で、急上昇したテンションが一気に下降した。


引きずり落とされた。現実に。





丸山さんは持ってきてくれたコーヒーをテーブルに置いて、葉っぱを拾った。


それを裏表と眺めて、あんなあって。





「ふたりが来ると、こういう葉っぱがよう落ちとんねん」
「葉っぱが?そうなの?」
「そうやで。多分やけど、この子もまーくんとこの子やろ」
「多分?」
「おれなあ、拾うたんびに思うんや。まーくんとこの子たちはきっと、こうしてくっついて出かけたいぐらい、ふたりのこと好きなんやろなーって」
「………え」
「えー、何それまるちゃん。メルヘンちっくー。大丈夫?頭でも打った?」
「頭でも打ったって、まーくんそれはひどない?けど、そう思ったらこの葉っぱも益々かわいいなあって思えるやん」
「別に思わないよ。葉っぱは葉っぱでしょ」
「そんなこと言うたるなって。ショックでこの子枯れてまうで」
「え、何、まるちゃんの中ではその葉っぱは話を聞いて理解してるの?」
「せやで。ちゃんと聞いとんねん。理解もしとんねん。この葉っぱの元の木もやで。ちゃんと聞いとんねん」
「木も?えー、それだと盗聴器じゃない?その葉っぱって」
「盗聴器⁉︎盗聴器ちゃうやろ。盗聴器はあかん。盗聴器やなんて、ロマンないやん。せめて分身とか言うてや」
「ロマン?まるちゃん、ロマンって何?それおいしいの?」
「いや、ロマンはお菓子ちゃうで、まーくん」





平和、だと思う。


普通に聞いたら。


普通に、聞いていたら。





いい人代表みたいな丸山さんが、ニッコニコ笑ってメルヘンなことを言っていて、それにお天使な雅紀がつっこんで。ボケて。





この上なく平和な、会話。





なのに。俺は。





葉っぱが、雅紀と俺がここに来るとよく落ちている。


葉っぱは一緒に出かけたい。


葉っぱは話を聞いている。





盗聴器。





丸山さんが言っていることは、全て丸山さんの想像に過ぎない。


なのに。





どくどくと、痛いぐらいに心臓が、俺の中で暴れまくっていた。










命名ぴーちく‼︎って思った方は米ください🌾

平和な会話が平和じゃない‼︎って方も米ください🌾



『それ森』みたー。

つっこみどころが色々(笑)