花 172 | 舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

腐女子向けのお話ブログです。

パープル薬局を出てから、引き続き雅紀の運転でまるやまパンに行った。





車はオートマになったが、男ふたりで乗るにはかわいらし過ぎるが、やはり車を運転する雅紀はかっこいいと、乗るたびに思うのである。





そんな運転雅紀にときめきときめきしている間に、何回か雅紀のスマホがメッセージの受信を告げていたのが聞こえた。





さっきの今なら、風磨か?





もし風磨だとしたら、俺の写真………か。





それ以外を送ったら即ブロックすると、雅紀はきっぱり宣言しているのだから、さすがに陽キャ爆発の風磨でもそれ以外は送らないだろう。





っていうか、俺の写真て。





昔から風磨は自分の同級生である俺の弟より、俺の方についてまわっていた。


翔くん翔くんって、それはそれはもう金魚のう◯こなみに。


そして翔くんかっけぇって、いっつもキラキラした目をして言うから、ついいい気になって写真を撮るのも許していたけど、まさかまだあるとか。


スマホ何回もかえてるだろ。なのにまだあるとか何。


そしてそれをまさか雅紀に送るとか。





とか言いつつ、他でもない雅紀にカッコいいとか、写真欲しいとか言われるのは正直嬉しい。めちゃくちゃ嬉しい。


もらってどうするんだ?とは思うがそれよりも嬉しいの方が大きい。


ああ、そうさ。


嬉しさで顔がどぅるんどぅるんさ。





もらってどうするんだろうと、疑問ではあるけれども。


俺の写真なんて。昔の写真なんてもらって。





もうすぐまるやまパンだってところの交差点。


赤信号で停車。





雅紀がスマホを確認して、くふふふって、笑った。










「お、いらっしゃい、まーくん。いらっしゃい、翔くん」





まるやまパンの店内に入ると、空腹に染み渡るパンのいいにおいと、すっかり『翔くん』なんて呼んでくれるようになった店長さん、オレンジエプロンの丸山さんの満面のスマイルに迎えられた。





オレンジ色はもはや俺の恐怖色なのに、ここで丸山さんのオレンジ色のエプロンを見ても、恐怖はわかないから不思議なものだ。


逆に似合ってるなあとか思う。


丸山さんにおひさま色。





これ以上ない組み合わせだ。





「こんにちは」
「まるちゃん、お腹すいたー」
「お腹すいた?何や、お昼まだなん?今日はえらい遅いんやな。仕事忙しかったん?」
「うん、ちょっとね」
「そうかぁ。まーくんたちも大変や。あとちょっとでクリームパン焼き上がるで、焼きたて持ってったるな」
「うん。ありがと、まるちゃん」





ああ。





いい。





最高だよ。この脱力感。


さっきのぎゃいぎゃい(主に風磨が)賑やかな薬局とは大違いである。





あ、一応言っておくと、普段のパープル薬局は当たり前だがあんな風にうるさくない。


今日はたまたま他に患者さんがいなくて、風磨が仕事モードをオフっていたからのアレだっただけで。





とはいえ、風磨が無駄にうるさかったのは事実で、そこからのここだとここの空気がいつも以上にのんびりのほほん、脱力系。とてつもなく平和に感じられる。





癒しだよ、癒し。


マイナスイオンが漂っている。


そしてこのマイナスイオンのでどころは、絶対的に丸山さんのスマイルだよ。





にこにこにこにこにこにこにこにこ。





絵に描いたようないい人。いい人代表みたいな丸山さんと、絵に描いたようなヤンキー。強面代表みたいな横山さん。





何故このふたりが友だちなのか。





俺には永遠の謎かもしれない。





昼を大きく過ぎて、すいている店内。


丸山さんは、リズムをとるように、手にしたトングをカチカチ鳴らしながら、ふんふふーんって鼻歌を歌いつつ、いつものように俺と雅紀のトレイにこれでもかってぐらい、どんどんパンを乗せてくれた。これお代はいらんからなって。





「お腹すいとるんなら、ようけ食べんと。空きっ腹じゃ元気も出ぇへん」
「わーい。まるちゃん、ありがと〜」
「すみません。いつもありがとうございます」
「まーくん、ケツバットカレーパンも要るか?」
「まるちゃんが食べるなら食べてもいいけど」
「おれは食べませーん」
「じゃあオレも食べませーん」
「ほんなら、翔くん食べるか?」
「………え?あー、ありがとうございます。でもケツだけに俺も結(ケツ)構です」
「お、うまいっ」
「え、寒い」
「寒くないやろ。座布団1枚や」
「えー、超寒いって。まるちゃん甘過ぎ」
「そうかー?」
「そうだよ」





ああ。





平和だ。


めちゃくちゃ平和だ。落ち着く。





パンのいいにおいに、静かなメロディーが流れる、ぬくもりを感じる店内。


いい人代表の丸山さんによる丸山スマイルに、さっきまでの威嚇シャーシャー猫雅紀ではなくお天使雅紀。





平和だ。


この上なく平和だ。





コーヒー持ってったるなーって丸山さんに言われ、店内奥のイートインコーナーにトレイを置いて、ガタガタと座った。


さあ食べるぞって、長袖の袖を捲った。





その時である。





視界の端に何かがはらりとうつり、何か落としたかと目で追ったそこに。





「………っ」





どきん





と。





ぞくり





オレンジの葉っぱが、そこに、床に。





………落ちていた。










まるやまパンのパン食べたいって方は米ください🌾

葉っぱあああああ‼︎って方も米ください🌾





ジェットコースターの落ちる瞬間的な落差の感じに書きたいんだけど、むずいわぁ。