Your Eyes 20 | 舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

舞う葉と桜〜櫻葉・嵐綴り〜

腐女子向けのお話ブログです。

A side



ヒマすぎてつらくなってきた。





って、何かの台詞であった気がする。


働いたら負けぐらいのパンチが……


しょーちゃんの声が、蘇る。


ああ、いつかのライブだ。


病院、いつまで居ればいいんだろう。


過換気なんとかと、失声症?


よく分からないけど、そんな名前を聞かされて、身体は元気なのに、表向きは肺気胸ってことになってるって。


はあ。


溜め息が、出た。


相変わらず。
相変わらず、手が真っ黒に見えて。


オレはどっちかと言うとその方が気持ち悪くて。


目の前に手を翳して。


やっぱり黒いことを確認する。


本当に黒くなっているのではなく、そう見えているだけですって言われて。


安心はしたけど。


気持ち悪いのに、変わりはない。





コンコンとノックされて振り返ると、担当の看護士さんが入ってきた。


「本当はダメって言われてるんですけどね」


ニコッと笑われて。
首を傾げる。


「大丈夫ですよ、どうぞ」


看護士さんに言われて、入ってきたのは。


松潤だった。


「よ」


久し振りの顔に、嬉しくなった。





「元気?」


コクコク。


「まだ、声出ない?」


コクコク。


「過呼吸は」


ふるふる。


声が出ないから、首を振って答えると。


「まー、何か人形みたいで笑える」


松潤がくっくっくなんて笑うから、ほっぺたを膨らませて睨んでみせると、余計に笑われて、オレも笑った。





「翔さん、元気ないよ」


ぽつりと、そう言った。


心配そうに、オレを見ながら。


しょーちゃん。


名前を聞いただけで、ドキドキする。


あれから、会ってない、けど。
大丈夫だったのかな。


お父さんと仲直り、きっと、できてないよね。


あの日オレがしょーちゃんちに行かなかったら、あんなことは起こらなかった。


しょーちゃんのお父さんは、悪くない。


言われたことは悲しかったけど、でも、仕方ないって、思う。


お父さんなら、しょーちゃんが大事なら、当たり前に言う言葉だって。


分かってる。


分かってるくせに、何でオレは。


ああ、もう。
何か自分で自分がイヤになってくる。


オレってこんなキャラだっけ?
うじうじだらだら悩んで、ストレスで病気って。


はあ。


また、溜め息が出る。


「どうすんの?」


松潤が聞く。
何のことか分からなくて、首を傾げる。


「翔さんと」


強い視線で、オレを見る。


「別れる?」


どきんどきんって、心臓がうるさくなって。


苦しくなってくる。


別れる?


許されない、とは思っている。
好きでいちゃいけないのかな、とも、思っている。
もうダメかな、とか、いつかは、とか。


けど。
けど。


別れる?
しょーちゃん、と?





苦しい。





「俺がまーを貰ってやろうか?」


すぅっと、その目を、細めて。


「まわりのことなんか考えるヒマもないぐらい、愛してやるけど?」


苦しい。
息が、苦しい。


何で。


オレ、何でこんなことになってるんだろ。


過呼吸とか失声症とか。


何で。
松潤に、こんなことまで、言わせて。


松潤の手が、オレの顎にかかる。


角度をつけて、迫ってくる、顔。


しょーちゃんじゃない。
この人は、しょーちゃんじゃ、ない。


苦しい。


もう、イヤだよ。
涙が出てくる。


「こんな病気になるヒマもないぐらい、さ」


優しく囁かれる言葉。


でも。
違う。


………違う。


しょーちゃんじゃ、なくちゃ。


触れるのは。
キスをするのは。
抱き締めるのは。


しょーちゃんじゃなくちゃ。


どんなに考えても考えても。
ボロボロに傷ついても。
傷つけられても。


「や、だ!!」
「まー?」
「しょーちゃんじゃなきゃ、イヤだ!!」


ドンっと、思いっきり松潤を、突き飛ばした。


「しゃべれんじゃん」


ふふんって。
松潤がすごいドヤ顔をして。


「まーくん!!」


どこからか出てきたニノが、ガシッ抱きついて来て。


「かず!?」


声が、出てて。


「っとに、うだうだ考えてんじゃねーよ、まーも翔さんも」
「松潤……」
「世話が焼ける人たちだわ」


ちょっと面倒くさそうに、でも、笑って、松潤は溜め息をついた。