A side
「考えたってぐるぐる回って、出口なんて見えなくなる。だったら考えるスキを与えなければいいんじゃないってさ」
「ま、ショック療法じゃないけど、ああやって迫られたらまーくんも何かしらの答えが出るかなって」
「まーは色々考えて自家中毒起こす割には、単純だからさ」
「そうそう」
何か。
微妙にヒドイことを言われているような気がするんだけど………。
ん?って考え込んだら、まあまあって、肩を叩かれた。
「喋れる?」
「ゆっくり、なら、いけそう」
「いいよ、ゆっくりで」
優しい笑みで言われて、コクコクと頷いた。
まだ、何かが。
喉の奥に引っ掛かっているような、そういう違和感は拭えない。
それでも。
「まーくん」
「ん?」
「何か喋って。撮って翔さんに送ろうよ」
「え?」
「おー、いいじゃんいいじゃん」
「恥ずかしい、よ」
「しょーちゃん大好き、とか」
「や、だ」
「心配、してるから、本当にさ」
それは、分かる。
分かる、けど。
「せめて名前ぐらい呼んでやったら?あの人アナタにしょーちゃんって呼ばれるの、絶対好きだよ」
「ああー、それ、分かる気がするわ」
「ほら、まーくん!!よーい、スタート!!」
え?え?
本当にやるの?
ピコンって、動画撮影スタートの音がして、思わずキョドる。
「えと、しょーちゃん」
何て、言えばいいんだろ。
しょーちゃん。
痛かったね。
辛かったね。
ごめんね、また、心配かけちゃって。
「しょーちゃん」
別れる?って聞かれて。
初めて気づいたよ。
何をどう考えたって。
もう、離れたくない。
それが、答えだって。
「しょーちゃん」
二人が、しょーちゃんしか言わないオレを、笑い始めた。
「しょーちゃん」
その声に、オレも笑えてきて。
「しょーちゃん、大好き、だーー!!」
大きな笑い声が、病室に響き渡った。