映画/『雷撃隊出動』 | みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道



1944年12月7日公開
東宝
監督:山本嘉次郎
出演:藤田進、森雅之、河野秋武、灰田勝彦、三島雅夫、大河内傳次郎

南洋の航空基地を舞台に、雷撃機隊の活躍を描く。
脚本は山本嘉次郎。

雷撃機というのは魚雷攻撃用の飛行機のこと。
海面を低空で飛びながら敵艦に接近し、適当な距離で魚雷を海面に落とすと魚雷は海中を進んで敵艦に命中するというわけです。

で、あらすじに書いといてなんですがこの映画、なかなか雷撃機が活躍しません。

なぜか。

飛行機がないから。

や、全然ないわけではありませんが、やはりそれなりに数がが揃わないと、作戦もたてられないというわけです。

物語は藤田進、森雅之、河野秋武の航空兵学校同期が、南洋のとある基地に集まるところから始まります。



しかし、基地には飛行機が足りない。
乗る飛行機がなくて訓練もできず、イライラしているパイロットもいます。
その間にもアメリカ軍の基地空襲があり、その度に飛行機が減っていき、森雅之が本土まで交渉に行ったりしますが、やっぱり補充の飛行機は来ません。
飛行機マニアとしては森雅之の帰京シーンで登場する97式大艇の怪鳥のような巨大な姿がみものです。

しかし、ついに内地かから補充の飛行機が大量にやってきます。
ここまでが1時間…汗

そして満を持しての出動。
当時最新鋭機だった天山艦上攻撃機の実機が母艦(たぶん瑞鶴)から次々に飛び立つシーンは圧巻です。


円谷特撮の見せ場は、クライマックスの夜戦シーンで、今更ながらその完成度の高さに驚きます。




映画のトーンは暗いもので、「アメリカが物量で来るなら、こっちはひとりで10人殺せばいいんだ」とかもう末期です。
また、米軍機が病院をしつこく機銃掃射したり、露骨な「鬼畜米英」的描写がヒステリック。
プロパガンダ映画なので、こういうシーンがあるのはむしろ当然とはいえますが、これは例えば「ハワイ・マレー沖海戦」や「加藤隼戦闘隊隊」には見られなかったことであり、あのモダンな山本嘉次郎監督ですら…と思うと悲痛な感じを受けます。

この年7月、サイパン島玉砕。
ここを基地としてB-29による本土空襲が本格的に始まります。