映画/『激動の昭和史 軍閥』 | みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道




1970年8月11日公開
東宝
監督:堀川弘通
出演:小林桂樹、三船敏郎、加山雄三、山村聡、神山繁、中村又五郎

日中戦争から終戦までを戦時内閣を率いた東条英樹(小林桂樹)を中心に描く群像劇。
脚本、笠原良三。

作品は226事件を嚆矢に、支那事変から原爆投下までのいわゆる「15年戦争」を130分の駆け足で総覧するパノラミックな群像劇で、一応中心となる人物に東条英機を据えてはいるが、ダイジェスト的な印象は免れない。
人間東条や彼を含めた「軍閥」の面々の描き方は浅く、従って戦争遂行にどのような役割を果たしたかも図式的にに終わっているのは残念。

ただし、その中でも小林桂樹の熱演は印象に残る。
強硬な対米開戦論者であった陸軍大臣時代。
その一方で天皇への強い忠誠心を持ち続け、首相拝命時に天皇から「対米開戦はなんとしても避けるように」と言われ、それに沿うよう腐心する姿。


開戦と同時に勝ち続ける戦争にすっかり陶酔して、早期講和の意見に耳を貸さなくなる変わり身ぶり。
戦局が悪化するにつれ、焦燥感から次第に独善的になり、猜疑心を強めていく政権末期。
特に末期のファナティックな熱演ぶりは迫力がある。

これと対になる存在として毎日新新聞政治部記者の新井(加山雄三)が描かれる。



新井を中心とする毎日新聞の動きは、軍閥と並ぶ「もう一つの戦争指導者たち」なのだが、これまた歯切れが悪い。
新井は開戦当初、勝ち続ける日本軍に興奮しているが、前線での取材で戦争の真実を知る。
そこで大本営発表がウソだとわかって…というのがウソですな。
いくら時勢とはいえ、こんなピュアな人に新聞記者がつとまるわけがない。
新井は「飛行機に竹槍では勝てない」ともっともな事を書いて東条に睨まれて徴兵される(これは事実)。
政治部で唯一戦争に疑問を抱いていた高倉を演じる岸田森が光る。

戦局はいよいよ悪化、天皇は首相経験者をよんで戦争終結への方策をきくが、東条は本土決戦を主張する。

前線で、本土で、死屍累々の日本人の死骸の山。
目を背けたくなるような実際の映像に、東条が天皇に切々と語る「輝かしい日本民族の未来」が流れる。


そしてそれをぶったぎるように炸裂する原子爆弾。
このラストは優れていると思う。

昭和天皇を演じた中村又五郎の素晴らしさを追記しておく。