映画/『さらばラバウル』 | みやのすけの映画倉庫/『ゴジラVSコング』への道



1954年2月20日公開
東宝
監督:本多猪四郎
出演:池部良、三国連太郎、岡田茉莉子、中北千枝子、根岸明美、平田昭彦、村上冬樹

1944年、敗色濃厚な中、戦い続けるラバウル航空隊を描く。
脚本、木村武、橋本忍、西島大。

ラバウルというのはパプアニューギニア領ニューブリテン島の港湾都市。
日本軍が1942年に占領、ここを本拠地としたラバウル航空隊は精強をもって名高く、連合国軍に恐れられていました。

しかし、日本軍は獲得した南洋島嶼部の戦いでズルズルと敗北を重ね、アメリカ軍に制空権・制海権を奪われます。

ラバウル航空隊も大戦末期となると熟練パイロットの相次ぐ戦死、米軍の新型機の投入による主力機ゼロ戦の陳腐化と補給の停滞により、疲弊してきます。

毎晩のように酒場(慰安所ですね)で日本軍将兵によって繰り広げられるヤケッパチみたいな乱痴気騒ぎ。
現地人の踊り子(根岸明美)の扇情的なダンスもあり、酒場は切迫した異様な熱気が渦巻いています。

隊を率いるのは冷徹な鬼隊長若林大尉(池部良)。
戦闘機乗りとして10年のキャリアを持ち、ひたすらストイックに任務に取り組むキャラクターがいかにも池部良にピッタリ。
若林が入ってくると、酒場の空気がサーッと変わるあたり、ちょっとアメリカ映画みたいな雰囲気で悪くないです。

物語は、若林とその戦友片瀬大尉(三国連太郎)の友情、現地の踊り子キム(根岸明美)と野口中尉(平田昭彦)の悲恋、若林に反発しつつ次第に惹かれるようになる看護婦小松スミ子(岡田茉莉子)といった具合でなかなかにバタ臭いです。


中でもデビュー三年目の岡田茉莉子の可憐さ、美しさは強烈ですね!

しかし、作品の魅力は全編に漂う「ホンモノらしさ」
出演者もスタッフも殆どが戦場を経験しており、例えば敬礼の所作一つとってもまるで違います。
こういうのはせいぜい1950年代の映画まででしょうか。

それから、撃墜されて捕虜になった敵のエースパイイロットに「ゼロ戦には落下傘も防弾装備もない。人命を軽視する軍隊は戦争に勝てない」と語らせるなど、1954年の時点でいわゆる「ゼロ戦神話」が明確に否定されているのに驚きました。

慰安所のマダム(中北千枝子)の部屋に死んだパイロットたちの写真が飾ってあったり(フィリップ・カウフマン監督の「ライトスタッフ」にも似たような設定がありましたね)、ディテールが印象に残る佳作です。

映画史的には、製作田中友幸、監督本多猪四郎、特技円谷英二がこの作品で初めて顔を揃えるのが重要で、いよいよあの「ゴジラ」へ向けて企画が動き出すことになります。


本多猪四郎と岡田茉莉子。珍しい2ショット。