世の中には知らないことがたくさんあります
また、知らなくったっていいこともたくさんあるのかもしれません
だから知らないことは恥ずかしいことでもなんでもありません
恥ずかしいのは、
知らないことではなく
その知らないことに対処することになった時の
ものの聞き方、ものの言い方だと思うのです
私も神職になる前は神社に関することは
ほとんど何も知りませんでした
けれども知らないことは謙虚に教えを乞いました
そして、今、お訊ねいただく立場になっても
何も知らなかった身を振り返り
可能な限りわかりやすくご説明させていただくことを心掛けているつもりです
「何も知らなくて、
失礼なことをお聞きしてるのかもしれませんが…」
「家を建てることになったのですが
地鎮祭って何をどうお願いすればいいのでしょうか・・・」
「費用って、言っていいのかどうかわかりませんが、
おいくらぐらいでやっていただけるのでしょうか…」
と、例えばこんな質問の仕方をされますと
ぶっちゃけ、飾らず、微に入り細にわたり、
ご納得頂けるよう、出来る限り懇切丁寧にご説明させていただきます
地鎮祭等の建築関係の祭式は
大概の場合、建設業者様からのご連絡で
打ち合わせをいたしますので
施主様と事前にお話しする機会はほとんどありません
ところが、たまに、施主様から直接お問い合わせをいただくことがあります
家を建てるなんて殆どの方にとって一生に一度の
人生で最大の買い物ですから一大イベントですし、
そのしきたりについて、ご存じないのは当たり前です
ところが、全く何も事前に調べようともせず、
興味がないのか関心がないのかわかりませんが
建設業者さんに、地鎮祭って言葉だけ聞いて
電話をかけてこられたのでないかと疑いたくなる電話がありました
ものの言い方って、滅茶苦茶大事だなって
改めてそう思いました
「地鎮祭の道具売ってるって聞いたんですけど・・・?」
「は? はぁ?」
道具? 売ってる?
道具なんか販売してません!!!
御守り売ってますか?とか
お神札(ふだ)売ってますか、なら
まだ何とか答えようもありますが
(御守りを「売る」とは言わないのですが)
地鎮祭の道具はさすがに、売ってはいません
「地鎮祭の道具って、いろいろありますけど
たとえば、お供え物を載せる台とか、
それを置く台とか、玉串用の榊の枝とか
神鏡、勾玉、剣、砂、鎌・鋤・鍬とか
色々と必要ですけどこれらの道具は販売は致しておりません」
申し訳ないですけど、道具をお求めでしたら
神具店などの小売業者さんにお問い合わせいただけますでしょうか」
神社は、小売業者ではありません
勿論、建設業でも、製造業でも有りません
お守りやお神札は、販売商品ではなく
信仰に伴う頒布品であり
代金ではなく、初穂料であり、売上とは言いません
電話を切ってから、しばらくして
ハタっと気付きましたが
もしかしてこの人は、
地鎮祭の鎮物(しずめもの)だけが欲しかったのでは・・・?
鎮物のしの字も出てきませんでしたが・・・
地鎮祭を斎行しないで鎮物だけを買う?
事情・状況によっては、建設地の住所・施主様のお名前をお聞きして
社頭で建築工事の無事を御祈祷して、その印の撤下として
鎮物をお渡しすることも有り得ないことではないですが
それにしても、いくらなんでも
「地鎮祭の道具売って・・・」って、
それはないでしょ