「シリーズ 三輪記子物語」、受験生回もいよいよラストスパートです。背水の陣で挑んだ司法試験をパス。しかし、すぐに弁護士になることができるわけではありません。裁判所・法律事務所の司法修習生活を通して、先生が学んだこととは?

 

 * 

 

ロースクールを修了し、2009年、ようやく司法試験に合格しました。旧試験も入れると、8回目の挑戦でした。

 

 新司法試験は受験回数に制限があり、私が受験した当時、受験チャンスは卒業後5年間で計3回。制度上あと2回は受験が可能でしたが、自分としては「これで無理だったらもう司法試験から撤退しよう」という覚悟で挑んでいました。

 

 最後の試験でしたが、手応えは感じませんでした。通常、司法試験は5月に4日間かけて行われます。最初の3日間が論文試験、最終日が短答試験という流れです。論文にも短答にもそれぞれつまずきがあって、試験が終わった直後から「あそこがダメ、あそこもダメ」「もう落ちた」という想像ばかりが頭に浮かんでくる状態でした。

 長い受験勉強から解放されたからといって、旅行に出たくても、そんなお金はありません。燃え尽きていましたが、9月の合格発表まではフランス語をかじって勉強する毎日でした。

 

 発表は、怖くて見に行けませんでした。弟に代わりに足を運んでもらい、その間自分はフットマッサージを受けていました。電話口で「受かってたよ」と言われた時は、涙こそ出ませんでしたが、ほっとしましたね。弁護士になると決意してから、実に10年越しの合格通知でした。

 

 司法試験に合格したからといって、それで終わりではなく、秋からは司法修習が始まります。1年間、法律事務所、裁判所、検察庁等で学び、最後に実施される二回試験をクリアして、はじめて弁護士として登録できるんです。

 

 裁判所修習では、地方裁判所の民事部・刑事部に数人ずつ配属され、民事裁判や刑事裁判の記録を読んで、弁論準備手続や弁論傍聴を行い、判決を書くという練習をします。試験も定期的にあるんですけど、またすぐにサボってしまって、真面目さには欠けていました。

 

 思い出深いのは、法律事務所での修習。実際の弁護士について、仕事の仕方を学びました。

 弁護士修習では女性の先生のところに6週間、男性の先生のところに2週間配属されました。男性の先生は、たとえ法律上は請求が難しいことに対しても、依頼者の気持ちを汲んでできる限りのことをされていました。女性の先生も法的な解決だけに限らず、依頼者へのカウンセリングを勧めていたりと、総合的なサポートを大切にされる方でした。

 

 人の心って、法律だけでは裁けません。当事者が望む解決と法的な解決は、必ずしも一致していないんです。当事者がどこにこだわりを持っているのかをよく見て、その部分を置き去りにしないことが、実務上すごく大切になってきます。依頼者の相談を法律だけで解決しようとしない先生たちに出会ったことは、弁護士人生の糧になりました。

 

 司法修習を修了すると、法曹三者(判事・検事・弁護士)のいずれかを選択することになります。私は、修習開始当時は弁護士以外は考えなかったです。 大学入学時点で外交官の夢を断念していたので、国家公務員はもういいかなという心境でした(しかし、裁判官は素晴らしい仕事だな、と後から思いました)。

 

 2010年12月に弁護士登録を行い、晴れて法律家としての一歩を踏み出しました。世に認知されるようになった『週刊プレイボーイ』のグラビアに登場するのは、もう少し後(2013年1月)のことです。(続く)

 

 【取材・構成=松岡瑛理

 

 ▼バックナンバー

第一話:「女子に進学先がないことに理不尽さを感じていた」(中高時代)

 

第二話:「林監督の言葉がなければ『今頃アル中で死んでる』」(大学時代)

 

第三話:「机に座っても、文字が読めない」(司法試験受験生時代その①)

 

第四話:「目には見えないものを扱う法の面白さ」(司法試験受験生時代その②)

 

*****
弁護士の三輪記子(ミワフサコ)です。
2010年12月の弁護士登録以降2017年秋までは京都で執務していましたが、

2017年秋に同期の塩見直子弁護士と『東京ファミリア法律事務所』を開設しました。
東京ファミリア法律事務所は女性弁護士2名の法律事務所です。
表参道駅A2出口から徒歩7分くらいの閑静な住宅街にあります。
離婚、不倫、遺産分割、契約書チェック等々
お困りのことがございましたらお問い合わせください。
秘密は厳守いたします。
ご予約いただきましたら早朝、深夜、土日祝日の法律相談も承ります。
お問い合わせはHPかお電話(平日9~18時)からお願いします。
なお、法律相談は30分ごとに5500円です。
案件ごとの料金につきましてはご相談時にご説明いたします。
HPはコチラ
電話 :03-5413-8310