介護業界は言葉遣いに関してかなりユルい気がする。

介護サービスを受ける御利用者は顧客である。例え認知症をお持ちの方であっても、寝たきりの方であってもそれは変わらない。

職業柄、他の法人の施設にお邪魔する機会が多いのだが、施設全員の職員が御利用者に対して敬語で話しかけている施設はお目にかかったことがない。

言葉遣いは接客の基本中の基本であるのに。

以前私が勤務する職場内でも言葉遣いを直していこうと、会議の場で議題に挙がったことがあった。私がまだ新人に近かった頃であったと思う。
その際に先輩職員(現在は退職していない)がこんなことを言っていたのを覚えている。

「いつまでも敬語で話をしていたら御利用者もかしこまっちゃって信頼関係が作れないよ」と。

経験も知識も全くと言っていいほど無かった私は「なるほどそういうものなのか」と思った。

しかし、それから十数年経った今…

それは完全に間違った考え方であると確信している。

先にも述べたように、御利用者は顧客である。そして私たちの倍以上の年齢を重ねてきた年上の方々だ。

その方々にため口で話しかける姿は、サービスマナーに欠けるレベルの低い職員にしか見えない。

今、先輩職員が言った言葉を同じように言われたら迷わずこう言える。

「ため口で話すことが信頼関係を築くことにはならない。信頼関係は、毎日毎日おもてなしの心をもって誠心誠意関わることでしか築かれない。敬語を遣いこなせていないことを対人援助職として恥ずべきだ」と。

それと、思い返してほしい。

認知症の方々が多い特養で勤務をしている職員なら誰もが言われたことがあるだろう。

「あんた誰だい??」と。

それが例え毎日顔を合わせている方であっても。

職員は毎日関わるから親しみも湧くだろう。しかし、認知症の方からしたら初対面である場合もあるのだ。

顔も知らない若造から、いきなりため口で話しかけられる身になっていただきたい。

人によっては怒りを覚える方もいると思う。

自己紹介を毎日したって良いじゃないか。丁寧な言葉遣いと笑顔で「今日お手伝いをさせていただきます○○です。宜しくお願いしますね。」と。

もしかしたら何十回、何百回かの自己紹介の後に「あんたどっかで見た顔だね」と言っていただけるかもしれない。信頼関係の構築が一歩進むかもしれない。

そうやってゆっくり一緒に歩んでいくのが大事なのだ。