時間あるうちに!『光と影』ーわたしと本と映画と | 木村美月ブログ『美月の冒険』
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『光と影』


昨日書いた、ソフィーの選択という映画は、ある選択を迫られてしまった女の人の話。この選択の内容を言っちゃうと一発で観たくなるーΣ(・□・;)という映画なのだけれど、それはどうしても言いたくない部分なので伏せちゃった。あーん、言いたい。
観た人だけ知ることができるってことです。

そんで、今回は、きわめて無防備に選択「されてしまった」人たちのお話。

直木賞。『光と影』
渡辺淳一氏は『失楽園』などで有名なので、こう、エロいこと書いてるなーというイメージもあるかもしれませんね。
この作品は違います。

実話が元になっているらしい。

とある2人の男がいます。
日本最後の内戦である西南戦争に大尉として繰り出した、同期の2人でした。
戦時中、ほとんど同じタイミングで、同じ武器で全く同じ箇所を負傷した2人。そして同時に手術を受けることになります。

運命だなあ、といったようにガハハと笑い合います。

そして手術当日。

先に受けたのは、小武大尉。次に受けたのは、寺内大尉。順序に意味はなく、小武大尉のカルテがたまたま上に置いてあったのです。そして全く同じ医者です。

当時、腕を激しく負傷した場合は、切断の手術を受けることになっていました。
当然2人も切断の手術を受けるものだと思っていました。しかし、、、

実験的に、寺内大尉の腕のみ、まだ日本に浸透していなかった砕かれた骨を取り除く西洋式の手術が行われたのです。
つまり、寺内大尉の腕は残ったのです。
これは完全に医者の気まぐれでした。

腕切りすぎたなあ、やだなあ、なんて描写があります。

そしてこのことから、2人の運命は真っ二つに切り離されてしまうのです。

腕の残らなかった小武大尉の悲惨なこと悲惨なこと。


わたし、読んでる間は夢中だったんですけど、読み終わって、10分ほどした後かな?
ドバッと、涙が溢れ出したのです。

自分の周囲の人たちの運命について、急に、思いを馳せてしまったからです。
もしあのときああしていれば、ああだったら、こうだったら、普段は考えない、もう取り返しのつかない何かについて、溢れ出してしまった、、、。


取り返しのつかないことについて、長いこと考えている健康的な大人はあまりいないと思います。
だってそんなこと考えはじめたらきりないもの。

いつだって、どうにか忘れようと、考えないようにとフタをする機会は多い気がするの。
ときにプラス思考を武器に、前向きを武器に、わたしたちは処理します。


けれど、こんなにもどうにもなさを突き付けられる物語に出会って、たまには、後悔や悲しみに涙を流してみるのもなんだかスッキリ。
こうやって泣けるということは、また、人間らしいんじゃないかな、と思っちゃった!



この間寝起きでささかま食べた時の写真。