1990年6月3日、この日はやたらバタバタしてた。
昼過ぎに突然、バンドメンバーのリョウ君がやってきて
「今からギター買いに行くか~」
少し前に、
「そのうちギター買いに行こうかと思ってる」
僕がそんな話をしてたもんだから、この日急にギターを買いに行く事になった。
あの頃はまだ車も持っていなかったから確か電車に乗って楽器屋まで行った。
それでちょっと安めのアコースティックギターを買って
またまた電車で帰ってると、バンドマンみたいな人に声をかけられた。
「よかったら一緒に音楽やりませんか」
みたいなノリで。
でも、その人明らかにフォーク畑の人だったので丁重にお断りした。
実はこれからリョウ君と「機械と生音」をミックスした音楽やっていこうって話をしてたところだったから。
この日珍しくリョウ君は早く帰った。
いつもはこれから夜中まで音楽談義とかするんだけど、
何故だかわからないけど彼は夜の7時過ぎに帰ったので
僕も隣の部屋のシンちゃんに声をかけてのんびり夕食をすませた。
その後、いつもならシンちゃんの部屋でダラダラ過ごすんだけど、
今日はギターって「おもちゃ」があるから
煙草をくわえたままボロロンボロロンとギターを掻き鳴らしていた。
夜の8時過ぎだったかな、
僕の部屋はこの頃テレビの映りがメチャメチャ悪かったので、
仕方なく唯一まともに映っていたTBSの「神々のいたずら」と言う限りなく面白くない番組を流していた。
まだ部屋にビデオもなかった頃なので、その時観れる番組しか観る事が出来なかったのだ。
すると遠くの方から足音が聞こえて、僕の部屋で止まってドンドンってノックするもんだから
「あ、リョウ君、忘れ物でもしてまた帰ってきたな」
そう思いながら
「ウィ~ス」
気の抜けた返事をしてドアの方を見たら目の前に立っていたのはヒロだった。
僕はかなりダラけた姿勢で煙草くわえてギター弾いてたもんだから、
その姿を見たヒロは大笑いしていた。
「すごい体勢でギター弾くんやね」
いや、別に好きでこの体勢で弾いてるんではないんだけど。
「今日はね、この子も一緒なんよ」
ヒロの後ろにいたのはメグミだった。
「あ、知っとる、知っとる、だって前会った事あるのに、え~っと、名前は・・・」
「知ってる?」
「メ、グ・・・ミ、さんよね」
「わあ、覚えててくれてたんだぁ」
久しぶりに会ったもんだからなかなか思い出せなかったけど、それは紛れもなくメグミだった。
何か初めて会った時よりも可愛くなってるような気がしたけど、
そんな事は、とても口に出して言えなかった。
(お借りしました、ありがとうございます)
久方ぶりに見たメグミのその姿は「女神」だった。
平静を装っていたものの、
珍しく、僕は胸の鼓動を押さえる事が出来なかった。
その音がヒロとメグミに聞こえるんじゃないかと思って
僕は少しテレビのボリュームを上げた。
(お借りしました、ありがとうございます)
そして偶然なのか決められていたのか・・・
この日はメグミの20歳の誕生日だった。