１９７０年代の事件
◎向き不向き！
向き不向きとは、
その人に向いていること、向いていないこと。
誰でも何でもできる訳ではありません。
頭が良い人でも、運動ができなかったり、
歌がうまくても、料理ができなかったり、
良いこともあれば、悪いこともある。
それが人間です。
あんなに強いルフィが、海の中では溺れるように
あんなに強い孫悟空が、お人好しなように、
全てに完璧な人はいない。
完璧に見えるドラえもんでさえ、ネズミが苦手。
つまり…
人には向き不向きがあるのだ。
まあルフィはさておき、孫悟空やドラえもんは
人じゃないだろ！
というツッコミはやめて、
誰でも得意不得意があり、
苦手なものがあるというのは誰しも納得する。
しかし…それは…
恥じることではない。
苦手なものは誰にでもあり、
それ故にそれを克服することが必要なのだ。
苦手を苦手のままにしておかず、
苦手でも向き合い、克服する。
恥ずべきは弱い者ではない。
弱いままの者だ。
漫画ブラッククローバーで
紅蓮の師子王団長 フエゴレオンの言葉だ。
つまり弱いのは仕方がないが、
それを克服しないのは恥ずかしいことだ。
そう言っている。
我々も弱点を克服してきたはずだ。
ピーマンに始まり、
ニンジン、タマネギ、セロリ、そしてニンニク
こういうものを克服してきたはずだ。
誰でも克服できるのだ。
しかし…世の中には弱点を克服できない者もいる。
どうしても弱点を克服できず、そのままにして
目前の課題から目を逸らそうとするもの。
そういう事件があった。
１９７９年１２月２３日の新聞に以下の記事が載った。
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帳簿の恨み、会社に放火
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記事によるとこういうことだ。
東京都千代田区神田にある資材会社で、
ボヤ騒ぎがあった。
誰でいないはずのビルの一室から煙が起き、
警察が駆け付ける事態になった。
その後の調べで、火事は放火とわかった。
放火したのはその会社に勤めるＹ（４０）。
調べによるとＹは１２日午前８時ごろ
事務所内のくずかごの中に灯油を撒き、
ライターで火をつけた。
そのため事務所内で机や椅子、天井や壁のほか
帳簿類などが全部焼けた。
動機に対してＹは、
「今年１月から帳簿を扱う総務係長になったが
計算をよく間違え、部長に怒られた。
帳簿を燃やせば、怒られないと思いやった。」
と述べている。
４０歳で、新しい仕事を割り振られ、
慣れない仕事でミスがかさみ、上司に怒られ、
それを苦に放火騒ぎを起こした。
確かに焼けた面積は９㎡ほどだが、
帳簿類は全焼している。
帳簿が無くなれば、怒られなくて済む。
そう考えての犯行だった。
帳簿が無くなっても、仕事は無くならないと思うが
よっぽど帳簿整理の仕事が向いてなかったんだな。
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係長 向いてない
係長 俺には向いてない
係長 こんなデスクワークは
係長 数字とニラメッコするとは向いてない
係長 大体、なんで俺がやる？
係長 もう４０歳なのに
係長 今年の１月からこの仕事だ。
係長 急に異動になって
係長 こんな仕事を押し付けられて
係長 これまでと畑が違う
係長 それは無理だろう
係長 これまで入社以来、現場を回り
係長 お客様と膝を突き合わせて
係長 信頼を獲得してきた
係長 その俺が…人ではなく数字に
係長 無味乾燥な数字に振り回され
係長 日の当たらない机の上で
係長 帳簿と格闘している。
係長 いつも外回りで真っ黒な顔をしていたのに
係長 室内ばかりにいるから色白で
係長 妻にも…「病気？」って
係長 心配されたぞ
係長 体の負担は遥かに少ないが
係長 心の負担は比べ物にならない程
係長 悪化した！
係長 それで帳簿を間違えると
係長 部長に俺が怒られる
係長 確かに外回りではよく怒られた。
係長 取引先にも気難しい人がいて
係長 よく怒鳴られた
係長 それも俺が原因ではなく、
係長 部下の尻拭いもよくやった
係長 でも…不思議なことに
係長 部下のために頭を下げるのって
係長 全然悪い気がしないんだよね。
係長 何故だかわからないが、
係長 嫌いじゃなかった。
係長 でも…帳簿を間違えて怒られるのって
係長 最悪だ！
係長 まるで上司じゃなくて、
係長 帳簿に怒られているようだ。
係長 ふざけるな！
係長 上司ならまだしも
係長 帳簿に怒られるなど
係長 あってはならない
係長 だから…
係長 燃やしてやる！
係長 思い知ったか
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思い知ったのは係長だったな（笑）。
まあこんなことを言っているわｋではないが、
帳簿のことで上司に怒られるのは苦痛だった。
じゃあ…
間違いなければ
いいんじゃね？
それでも間違えるというのは
彼には帳簿整理は向いていなかったのだろう。
向いていない仕事をするのは
大変だったろう。
◎もっと向いていないこと！
ところで事件が起きたのは１２月１２日
そして逮捕されたのは１２月２２日
逮捕まで
１０日余りたっている。
つまりすぐには犯行がバレなかったのだ。
それがバレたのはなぜかというと、
彼自身に問題があった。
犯行は１２日の午前８時だが、
彼は朝早く会社に行き、火をつけて、
一旦抜け出して近くの喫茶店で時間を潰した。
そして３０分ほどたってからもう一度行って、
「今来ました」という顔をして出社した。
しかし煙に驚いた人たちが、
既に部屋の前に集まっていた。
そしてＹは鍵を使って中に入ったが、
その後の現場検証で、当日の新聞が
中にあったことがわかった。
もちろんＹが持ち込んだものだ。
彼はうっかり最初に出社した時、
新聞を持ち込んでそのままにしていた。
この１点だけでも十分怪しかった。
それ以外にも彼は…
その後の社内での火事の話題の時、
急にオドオドしだした。
同僚が何気なく話題にしても、
落ち着かない様子になっていた。
出社する前に置かれた当日の新聞紙
帳簿類だけ完璧に燃やしている手口
火事の話題に取り乱す男
謎は全て解けた！
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同僚 火事から１０日か。
同僚 まだ犯人は捕まらないのか
同僚 こっちは困っている
同僚 早く捕まって欲しいなぁ
同僚 なあＹさん
犯人 おっ、おう！
同僚 ところでおかしなことがある
同僚 新聞が入っていた
同僚 刑事に聞いたんだが
同僚 その日の新聞が机の上にあったとか
同僚 つまり誰かが、あの部屋に入っていたんだ
同僚 そう言えば、最初に入ったのはＹさんだよな
犯人 おっ、おう！
同僚 何か気が付かなかった？
犯人 なっ、なに…も…！
同僚 そうか？
同僚 Ｙさんが入った時に新聞があった
同僚 つまりその前に誰がが入り、
同僚 新聞を持ち込み、そこで火をつけた。
同僚 でも…どうして新聞を持ち込んだか
同僚 警察では最初、火をつけるためだと思ったが、
同僚 それなら必要はない
同僚 くずかごには紙がたくさんある
同僚 それに火をつければいい
同僚 大体、新聞なんてなくても
同僚 火をつける紙などいくらでもある
同僚 事務所には書類が山ほどあるし、
同僚 カレンダーやポスターなども貼ってある
同僚 それに火をつければいい
同僚 大体、灯油を持ち込んでいるんだから
同僚 新聞を持ち込む必要はない
同僚 これは謎だな。
犯人 まっ…まあいい…じゃないか？
同僚 それにまだある
同僚 なんで帳簿だけ燃やしたのか？
同僚 事務所は９㎡焼けたが
同僚 くずかごの周囲だけだ。
同僚 しかし帳簿だけは完璧に燃えている
同僚 これはおかしいだろう。
同僚 帳簿なんて燃やしても
同僚 一銭の得にならんぞ
同僚 まるで帳簿を恨んでいたように
同僚 帳簿だけを完璧に燃やして
同僚 何をしたいんだ？
同僚 ねぇ、Ｙさん、どう思います？
犯人 さっ、さぁ？
同僚 あれ？Ｙさん、顔色が…。
同僚 何かありましたか？
犯人 そっ、そんなことより…
犯人 今年の紅白はどっちが勝つかなぁ？
同僚 ……………………！
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こういう感じだったようだ。
これはバレるわ！
こうしてＹは放火の罪で逮捕された。
まあ帳簿整理が彼に向いてなかったのは
間違いないが、
それ以外にも不向きなものがある。
それは演技力だ！
もう少し動揺を隠せれば、
捕まらなかったのかもしれない。
まあ帳簿だけではなく、
犯罪にも
向いていなかったな。
でも…それはイイことだ（笑）！