支倉常長とゆかいな仲間達 ~エスパーニャへ第1巻~ | MITSUのブログ

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ニューヨークの路上で鍛えられたBlues Manの日記。

慶長18年(1613年)、徳川家康は江戸幕府を開き、世の中は徳川の時代と呼ばれていた。

その頃、東北地方では伊達政宗が仙台藩の藩主となり本州の北を治め、民衆は平和な時代を謳歌していた。

そんな新しい時代の始まり、支倉六右衛門常長は青葉城に呼ばれたのだ。

常長は政宗の家臣の一人だが、右腕という重要な地位ではなく、どちらかというと、その他大勢に位置する、まあどこにでもいるような侍。

以前は、重要な地位を任されていたのだが、政治の陰謀の渦の中、あらぬ罪を被せられ失脚し、今では半分罪人のような身分に落とされた。

だから、突然のこの事態に少しの戸惑いがあった。

「とうとう我が身も島流しにされるのか・・・」

城に着くと、すぐさま政宗に謁見させられた。

殿の前で深々とお辞儀をし、頭を上げてみると、なぜか見慣れぬ異国人の姿が隣に見受けられた。

誰なんだ。この青い目の男は?

「この者は、エスパーニャ人のフランシスコ会宣教師ルイス・ソテロ。常長よ、この者と共に海を渡り、スペインとローマへ向かえ。そして、通商交渉をしてくるのだ。将来、それがこの北の大地・仙台藩を潤す事になるだろう。これは非常に重要で、危険な任務だ。しかも、迅速に遂行しなければならない。わかるな?」

「・・・!?」

突然の展開に、脳みそがフル回転しだした。

どういう事だ。
これは島流しということなのか?
いや、通商交渉と言っている。ということは、使節団ということか。
というか、ローマってどこなんだ?それにスペイン?
海を渡れ?
もしかして、殿はあの異国人に騙されているのでは?
いや、あの政宗様が間単に騙されるわけはない。
どうなっているんだ。
考えろ!
そうだ、どちらにせよ、オレに選択はないということか。
しかし逆に考えれば、これで成功を収めれば、支倉の家柄もまた返り咲ける。
千載一遇のチャンスではないか!
よし、常長、お前は立派な侍だ、堂々と返事をするんだ。

「仰せの通りに。」

「よく言った、常長よ。船は仙台港にすでに用意してある。ガレオン船サン・フアン・バウティスタ号だ。身支度をし、旅立つのじゃ!」

かくして、支倉六右衛門常長の長い長い旅が始まったのであった。

つづく。