日本古典文学大系
紫式部日記
紫式部日記
御前の池に、水鳥どもの日日々々におほくなりゆくを見つつ、入らせ給はぬさきに雪降らなむ、この御前の有様いかにをかしからむと思ふに、あからさまにまかでたるほど、二日ばかりありてしも雪は降るものか。見どころもなきふるさとの木立を見るにも、ものむつかしう思ひみだれて、年ごろつれづれにながめあかし暮らしつつ、花鳥の色をも音をも、春秋にゆきかふ空のけしき、月の影、霜雪を見て、そのとき来にけりとばかり思ひわきつつ、いかにやいかにとばかり、行くすゑの心ぼそさはやるかたなきものから、はかなき物語などにつけてうち語らふ人、おなじ心なるは、あはれに書きかわし、すこしけどほきたよりどもを、たづねてもいひけるを、ただこれをさまざまにあへしらひ、そぞろごとにつれづれをばなぐさめつつ、世にあるべき人かずとは思はずながら、さしあたりて、はづかし、いみじと思ひしるかたばかりのがれたりしを、さも残せることなく思ひしる身のうさかな。
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