糖尿病で維持透析中の患者さん
が入院してきました。採血データを
みると、HbA1cが5.9%と正常範囲
内でした。
ところが、内服薬を確認するとDPP4
阻害薬を服用していました。コントロ
ールは非常によいのに、なぜDPP4
阻害薬を継続しているのでしょうか?
糖尿病のコントロール目標として
HbA1cが使用されるのはご存じの
通りです。過去1~2か月の平均血糖
値を反映する便利な指標です。
ところが、一般的に透析患者さんは
HbA1cが低くなって、平均血糖値と
解離することが知られています。
ですから糖尿病のコントロール指標と
しては不適とされています。
HbA1cは、すごく単純に言うと砂糖
漬けのヘモグロビンの割合のことです
が、これは平均血糖だけでなく赤血球
寿命にも関連があります。具体的には
出血や溶血性疾患、肝硬変のときに
低値になります。
透析患者は透析による失血(回路内の
残血など)や出血、エリスロポエチン
製剤による幼弱赤血球の増加などの
影響でHbA1cが低値、つまり過小評価
になるのです。
参考文献:糖尿病治療ガイド2022ー2023