そもそもなぜ私がここまでの境地に至ったのか?
それは中村が会社のお金を着服したのがきっかけだ。
中村は私が経営するリフォーム会社の社員で3ヶ月前に営業マンとして入社してきた。
初契約になったお客さんの工事が終わり、私が集金に伺ったらお客さんが驚いた顔をしてこう言った。
「え?工事代金なら昨日中村さんが集金に来て、78万円全額もう払いましたけど?」
お客さんは、領収書を持ってきて私に見せてくれた。
領収書は会社の使っているものではないが、会社のゴム印が押されていた。
会社の印鑑は押されてなく、中村の印鑑が押されていた。
一瞬、頭の中が真っ白になった。
「あっすみません、私の勘違いでした。ちゃんと確認しないですみません」
そう言うのが精一杯だった。
急いでお客さん宅を出て車に乗った。
頭の中がぐるぐる回った。
少し時間が経ったとき、これは中村が入社してからずっと計画していたことだとわかった。