フェアレディZが50年前から変わらない理由について
聞いたはなし
その時どきに発売されて注目を集めているクルマをピックアップして、
モータージャーナリストとF1氏のふたりで試乗して評価を語り合ったり、開発者にインタビューしてそのクルマが生みだされた背景にある狙いや考え方について議論するといった構成で、クルマの番組としてはオーソドックスなものだったと思う。
その仕事で担当したなかで、クルマとしても番組としてもいちばん面白く印象深かったのがフェアレディZだ。
今日、206のイグニッションコイルを交換するために栃木県に行った帰り、抜群にトルクが増してレスポンスの良くなった愛車で高速を走らせていたらそのことをふと思い出した。
アクセルを微かに踏むとクルマがグッと前に出る体感が、撮影用に日産本社から借り出したフェアレディZのトルクに溢れた乗り味を思い出させたのにちがいない。
番組では、フェアレディZという歴史的なクルマを扱うのに、最新モデルに乗るだけではつまらないと思ったので、多少予算を奮発して1970年頃に製造された初代モデルと乗り比べてみたのだが、これが面白かった。まず最新モデルを元F1氏に試乗してもらい、駐車場に戻るとサプライズで初代が待っているという趣向で、楽しい現場になった。
その初代フェアレディZにももちろん試乗してもらったのだが、「半世紀前から乗り味が変わってない!」と元F1氏大感動。
いろんなメーカーのいろんなクルマで何本も番組をつくったけど、元F1氏があんなに本当に楽しそうに運転しているのを見たのは私の知る限りゼットの回だけだった。
試乗後、開発チーフとのインタビューでF1氏がその感動をぶつけると、チーフエンジニア答えて曰く「いまの開発チームの皆がそれぞれ若い頃に背伸びして初代ゼットに乗っていた奴らばっかりで、その愛してやまなかったフィーリングを全員で共有しつつ最新型のセッティングを追い込んでいくんだから、代が変わっても不変なのは当たり前なんだよ。」と話してくれて、それは良い話しだなあと思った。
「あのクルマのあの感じ」。そういう体験を持つことが出来た人がいわゆるクルマ好きになっていくのだろうし、いろんなクルマを乗り継ぎながらもずっと、「あの感じにもういちど出会いたい」という憧れを抱きながらその後を生きていく。
それまでZなんて全然タイプじゃなかったけど、それでも乗って楽しく嬉しい車との出会いだった。
たぶんそれは作り手が「あの感じ」を求めるピュアな思いがこもっているからで、日本車でこういう物語を持っているモデルはそうそうないだろう。
まあ、これも結局のところ「私は古い車が好き」という話でしかないのかも知れませんけど。






