スーパーカブの旅からの着想。

学生時代のおわり、海外に行ったことがないまま社会に出るのがためらわれて、1年間の旅に出ることにした。というか、もともと大学を卒業したらそういう時間を持とうと決めていて、何年生の頃からだったか、意識して旅の資金を貯めながら暮らしていた。

その旅のために買ったのがホンダスーパーカブ90で、大阪のバイク屋さんがずらりと並ぶ通りの店で新古車が安く出ていたのを見つけて手に入れた。

 

英語圏から始めるのがやり易かろうという、さして深く考えてもいない考えで、イギリスから始めてヨーロッパを巡ることにし(最終的には冬を越すために北アフリカまで足をのばしたのだけど)、まずは船便でロンドンにスーパーカブを送り、この小さなバイクに乗って2001年から2002年まで旅をした。

 

スーパーカブはシンプルな構造で、エンジンのついた乗り物がどのように走り、止まるのかが自然に理解できる。ガソリンと空気の混ざったガスを、プラグの火花で着火して爆発させて回転を生み、車輪を走らせる。トラブルといえばパンクくらいで、それも自分で直すことができる。歩くように土地を見聞したい。そういう急がない旅には最高の相棒だった。

 

 

初めて所有したプジョー205も80年代に開発されたクルマだけあって、基本構造はスーパーカブ並みにシンプルで、エンジンルームの景色からいろいろ勉強することができた。

 

205が教えてくれた事のなかでいちばん印象深く、いまも忘れないのが電装部品が健康であることの大切さだ。

ある年の正月、大学のある神戸から岐阜の実家まで帰ろうと出発すると、すぐにエンジンの動作が怪しいことに気付いた。信号待ちや低速走行でアイドリングが安定せず、アクセルを踏んで回転数を上げるとエンジンが安定する。幸い、家のすぐ近くに高速のインターがあったので岐阜までずっと高速走行になり、高速を降りたあとの下道は2速の高回転で引っ張りながら走って、なんとか実家までたどり着くことができた。

 

到着したのは真夜中だった。

205の状態を確かめようと、エンジンを点けたまま暗いガレージで手探りしながらボンネットを開けてエンジンルームを見ると、闇のなかで青いスパークがあちこちからほとばしっている。無数のミニチュアのカミナリみたいでそれはそれで綺麗だったのだけど、その光景で、アイドリングが安定しなかった理由がすぐ飲み込めた。

青いスパークが出ていたのはイグニッションケーブルの表面。その樹脂被膜が劣化して電気がだだ漏れになったことで、プラグに火花を飛ばすための電流が弱りに弱っていたのだった。

弱い火花はエンジンの出力を弱くする。

 

 

この経験をして以来、電気系統のことはいつも気にかけるようになった。どんなクルマでも、リフレッシュしたいときはまずプラグとイグニッションケーブルを新品に交換する。

206はケーブルではなくイグニッションコイルなのだが、今回、純正ではなく純正よりも1.5倍高い電圧で火花を飛ばしてくれる製品を装着してみた。この効果が素晴らしかった。

 

 

 

周辺の生活道路を走るとき、ごく低速のときの1速、2速の力が明らかに増していてノッキングする気がしなくなった。それに3速も強くなって、これまでは2速に落として登っていた坂でも3速で行ける。

 

高速道路でも強い火花の効果をはっきりと体感できる。

3000回転100km/h前後の巡航時に速度を微修正する時のレスポンスが抜群に良くなり、アクセル操作量が少なくて済むので乗りやすさが倍増した。とにかく全域でトルクが分厚くなっているのがはっきり感じられる。

 

それに、エンジンの振動がグッと減って滑らかに動くようになったので、これまで車内に伝わっていた微振動も感じなくなり、運転がずいぶんと快適になった。

教訓:強い火花はエンジンの出力を強くする。