★★★★★★★★★★
1987年 92min.
ネタバレ ラストはナイショです。
敬称略
監督 ジョン・ヒューズ
製作総指揮 マイケル・チニック、ニール・A・マクリス
製作 ジョン・ヒューズ
脚本 ジョン・ヒューズ
音楽 アイラ・ニューボーン
ニール・ペイジ:スティーヴ・マーーティン
デル・グリフィス:ジョン・キャンディ
スーザン・ペイジ:ライラ・ロビンズ
マーティ・ペイジ:オリヴィア・バーネット
ニール・ジュニア:マシュー・ローレンス
オーウェン:ディラン・ベイカー
ドゥービー:ラリー・ハンキン
ウォルト:リチャード・ハード
ガス:チャールズ・タイナー
レンタカー受付:エディ・マックラーグ
タクシーを取り合う人:ケヴィン・ベイコン
ほらね、やっぱりこうしてつい最近観た映画となんらかの関係のある作品をクジで引くんですよ、ということで、「ときめきサイエンス」からわずか3本目にしてジョン・ヒューズつながり、ということになりましたよ。
本作はジョン・ヒューズの代表的コメディともいえる完全にお笑いに徹した映画、と言えますかね。ただこれ、ジョン・ヒューズの盟友とも言うべきジョン・キャンディが出演してるってのはなんとも悲しいことではあります。ジョン・キャンディが早くに亡くなってジョン・ヒューズが映画の一線から退いた、というのは有名な話で、だからほんとにもったいないというかなんというか、であります。
ジョン・キャンディ、享年43歳……。太り過ぎの心臓発作ということですね。わたしこの訃報を聞いたとき絶句でしたからね。若すぎますよ。若すぎるし、いい役者さんでしたから、もうどうしようもなく悲しくって悔しくって。けっこう泣いたのを覚えてます。
ジョン・キャンディとジョン・ヒューズの最初の接点は、ヒューズ脚本による「ホリデーロード4000キロ」。その後ヒューズ脚本「ミスター・マム」を経て本作、となります。で、ここから「大混乱」(ヒューズ脚本)、「おじさんに気をつけろ!」(ヒューズ監督)、「ホーム・アローン」(ヒューズ製作、脚本)、「オンリー・ザ・ロンリー」(ヒューズ製作)なんてずっと一緒に仕事してたんですよね。いまだにわたし、ツライです。
本作、ほんとはものすごく面白い映画なんですけど、そういうことでわたしいつも物哀しい気持ちになってしまいます。お二人のご冥福をお祈りするしかないのですが、現代映画界にこの二人がいてくれたら、ってつい思ってしまうわけです。ザンネンでなりません。
て、あ、すみません、気を取り直して。
内容は、あるサラリーマンの男が感謝祭を妻と子供の待つ自宅のあるシカゴで過ごそうと、単身赴任先のニューヨークから帰省するのですが、普通の帰省だったはずがある男と知り合ってしまったために道中次々と災難に見舞われる、という話です。その災難に合う男をスティーヴ・マーティン、「ある男」をジョン・キャンディが素晴らしい演技で演じてくれている、という映画なのですね。あ、念のためいっときますけど、ジャンルはれっきとしたコメディでありますよ。
↑スティーヴ・マーティン。
↑こちらはカメオ出演、「フットルース」のケヴィン・べイコンです。
開始早々この二人のタクシーを取り合うというバトルで本作の方向性が示されるわけですね。おお、ジョン・ヒューズ・ワールド全開やな、というわけです。それどころか、この後のスティーヴ・マーティンの会話、次のタクシーをまた別の人と取り合うことになるのですけれども、「50ドル出すから譲ってくれ」って言いますとその相手が「50ドルも出せる人なら75ドルにしよう」と。それに対してスティーヴ・マーティンが「泥棒か」って言うと相手が「近いな、弁護士だ」って言うんですよ。こういう会話の遊びも本作では随所にちりばめられてましてね、パワーアップしてるやん、ということでワクワク度が増す、というわけです。ご本人もそうとう楽しかったのだと思いますよ。つかみとしては完璧なわけです。
で、けっきょくそのタクシーは、75ドルも払って譲ってもらうことになったのに、そうこうしている間にちゃっかり別の人間に乗っ取られますね。それが、
↑こやつ、ジョン・キャンディなわけです。
もうたまりませんね。ここから次々とこやつがまとわりついてくるわけです。
この時代、スティーヴ・マーティンとジョン・キャンディって言ったらもうすっかりスーパーコメディアンですからね、楽しみしかないじゃないですか。ワクワクがとまらないわけですよ。
タクシーの取り合いは、シカゴ行きの飛行機に乗り遅れそうだから、ということだったのですけれども、
↑けっきょく飛行機遅れる、という。
あるあるなんですよ。よくある話じゃないですか。でももう最初っから引きこまれてますから、こういう普通のことでも笑えちゃうのですね。せっかく急いだのに、て。
↑自宅の奥さんに「10時までには帰る」て電話してます。
わたし実は2000年9月11日に発生した東海豪雨の被害にあってます。車で被災しましてね、軽自動車だったんですけど、冠水した道路でプカプカ浮かぶという事態になりまして、当然車の中は浸水して、汚れた水でその後体調を崩して長期療養した、て経験してるんですけど、それ当時の職場だった建設中の中部国際空港(通称「セントレア」)から自宅に帰る道中でしてね。通常2時間で帰れるところ8時間半かかりましたよ。でその時にわたし家に電話してるんですけど、「10時(22時)までには帰れるかな」って言ってましてね。それを思い出しました。まあ映画とは関係ないです。
閑話休題
で、なんとか飛行機に乗ったらファーストクラスで予約したのに航空会社が間違えてエコノミーになってしまい、その隣がやっぱり
↑こやつという。
まさに災難ですよ。原題はぜんぜんそんなこと言ってないんですけどね。
↑けっきょく欠航になってあわててみんな公衆電話に並んでます。
まあ今じゃケータイがありますからこういう描写もこの時代ならでは、ということではあります。映画は歴史だなあとちょっと思いました。
さて、空港からはタクシーでジョン・キャンディが予約してくれたモーテルに二人で向います。タクシーはなんか怪しい宗教めいた飾り付けで不穏な空気を醸し出してましたがそこではなにも起こらずに着いたモーテルで事を起こすってのもうれしい裏切られ感ですよね。そこらへんはすっかりジョン・ヒューズの術中なわけですね。
↑ダブルベッドでした。
↑二人で苦笑いです。
同様にアセるふたりがまたいいんですよ、これが。
↑奥さんの写真を見るジョン・キャンディ。
↑長い出張ですからね、こうして家族の写真を持って歩いているのですね。
このシーンはちゃんとラストへの伏線になってます。こういうのがすごくうまいんですよ。ジョン・ヒューズが認められた理由じゃないかとわたしは思ってます。
↑若干ウーキー族なのかと思ってしまいましたが……。
↑小さいタオルで背中拭いてます。
先にシャワー浴びたジョン・キャンディが、備え付けのタオルのほとんどを使ってしまったために、小さなフェイスタオルしか残っていなかった、てことですが、ここはスティーヴ・マーティンの真骨頂ですかね。
やってることといい表情といい、もう完璧ですよ。笑うしかないです。そりゃクルーゾー警部に抜擢されるわさ、なわけですね。
↑なんかジーン・ハックマンに似てるなあと思いました。
それ思ったら、声も似とりましたよ。
↑もひとつ同じシーンでのジョン・キャンディ。
ここね、ひとつ前の写真と同じシーンの出来事なのにちゃんとしっかり表情が違うんですね。ここではスティーヴ・マーティンに人格否定的なことを言われてるんですけど、この表情が秀逸なんですよ。わたし泣いてしまいました。圧巻ですのでね、ぜひ観てみていただきたいところではあります。そもそもコメディやる人って演技はうまいのですけれども、群を抜いてる気がします。
そうかと思わせといて、でもやっぱり笑いも全開です。
↑ここから、
↑ここまでのシーンも
めっちゃ笑えます。スーパーコメディアンが二人そろってるとこんなに楽しいのか、と。明らかに日本のコメディとは質が違うので、新鮮でいいです。
↑ジョン・キャンディ、タバコ吸ってたのかあ、と。
映画の中とはいえ、こういうのが寿命を縮めたのだなあと思うと悔しさがつのるというものでもあります。だれか止めてくれてさえいたら、って。言ってもしゃあないんですけどね。
↑ロードムービー的な感じもパロディ味があっていいですね。
で、加えてこれまたアイラ・ニューボーンの音楽もいいんですよ。
↑ここのオーウェン登場シーンでの音楽は、やってくれるわ、て感じです。
このあとなんとかかんとか電車に乗ることができたのですけれども、席が別々になってこれで別々に行動する、ということになりますね。まあけっきょくそうならないことはわれわれ観客はわかってるんですけどね。で、スティーヴ・マーティン、
↑別れる時に“Interesting.”て言っとります。
日本語訳では「楽しかった」てなってましたけど、ニュアンス的にはちょっと違いますかね。直訳すると「興味深い日だった」てことですからね、「楽しかった」をちょっと皮肉めかしている感じなのですけれども、でも相手は傷つけない、的な。言葉のチョイスもいいわけです。
↑でも乗った電車は止まりますよ。
で、
↑降りて歩くことになります。
向うの国道から出るバスに乗る、ということなのですけれども、
↑けっきょくふたり一緒になるという。
スティーヴ・マーティンがジョン・キャンディに駆け寄るんですけど、そりゃやっぱり一人じゃ心細いですからね、どれだけ迷惑かけられててもこうなりますかね。流れもムリはないです。
バスではふたりの性格がモロに出てきます。
↑ジョン・キャンディがバスの中を盛り上げてます。
それに対して
↑盛り上げられなかったスティーヴ・マーティン。
対照的なのがいいですよね。特にジョン・キャンディがじつはイヤなヤツなんじゃなくって、やっぱり人に好かれるんだ、っていう描写がたまりません。脚本力がハンパないわけです。
↑レンタカー屋の受付嬢(?)、エディ・マックラーグ。
ここではまた言葉遊びで魅了されます。
けっきょくジョン・キャンディとは別れてレンタカーに乗れることになったスティーヴ・マーティン。でも空港から送迎バスで送ってもらったレンタカー屋の駐車場には借りるはずの車はなく、だからいったんまた先ほどの空港のレンタカー事務所に戻らなきゃならないのですけれども、送迎バスはもう行ってしまってますからしかたなく雪の長い道を滑りながら転びながらなんとかかんとか歩いてレンタカー屋に戻りましてね。で、ボロボロになったスティーヴ・マーティンの姿を見てのエディ・マックラーグ、“Welcome to America.”から始まって、スティーヴ・マーティンの“fuckin’ ”の連発、最後エディ・マックラーグの“You fucked!”まで笑いっぱなしでした。たまらないです。
で、
↑やっぱりこやつと会う、という。
もう拍手喝采ですね。で、ここからは車でのふたり旅、となります。まあ要するにやっぱりロードムービーなのですね。
↑ここで開始1時間弱です。
ここらへんになるともうすべてが伏線となってる気がして目が離せないです。相変わらず会話も楽しいですし。
で、
↑外へ捨てたはずのタバコがこうなって、
さあヤバいぞ、とワクワクするのですね。そもそもだって運転がジョン・キャンディですからね、ワクワクしない方がおかしいというものなのですね。
タバコの火で車内が暑くなって着ていたコートを脱ごうとして袖がひっかかって、
↑さすがのジョン・キャンディもアセります。
爆笑案件ですよ。まあなんとか切り抜けましたけど。
こんなね、楽しくて面白くって、イカす映画、ジョン・ヒューズにしか撮れないですしね、だからもう二度とこういう映画には巡り合えないんだろうなと思うと、なんかいろいろたまらない思いになります。
しかもこの車のシーンは、ここの袖がひっかかったシーンをなんとか切り抜けてひと段落、じゃないんですよね。もう一波乱ちゃんと控えてるわけですよ。一難去ってまた一難、なわけで、珍しくいい邦題になってますね。本作の日本の配給会社の人たちはほんとにジョン・ヒューズとスティーヴ・マーティン、ジョン・キャンディが好きな人たちだったんだろなと思うとまた違ったところで感慨深かったりもしますね。
↑ふたりの後ろで煙あがってます。
こういうのもおもしろいですよ。ジョン・ヒューズってすっかりコメディ監督なんだなと思わせるにはもう十分すぎるほどですね。作品群みるとバリバリのコメディというわけではないのですけれどもね、だからこそのいい意味での裏切り感がまたたまらないわけです。
でそのあとの間違えば死亡事故になるような場面での
↑これにはもうわたしハラ抱えて笑いました。
映画館で観てたときは座席で涙流してのたうちまわりましたね。館内も大爆笑でした。
ただわたし今回は違う意味で泣いてしまいましたけどね。笑いながら寂しくてたまりませんでした。
↑マーティン・フェレロも出てます。
「ジュラシック・パーク」でご紹介しました。わたし「モレノやん!」て言いましたよ。
ところでここらへんでわたしふと思い返したんですけど、やっぱりケータイがあったらずいぶん違ってたのでしょうかね。まあ大雪とか圏外とかでケータイ使えなくするってのはできないことではないでしょうけれど、本作公開時はもともとケータイというものの存在すらなかった時代ですしわたしはその時代を知ってますからね、やっぱりだから違和感ないんですよね。当時観たときはすごくもどかしかったのを覚えてますよ。
↑モーテルに泊まるお金がなくってボロボロの車で一夜を過ごすジョン・キャンディと
↑それを部屋から見るスティーヴ・マーティン。
スティーヴ・マーティンもお金はなかったですけど、高級腕時計をモレノ氏に献上することで部屋に入れてもらったのでした。
でもね、けっきょくスティーヴ・マーティン、ジョン・キャンディに救いの手を差し伸べるわけですよ。やっぱりふたりともいいヤツなのですね。これこそがジョン・ヒューズの妙、なわけですよ。観ているこっちはすっかりふたりに感情移入しちゃってるわけです。
↑お互いの妻に乾杯、と。
↑それに呼応するジョン・キャンディ。
家族はいいよね、つらい旅だったけど家族のもとに帰れるから乾杯だ、てことです。ただこのシーンは、二度目以降に観るときはいろいろ複雑な気持ちになります。ていうか、泣けますね。初めて観たときはまだジョン・ヒューズもジョン・キャンディも健在でしたし、ラストのオチはわからないわけですから、このシーンではいいシーンだな、で終わってラストで号泣ってことだったのですけれども、2回目以降はもうここらへんから号泣です。たぶんふたり(ジョン・ヒューズとジョン・キャンディ)が亡くなってなくても号泣だったと思います。一粒で二度も三度もいろんな思いをすることができる、珠玉の名作と呼ぶにふさわしいとわたしは思います。
↑この笑顔にも意味があるわけです。
↑マイケル・マッキーン!
本作はこうしたカメオ出演も秀逸です。もう最高の映画なのですね。
↑そしていよいよ別れのシーンとなります。
ここはもうすっかり感情移入してますから、ものすごく寂しかったですね。ただこのシーン、ほとんどがジョン・キャンディを映してましてね、これがラストへのいざないになってるわけです。なんかジョン・ヒューズのジョン・キャンディに対する思いがひしひしと伝わってきて、温かい気持ちになりました。
ということで、ラストは号泣です。特に今回はわたし今まで以上に泣いた気がします。わたしもいろいろ経験しましたしね。そこはなにがどうなったのかまだ未観のかたはぜひ観てみていただきたいと思うわけです。
加えまして、エンディングテーマも最高ですよ。劇中のセリフが歌詞になってます。でもってエンディングタイトル後までぜひお観逃しなく。
↑We love you , John!
今日の一言
「みなさん、身体はいたわりましょう」
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