★★★★★★★★★★
1993年 126min.
ネタバレ みなさんご存知の映画だと思いますので……。
敬称略
今さらながらの言わずと知れた感ですけれども、新作「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」がいよいよ公開されまして、初日に観に行きましたのですが、その観に行く前にとりあえず予習復習のために、それまでのシリーズ全5作を観ておこうと思い、まずは一作目から鑑賞、というわけでした。
本作公開当時は、「スター・ウォーズ」「E.T.」についで、全米興行収入第3位でしたね。その後次々と興行収入で抜かれて、現在は40位ですけれども、それでも1993年の作品が40位ってのは、これすごいことだと思いますね。興行収入ってやっぱりイコール人気、なわけですからね。ちなみにシリーズ第5作「ジュラシック・ワールド/炎の王国」が31位、シリーズ第4作「ジュラシック・ワールド」が8位に入ってまして、更に驚くべきことに、本年6月10日に公開されたばっかりのシリーズ最終作「ジュラシック・ワールド/新たなる支配者」がすでに52位に入ってます(2022年8月15日現在)。どこまで伸びるか楽しみですね。もひとつちなみに、歴代トップ10は、現在
10位 アベンジャーズ
9位 トップガン マーヴェリック
8位 ジュラシック・ワールド
7位 タイタニック
6位 アベンジャーズ/インフィニティー・ウォー
5位 ブラックパンサー
4位 アバター
3位 スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム
2位 アベンジャーズ/エンドゲーム
1位 スター・ウォーズ7 フォースの覚醒
となってます。マーベル作品はやっぱり根強い人気ですね。
で、本作。監督はスティーヴン・スピルバーグ、脚本はマイケル・クライトン、音楽ジョン・ウィリアムズ、とまあ今でも見劣りのしない、超一流のスタッフによる超一流の作品となってますよね。特に、原作のマイケル・クライトンが脚本にも参加しているわけですから、そらもう非の打ち所のない、ということなわけです。
音楽も、あいかわらず重厚でいいですね。現代でただ一人、「交響曲を作曲できる人」と言われているジョン・ウィリアムズ。まあ若干どれも似たような音楽になってまして、その昔は「スター・ウォーズ」と「スーパーマン」の区別がつかない、なんてこともありましたが、それはそれ、でもよく聴いたらちゃんとその映画に合っているわけで、わたしはジェリー・ゴールドスミスの次に大好きな作曲家さんですよ。
アカデミー賞に52回もノミネートされてて、これウォルト・ディズニーに次いで歴代2位だそうですけれども、それだけでも驚異なのに、その中で「屋根の上のバイオリン弾き」(これだけ編曲賞)、「ジョーズ」、「スター・ウォーズ」、「E.T.」、「シンドラーのリスト」の5作品で受賞しているというのはもう驚愕ですね。本作の曲はわたし、結婚披露宴の最初の入場曲に使わせていただきました。またまたちなみにですが、わたしの結婚披露宴は、すべての曲を映画音楽にいたしました。キャンドルサービスは「勝利への旅立ち」のテーマ(ジェリー・ゴールドスミス)、退場曲は「マネキン」のエンディングテーマ曲であるスターシップの“Nothing’s Gonna Stop Us Now”(愛はとまらない)なんて具合です。映画のビデオから録音しましまたので、臨場感があってとっても好評でございましたよ。(たぶん……
)
閑話休題。
本作ではもうご存知のように、CGが使われてますよね。1997年の「タイタニック」、2009年「アバター」というふたつのジェイムズ・キャメロンの映画でコンピューター・グラフィック、いわゆるCGが認知されたわけですけれども、じつはCGは、本作「ジュラシック・パーク」でその技術を映画界に浸透させたのですね。そういうところからでも、ハリウッド史に名を刻む作品なわけです。
冒頭ではわたし、マーティン・フェレロがいきなり出てきたのには笑ってしまいました。
↑弁護士(?)ドナルド役、マーティン・フェレロ。
わたくしこの方、80年代のドラマ「マイアミ・バイス」でよく存じ上げておりましてね、その時はほんとにロクでもない情報屋モレノって役でして、それがなんかこうしてビシッとスーツ着て現れたもんですから、思わず映画館の椅子からずり落ちそうになった、なんてことを思い出しましたよ。「マイアミ・バイス」当時もそうでしたけれど、スーツがあまりにも不釣り合いでして、けっきょく最後はティラノサウルスにふりまわされてバラバラになられてしまいましたね。モレノにはそれがちょうどいいのでしょう、きっと。
そんな感じで映画が始まりましたが、でもやっぱりスピルバーグ、もう画面の端から端まで、隅から隅まで、スピルバーグの色が充満してますよ。オープニングでの恐竜の魅せ方において、目だけで表すなんてところはまさに「ジョーズ」をほうふつとさせます。だからもうのっけからワクワクしてしまうのですね。
にしてもこのアイディアってのはほんとにすごいですよねえ、マイケル・クライトン。 琥珀に閉じ込められた蚊の化石の血液から恐竜のDNAを取り出して、そこから恐竜自体を作り出してしまうという。これがほんとにできるなら、現代の科学の粋を持ってすれば十分にジュラシック・パークは可能なわけですよ。ひょっとしてじつはもう秘密裏にやっているのかもですよね。劇中にジェフ・ゴールドブラムが言う「冒とく」という倫理観から公表されていないだけなのかもしれないわけですよ。そう考えると、この人のアイディアってのはこれから先も必要になってくると思われていたのでしょうが、2008年に喉頭がんにて、66歳であっけなく亡くなってしまいました。
「あっけなく」っていうのは、ほんとに突然に、って感じでしたのでね。ずっと私生活を公表されていなかったので、とつぜんの死亡記事でわたし、「ええっ」て言って絶句したのを覚えてますね。もうあれから14年も経つのですか……。心から惜しい方を亡くしたと思います。
出演は、サム・ニール、ローラ・ダーンと既出ジェフ・ゴールドブラムが主役の三博士なわけですけれども、なんか絵面を観ていたら、これ以上ない配役の気がしますね。もう風貌そのものが古生物学博士だし、数学博士なわけですよ。絶妙のキャスティングだと思います。
ていうか、このときローラ・ダーン、26歳ですかあ。若いのに演技上手いですよねえ。26歳には見えない貫禄がありましたよ、学者っぽい。そこでその演技力を持って体当たりで演技してますから、もう好感度しかないです。2019年のリーアム・ニーソンの「スノー・ロワイヤル」ではイヤなばばあのチョイ役でしたから、もったいなかったですね。 わたしこの人、1985年、エリック・ストルツ主演の「マスク」(ジム・キャリーの、ではないです)で初めて観まして、盲目の美少女を演じてらして、あまりの美しさにクラクラした覚えがありましてね。
不肖わたくし「ととつつ」が書く小説「ぼくの天使は真綿色(ぼくの天使は真綿色|恋愛小説|ととつつ - 小説投稿エブリスタ (estar.jp))」に登場する盲目の美少女メアリーは、なにをかくそうこのローラ・ダーンをイメージしたのでした。またよろしければ、そちらも読んでみていただけるとうれしいです。m(_ _)m
サム・ニールも、ほんとにこれ古生物学者じゃないのか、と見まごうほどのなりきり感です。この人、それまでは日本で公開された有名どころの映画はほとんどなくって、「オーメン/最後の闘争」とか「レッド・オクトーバーを追え!」なんて観たはずなのにわたし全然覚えてませんで、だから実質この映画で初めて観た、というお方です。これだけの演技ができるわけですから、もうちょっと日本でも公開すればいいのに、と思いながらも、あんまりこれまではいい映画に巡りあえてなかったのかな、なんて思ったりもしました。ローラ・ダーンと初めて恐竜を見ての驚く表情は秀逸です。
↑動のローラ・ダーンに静のサム・ニール。いい演技です。
ジェフ・ゴールドブラムもまさに適役でしょう。サム・ニールは古生物学でしたが、こちらは数学博士って、ほんとにそうなんじゃないかって思いますよね。科学者がよく似合いますね。おそらくハエになっちゃったからだと思うんですけどね。 わたし個人的には、「眠れぬ夜のために」の一般の人が好きっちゃ好きですけど。
↑数学者でしかないです。
さて、それ以外では驚きのキャスティングとして、リチャード・アッテンボローですか。わたし当時はこの人、監督でしか知らなかったんですよ。だって「ガンジー」でアカデミー監督賞受賞してるんですからね。その前年には「コーラスライン」も観てますし。もともとが役者だなんて、全然知らなかったものですから、キャスティングされてるの知ってほんとビックリしたものでしたね。
↑この時点ではさっそうと登場、て感じでしたけどね。
そのアッテンボローの孫の二人が、これまたかわいいことったらなかったですよ。 女の子のアレクシスはアリアナ・リチャーズ、男の子のティミーはジョゼフ・マゼロ。アリアナ・リチャーズは今年でもう42歳ですか!さぞやかわいらしい42歳なのだと思いますが、よく見たらなんか日本ハムファイターズの清宮幸太郎に似てますね。
↑なんかめっちゃかわいいです。こんな孫がほしいと思ってしまいました。
あとはサミュエル・L・ジャクソン!しれっと出てるのが笑えました。でもってしれっと死んで・・・・・・。当時45歳、遅咲きの彼はこんな役だったのですね。彼にとっても貴重な作品なのかもですよ。
↑存在感は抜群の風貌ですが……。
で、そうこうしてるといよいよこの先の混乱を引き起こす元凶となる、あのデブが出てきました。
↑ネドリー役のウェイン・ナイト。本名はめちゃめちゃかっこいいです。
最初のうちはなんかディズニーランドみたいな音楽が流れてて陽気な雰囲気でしたのに、このおデブちゃんが台無しにしてしまうわけです。まあ内容的には、そうでなくっちゃ、なんですけどね。この人がかき回さない限り、映画は成り立ちません。そう考えるとこのウェイン・ナイト、陰の主役なのかもです。上映時間半分残して恐竜に食べられちゃいますけど、でもそのシーンで観ているほうは溜飲が下がりましたから、ほんと貴重な存在ですね。
演出はもう言うまでもないのでしょうが、さすがのスピルバーグの安心感、というところです。スピルバーグが一番こだわったという、遠目で見るブラキオサウルスたちのシーンは、ジョン・ウィリアムズの曲もあって、圧巻でしたね。学者たちがコウフンしている様までしっかりと描かれて、そのコウフンが伝わってこちらも鳥肌が立つという。
↑ほんとにこんな場所があるようですよ。
今ではこういうシーンも含めて、全編CG、ってことになるのでしょうけれども、当時はそういうわけにもいかず、CGに加えて着ぐるみあったりアニマトロニクスあったりで、建物なんかも実際にセットで造ったりもしているわけですしね、こりゃそうとうな製作費だったんだろうなあ、って調べてみましたら、総製作費6,300万ドルですって。日本円にして約85億7千万円。これでもなんかベスト20にも入ってないそうですよ。1位は「パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉」の440億円と。もはや見当もつきませんね。 でもって本作の興行収入は全米で10億ドル、1,360億円。その差約1,270億円……。年末ジャンボ10億円が100回当たっても追いつかないって、どうのしようもありませんね。笑うしかないです。わたし、あんまりこの言い方好きじゃないですけど、敢えて言うなら「えげつない」ってとこでしょうか。
アッテンボロー対学者三人、特にジェフ・ゴールドブラムとの議論のシーンはこれまた見応えがありました。CGのシーンがスピルバーグなら、こういう議論的なシーンはマイケル・クライトンの面目躍如、というところでしょう。ジェフ・ゴールドブラムが言い放った、「自然をレイプする」というセリフは、わたし震えましたよ。
だからスピルバーグも負けてられませんね。学者たちがトリケラトプスと出会うシーンでは、ローラ・ダーンも泣いてましたけれど、わたしも感動して泣いてしまいました。
↑ひょっとして、本物じゃないってわかってても本気で泣いてしまったのかもです。
ところでわたし、この映画で初めてティラノサウルスのことを通称T-Rex(ティーレックス)というのだと知りました。トリケラトプスは英語ではトライセラトプスというのもこの映画で知りました。いろいろためになる映画でもあります。わたし56歳の今も、現役で野球でキャッチャーやってますけれど、このチーム、わたしが作ったチームなのですね。ずーっと野球が好きで、ほんとは高校でもやりたかったのですけれども、どうにも坊主にするのがイヤで水泳部に入った、と。ところが水泳部は、冬の間は陸トレしかできないものですから、オフになると軟式野球同好会に早変わりして、だから小学二年生の時の友達たちとの草野球からずーっと野球はやってたのですよ。でも、大学ではとうとう準硬式野球部に入部したものの、理系で授業が忙しくって、留年しちゃったこともありまして、2年生の前半で辞めてしまったのですね。で、そうなってくるとやっぱり野球がしたくてしたくてたまらなくなってしまいまして。社会人になって前田建設工業株式会社(昨年、映画化された「前田建設ファンタジー営業部」のあの前田建設です。じつはあのアイディアはわたしのものだというのは、今はもう誰も知らないことではあります)に入社して6年目、どうにも耐えられなくなって、わたしが発起人として野球部を作った、とまあそういうわけです。ただ、大手ゼネコンという職業柄みんな転勤が多くて選手が固定できませんでね、早いうちに同好会となり、今では前田建設の職員は一人しかいない中で、でも楽しく野球やってるのです。て、いったい何が言いたいかと言いますと、そのチーム名が「前田T-Rex」ということなんですよ。それだけの説明のために、長々とすみませんでした。
閑話休題。
さあ、で、嵐が来て元凶ウェイン・ナイトがあろうことか島の全システムの電源を切って、博士たちが恐竜たちの真っただ中に孤立させられて、なんてなってくると、スピルバーグの本領発揮ですよ。特に最初にT-Rexが現れるところは足音で表現してるのですけれども、これ明らかに「ゴジラ」のオマージュですよね。スピルバーグが初めて観た日本映画は「ゴジラ」だ、と、「ジュラシック・パーク」はゴジラを元にして作ったのだ、と公言してますからね。日本人としてはうれしい限りですよ。
↑まさにゴジラの恐怖、でありますね。
で、そのゴジラ=T-Rexが車を襲うシーンは、何回観ても緊張しますよ。手に汗握って、うわっ、とか、あああっ、とか言ってしまいます。
↑実際こんなことになったら失神しちゃうかもです。ホラーよりも怖いですよ。
並行してウェイン・ナイトも襲われてますが、早い段階でメガネを落としましてね。これ、目のいい人にはわからないでしょうけれども、目の悪い、しかもメガネしかかけたことのないわたしには、ほんとに恐怖です。絶望感しかないですね。もうムリ、ってなります。そういえばスピルバーグもマイケル・クライトンもメガネ派でしたか。そういうとこでもこにくったらしい演出ではあります。
こんな感じで、もうなにかひとつ事をするたびに危険があるんですよ。まったく気が抜けないのですね。もうほんと、だからスピルバーグはやめられないのです。
なんて思ってたら、その思いを見透かしたかのようにブラキオサウルスが歌うシーンが出てきますね。静と動の表現が絶妙でして、あれだけ怖かったのに、次の瞬間では感動しているという。感情操作されてるようですけど、それに身を任せるとなんとも心地よい時間が過ぎていきますね。まったくスピルバーグの映画は、麻薬なのですよ。
まあ若干ですね、電熱フェンスのシーンでは、いやもちろんここも緊迫のシーンではありますけれども、ただこれ、子供二人は間をすり抜けられるのではないか、と気づいてしまいました。まあ大勢に影響はないですし、実際にこんなことになったら本人たちも気づかないかもしれないのでいいんですけどね。
↑場所によっては、なんならサム・ニールも通り抜けられそうではありますが……。
さあ、そうこうしていよいよヴェロキラプトル2頭と孫二人との死闘が始まります。本作最大のヤマ場ですね。ここからはもう緊張しかないです。ラストまで気を抜かせず、一気に走り抜ける、そんな感じでした。
↑T-Rexよりはるかにちっちゃいのに、めっちゃ怖いです。
↑我がチームの象徴T-Rex。最後の最後もかっちょえかったです。
何度観ても、内容のすべてを知っているはずなのにいつもおもしろい。これぞエンターテインメント。わたしにとっては、興行収入どうあれ、「E.T.」「勝利への旅立ち」と並んでのベストスリーなのであります。
今日の一言
「いやスタントマン、がんばってたわ~」
最後に、警備主任のマルドゥーン役のボブ・ペック。53歳という若さで1999年にがんで亡くなられておりました。もともと舞台の方ですから、映画出演は少ないですけれど、イギリスのロイヤル・シェイクスピア劇団に所属しておられたので、演技力を買われての出演だったようです。ご冥福をお祈りします。