1987年 119min.

★★★★★★★★★

ネタバレ:アリだと思います。

敬称略

 

 

 監督 ブライアン・ブ・パルマ

 製作 アート・リンソン

 脚本 デイヴィッド・マメット

 音楽 エンニオ・モリコーネ

 

 エリオット・ネス:ケヴィン・コスナー

 ジム・マローン:ショーン・コネリー

 ジョージ・ストーン:アンディ・ガルシア

 オスカー・ウォーレス:チャールズ・マーティン・スミス

 アル・カポネ:ロバート・デ・ニーロ

 フランク・ニッティ:ビリー・ドラゴ

 

 

 今更ですけどね、名作ですよね。やっぱショーン・コネリー、です。アカデミー助演男優賞の名演技は、ハリウッド史上最高の助演賞だとわたしは思いますよ。間違いなく。

 

 ちなみにわたしの中のハリウッド俳優ベスト3は、

  ①    ジーン・ハックマン

  ②    ショーン・コネリー

  ③    リチャード・ドレイファス

 です。これは大学時代からずっと変わってませんね。

 

↑ジェイムズ・ボンドさんです。

 

 で、本作ですけど、映画の内容もそうですし、なにしろ出演者がスゴイですよ。

 

 ショーン・コネリーは別格として、主役のケヴィン・コスナーはこの映画で一躍スターの仲間入りをしましたよね。それまでは、けっこうなにぎやかし俳優でしたけれども、だからわたしもあんまり好きじゃなかったですが、この映画で大ブレイク、わたしもビックリなほどの演技を魅せてくれましたね。

 

↑昔も今も男前、です。

 

 チャールズ・マーティン・スミスは曲者俳優ですけれど、一番最初に死んじゃいますが、その存在感は素晴らしかったです。

 

↑憎めない感じが素敵です。

 

 ケヴィン・コスナーよりもこの映画で大ブレイクしたと言えるのがアンディ・ガルシアでしたよ。まさにアメリカン・ドリームってやつじゃないですか。イタリア系の顔してますけど、出身はキューバ、と。そういう神秘的なところもなにやらかっちょえいですよね。2年後の「ブラック・レイン」で日本でもファンが急増しましたしね。それも当たり前と思えるほどの演技力と存在感なわけです。

 

 それと、これはほんのチョイ役なんですけれど、新聞記者の役でチェルシー・ロスが出てます。神様ジーン・ハックマン主演の「勝利への旅立ち」で初めて見てから、なんかチョイチョイいろんなとこで、ほんとにチョイチョイって感じで出てます。このブログでも「スペル」で紹介してますので、併せてお読みいただけると幸いです。まあ「紹介」って言っても「チョイ」ですけどね。

 
 

 

↑こちらのお方です。

 

 で、忘れてならないのが、いや忘れませんけど、大御所ロバート・デ・ニーロ。言わずと知れた感はショーン・コネリーと同じですかね。「デ・ニーロ・アプローチ」と言われる、役の人物に合わせるように体重や容姿をコントロールする、ってやつは有名でして、本作でも役柄のアル・カポネに合わせるために、前髪を抜いて撮影に挑んだそうですよ。ザンネンながら、直後に別の映画の撮影があったために体重のコントロールはできず、ボディスーツを着たそうですけれども、それがなければ間違いなく体重も増やしていたことでしょう。日本では同じように鈴木亮平が「デ・ニーロ・アプローチ」的なことやってますけれど、わたしはでもこれ、やってほしくないです。俳優としての寿命を長くしてほしいと思えば、身体に負担はかけてほしくないですよね。鈴木亮平はまだ若いんですから、ムリはしてほしくないと思うわけです。

 

↑え、ザキヤマ? じゃないですね。

 

 音楽もすごかったですね。エンニオ・モリコーネ、さすがですよ。

 

 イタリアの人で、昔は主にイタリアの西部劇、いわゆる「マカロニ・ウエスタン」の映画音楽を手掛けてましたが、80年代からハリウッドに進出してきた方です。まあ、才能ある方ですから、ハリウッドがほっておかなかった、てことなんでしょうね。本作でもアカデミー賞にノミネートされてますが、わたしとしては「遊星からの物体X」が好きです。

 

 本作でのアカデミー賞授賞式で、ノミネート者の紹介をするときに、プレゼンターの故パトリック・スウェイズが「エンニオ・モリ、モリオーン」て言い間違えてましたが、まだよく知らなかったんでしょうね。その後の躍進ぶりにはパトリック・スウェイズもビックリしたことでしょう。

 

 にしてもこれ、禁酒法が施行されていた時代のアメリカの話ですけれど、まあこの禁酒法って、ほんとにヒドイ法律ですよね。歴史的にどうこうはこの際置いておきますけど、いやこれお酒を法律で禁じられたらそらみんな怒るでしょうよ、って下戸のわたしですら思いますよ。わたしで言ったら、コーヒーを禁じられるみたいなことですからね、生きていけませんね。

 

 まあなんか実際には、けっきょくこの映画みたいに法が執行されることはほとんどなくって、違法酒場みたいなのはそこかしこにあったらしいですけれど、そこらへんは映画とは関係ないです。

 

 で、もひとつ映画と関係ない、と言えば、アル・カポネの逮捕に至るアンタッチャブルのお話は、現実とまったくかけ離れているそうですよ。ので、実話をもとにしてはいますが、内容はまったく実話ではないそうですので、普通にエンターテインメントとして楽しみましょう、ということだそうです。

 

 映画ですからね、それでいいです。「実話をもとにしている」てとこは間違ってないわけですしね。

 

 要するにこの映画、「禁酒法」ってものがアメリカの歴史にとっていかに悪法だったのかっていう風刺作品なんだと思いますよ。こんなアホみたいな法律を命がけで必死で守る役人がいて、犠牲者まで出して守り抜いて、で、半年後にこの法律が消滅するという。劇中でも、チャールズ・マーティン・スミスも、ショーン・コネリーでさえ隠れてお酒、飲んでましたしね。

 

 映画全体に目を向けますと、冒頭ケヴィン・コスナーの登場シーンはちょっともったいぶりすぎでしたかね。主演はケヴィン・コスナー、てみんな知ってますから、なにもそんなにじらさんでも、と若干イライラしましたよ。でもまあ、監督はブライアン・デ・パルマですからね。たいそうな映画を大仰に撮るひとですから、まあそれはそれでデフォルトなんでしょうけれども。「ミッション:インポッシブル」の監督さんと言えばおわかりでしょうかね。

 

 でも話の流れはわかりやすくていいです。

 

 のっけから10歳の女の子を犠牲にして観る側の怒りをあおっといて、ケヴィン・コスナーが最初の任務で大失敗、それを取り返すように人手を集めて手柄を立てて、いつしかヒーローに、と。流れは王道中の王道、シンプルにわかりやすく、すんなり世界観に入れますよ。

 

 なにしろですね、ケヴィン・コスナーが若干32歳にして、もうこれ演技がうまいんですよ。これが「ファンダンゴ」「シルバラード」に次ぐ、メジャー実質3作目とはとても思えませんね。「ファンダンゴ」と「シルバラード」は同じ1985年の作品で、本作はその2年後になります。本作と同じ年に、神様ジーン・ハックマンと共演した「追いつめられて」って映画にも主演してますけれど、こちらもすばらしい存在感で、1986年にいったいなにがあったんや、て、それがものすごく気になりますね。映画には出演してないのですよ、1986年は。出演作が一本だけアメリカで公開されてますけど、1979年に撮影されて公開が凍結されていた映画ですので、ほんとに空白の一年なわけです。なにがあったんでしょうね。

 

 そんなケヴィン・コスナーとは対照的に、われらがショーン・コネリーの登場シーンは、しびれるくらいシブかったですねえ。わたし、鳥肌たちましたもん。こんなかっこいい57歳がどこの世界にいるか、って。わたし来年同い年ですわ。あ、でもそれ考えると、わたしはまだまだシブくはなりたくないですね。なんとか若さをたもつよう、ゴマセサミンを飲む毎日なのであります。

 

 アンディ・ガルシアのスカウトシーンは、映画史に残さなければならないと思ってしまうほどの名シーンです。こうやって一人ずつ仲間を増やして最強チームを作る、ってのは真っ先に「荒野の七人」が浮かびますけど、人数は少ないですけどそれと同じですよね。わくわくしちゃうのです。

 

 そして、デ・ニーロ。もうこの人がスクリーンに現れるたびに、観てる方にも緊張感が漂いますよ。ものすごい存在感なのです。話的には事実とは違うと言いましたけれど、アル・カポネはアメリカNo.1の敵と言われてたそうですから、やっぱりこんなふうだったのですかね。もしそうなら、このアル・カポネの「ずっと緊迫感」は周りの人にとってはそうとうなストレスになりそうですね。現代社会ではすぐにパワハラと訴えられる案件です。

 

↑パワハラ、通り越してましたけど……。

 

 それらすべてをたばねて一本の映画にする、なんて演出は、考えたらやっぱりデ・パルマにしかできなかったのかもですね。なにしろ入り込ませ方が秀逸なんですよ。

 

 まずセットの美しさに目を奪われるのです。こんなブログの写真ではまったく伝わらないと思いますので、ご興味あったらぜひ映画で見ていただきたいのですけれど、まあなにしろの当時の完コピは素晴らしいです。お金かかってんだろなあ、なんて野暮は言いませんよ、素直に素晴らしいと思えるのです。

 

↑魅せ方も秀逸で、ほんとうに素晴らしいシーンでした。

 

↑ベタですけど、これもわたしの好きなシーンです。

 

 ちょっとだけ西部劇を取り入れているのも、なんらかのこだわりなんでしょうかね。でも全然イヤミなく楽しめますよ。映画ファンならもうたまらない演出なのです。

 

 で、そうこうしてるとチャールズ・マーティン・スミスが死んじゃいます。じつはここまでもけっこうみなさん薄氷踏んでるところもあって、いちいちハラハラしてたのですが、イヤな予感もなくいきなり殺されてしまう演出は、ベタなホラーよりも怖かったですね。そもそもチャールズ・マーティン・スミスがものすごくいい人で描かれてましたから、劇中の登場人物と同様に悲しみ、怒りがわく、という。

 

 デ・ニーロはデ・ニーロで、これでもかってくらいとことん悪人になってますし、みんなの必死さがひしひしと伝わってきて、もうすっかりこの世界の住人となっている自分に気づかされる、というわけです。すばらしいです。

 

 そしていよいよ、ショーン・コネリー殉職ですよ。わたし、当時これ観てて、まさかショーン・コネリーは死なないだろう、って思ってましたよ。まあ願望だってことはわかってましたけど、でも死んでほしくなかった。殺し屋が狙ってるってことも、最後の最後までわたしは、ショーン・コネリーはちゃんとわかってて、どんでん返しをくらわすに違いない、って思ってたんです。防弾チョッキだってちゃんと着てる、と。まあ、一度はうまく裏をかきましたが、その裏の裏をかかれてあえなく銃弾を、防弾チョッキを着ていない全身にこれでもかと撃ち込まれて、と。わたし、めっちゃ泣きました。映画館で、人目を忍んでしゃくりあげて泣きましたよ。だからアカデミー賞受賞の報を聞いたときは、わたし狂喜しましたね。

 

↑アカデミー賞授賞式でもここのシーンが紹介されてましたね。

 

 ただし、です。ただし、ショーン・コネリーには酒を飲んでほしくなかった。悪法だってわかってても、とことん法を守るのがこの映画でのショーン・コネリーのはずですから、やっぱりあのシーンだけは余分だったのではないかと思うわけです。ここでザンネンながらひとつ減らしたのですね。オペラを見て涙するデ・ニーロと血だらけで床を這うショーン・コネリーの対比がすさまじかったので、その直前の酒を注ぐシーンが、ほんとにもったいなかったと思うのです。

 

 そして大団円の駅でのシーンは最大の見せ場にして秀逸。ここぞというところをスローで魅せるところはもうなんか、小にくったらしいほど感動しましたよ。溜息しかでませんでしたね。デ・パルマは当たり外れが大きいとわたしは思ってますけど、本作は、大当たりということですね。

 

↑これも有名なシーンですね。静と動がうまく融合されてます。

 

↑しびれるくらいかっこよかったです。

 

 そして緊張感が若干薄れて、最後の裁判所屋上での殺し屋と対峙するシーンは、ほっと一息ついたあとの、最後のもう一回の緊迫シーンで楽しませてくれました。あれだけ怖そうだった殺し屋が、最後の最後で「口は禍の元」を実践してアホになるのが笑えて、もうなんかなにからなにまで楽しませていただける珠玉作、というわけです。

 

↑禍は空から降ってくるのです。

 

 そのあとのケヴィン・コスナーの“Here endeth the lesson.”(授業終わり)の一言は、わたしこの映画二度目の涙を流すこととなったのでした。

 

↑泣ける写真です。

 

 

今日の一言

「書類はもっとちゃんとていねいにカバンにしまいなさい」

 

 

レビューさくいん