2009年 99min.

☆☆☆☆☆☆★★★★

ネタバレ:有

敬称:一部途中からアリ

 

 とりあえず、あ、サム・ライミかあ、ということで、じゃあおもしろいかも、と期待は膨らみましたね。でもその期待は、冒頭すぐに裏切られることとなりました。

 

 まあなにしろばあさん、キモいです。いや、そこらへんがサム・ライミだろ、と言われれば、それはそうかもですけれども、いやいやでもやっぱりちょっと「死霊のはらわた」のキモいとは別次元なわけで、不快感しかないです。ばあさんワガママやし……。

 

 オープニングはね、まあちょっと「スパイダーマン」的な、アニメーションですよ。最後に出てくる絵が、楳図かずおみたいで笑ってしまいましたけれどもね、ホンワカ雰囲気はここまでです。 

 

↑楳図先生も草葉の陰で喜んでおられることでしょう。て、あ、まだ生きている?失礼しましたぁ……。m(__)m

 

 そもそもですよ、主役のアリソン・ローマンは当時30歳で銀行の次長にならんとしていて、その彼氏のジャスティン・ロングは当時31歳で大学教授、アリソン・ローマンの銀行の同僚のレジー・リーは当時35歳で新人、て、いやいや設定おかしないか、てことですよ。びっくり

 

↑なんなら学生にしか見えません……。ガーン

 

 なんかレジー・リー、ドラマ「グリム」ではめっちゃいいヤツだったのに、ここではそんないい人オーラはどこへやら、ウザいことこの上なく、おいおいなんて思っていましたら・・・・・・。

 

↑左がレジー・リー。ニコニコ

 

 借金返済できずに家を追い出されてしまうのでなんとか待ってくれと、まあドラマじゃよくある設定で銀行にやってきたばあさんが、キモいキモい。

 

 いえね、よく見たら上品そうな顔はしてますよ。まあ役者さんですからね、ほかにどんな映画や舞台やドラマに出てるかは知りませんけれども、上流階級の女史なんて役をやったりもしてるのかもですね。でも、そんなキャリアをドブにでも捨ててきたかのように、入れ歯はずして掃除したりタン吐いたり、持ってきたハンカチに吐いたタンをぐりぐりして糸ひかせたり、なにしろ見ていて反吐が出そうになるわけですよ。しかも、けっきょく待ってもらえなくって住むところなくなったと決定してからの逆ギレぶりはハンパなく、要するにばあさんは呪術師か魔女かってことなんでしょうけれども、逆恨みも甚だしいわけで、これじゃ神もホトケもありゃしません。

 

↑上品そうですよね。ショボーン

 

 その後いったん収まったかのように見せかけて、ばあさんが逆恨みの相手であるアリソン・ローマンを待ち伏せする、ってまあ王道の展開を見せますが、なぜばあさんがアリソン・ローマンの車の中で待っていられたのかはナゾです。まあ話的にはそんなことはどうでもいいわけで、魔女ならなんでもアリでしょ、ってくらいのものなんでしょうね。わたしとしては、細部にもこだわってほしかったですけど、ホラーならどうでもいいか、って気もしないでもないです。

 

 いやまあ、それにしてもキモいです。何度も言いますが、全世界の「キモい」を選りすぐったかのように、キモいです。

 

↑なにも入れ歯が飛ぶシーンをこんなして観せんでも……。スロー再生でしたよ。えーん

 

↑ベッドで寝てて寝返りしたらいて、

 

↑馬乗りになられてなんか吐き出しますよ。ガーン

 

↑体当たり演技、ってやつですね。ドクロ

 

 もちろん、ばあさんの境遇はかわいそうですよ。それはわかります。自分の出世に目がくらんで、ってわけでもないですが、まあそれくらいの下心があってつっぱねたアリソン・ローマンではあったわけですけれど、それはそれで仕方ないですし、自分の落ち度も考えずただ逆恨みして入れ歯すっ飛ばしながら呪いをかけるなんて、やっぱやってることは無茶苦茶なわけで、だから共感はこれっぽっちもできないわけです。

 

 なんてそうして観ていたら、ジャスティン・ロングもなにやらウザくなってまいりましたよ。彼女の言うことは全部ウソだと思っててまったく信用しないし、男前でもないし……。

 

↑男前、でしょうか……。キョロキョロ

 

 ので、とりあえず前半は、ホラー映画というよりは、ただただウザい映画、として進行していってしまうのです。

 

 だってなんにしたってアリソン・ローマン、呪われる謂れはないじゃないですか。理不尽にもホドがある、ということなのですね。

 

 逆にアリソン・ローマンが健気に頑張ってる姿に好感を持ってしまうほどです。

 

 で、映画が中盤にさしかかってきますと、音でビビらすというホラー映画の邪道(とわたしは思ってますが)演出の多用に気付きますね。これはでも、サム・ライミっぽいっちゃぽいですよ。「死霊のはらわた」でも思う存分使ってましたからね。でもやっぱりわたしはこれは好きではないです。巨匠なんですからサム・ライミ、もうちょっと腕で勝負してほしいと願うのはわたしだけなのでしょうかね。

 

 日本の、頭のトチくるった映画人がサム・ライミのことをなんの脈絡もなく「侍・ミー!」などとほざいていたあのころとはワケが違うんですからね。プンプン

 

 で、しばらくするとアリソン・ローマン、ジャスティン・ロングに安定に信じてもらえず、しまいにはPTSDで片付けられそうになります。ここでわれわれ観客は、健気なアリソンちゃんが誰にも頼れず一人で苦しんでいる姿を見て、かわいそう、という同情が芽生えてくることに気付かされますね。びっくり

 

 けっきょくなんだかんだでサム・ライミの思うつツボにハマっているような気もしますが、なのでつまらない映画、というわけでは決してないのですね。

 

 直談判しにいくところだって、共感持てますよ。やっぱりこれだけ行動力がある子なら、それもアリでしょうよ。そしてその呪いを解いてくれの直談判は、ばあさんが死んでしまったという事実で霧消し、救いのない結果にわれわれ観客は愕然とする、というサム・ライミ・ワールドに引きまれてゆくのです。ガーン

 

 開始47分後あたりはもうけっこう緊張しながら観てるわけですけれども、そんなところでふっと現れる「Baby hang on」のポスターがけっこう笑えたり、なんてのはまさにワールドですよ。

 

↑かわえいです。照れ

 

 オープニングでは子供にだって容赦なかったですし、いけにえと称してアリソンちゃんが平気で、飼ってたネコ殺すし、で、いけにえを捧げたことによってなんかスッキリとした顔してるし、なにからなにまで無茶苦茶なのですが、ここまでくるとそれがなんか痛快で、こちらも腹オチしてるという、もう感情がどうなってしまっているのかさっぱりわかりません。

 

↑アリソンちゃんの鼻血ブー攻撃は強烈でした。笑い泣き

 

 で、後半に向けてジャスティン・ロングの父親に、これはこれはお懐かしい、のチェルシー・ロスが登場してきますね。まあわたしにはうれしい限りですが、ただ「いい人」の役ってのはいまいちピンときませんでしたね。ほんとは「いい人」なんでしょうけれどね。

 

↑いじわるそうな顔ではあります。てへぺろ

 

 で、物語は佳境に入ってきますと、まあ当たり前ですけど、いけにえはなんの役にも立ちませんで。

 

 いけにえを差し出せ、なんてガセネタ流したのは、アリソンちゃんがたまたまみつけた街の占い師、なんかどっかで見たようなって感じのインド人、ディリープ・ラオなんですけれども、だからアリソンちゃんに「いい加減なこと言ってんじゃねえぞ、クソがぁっ!」的にやつあたりされて、かわいそうではありました。ま、笑えますけどね。爆  笑

 

 こうして、観てる方の感情の整理がつかず、そのままエンディングへと進むわけです。まさにサム・ライミ・ワールド、なんでしょうね。知らんけど。チュー

 

 けっきょく最終的にはジャスティン・ロングがアリソンちゃんに全面協力して悪のばばあの怨念と戦うわけですが、お前いまさらなに言うとんねん感満載なのは否めませんね。最初っから信用したれや、てことでしょうよ。

 

 ラストの大団円も、やっぱりサム・ライミです。対決の場所がちょっとタワテラ(東京ディズニーシーのアトラクション「タワー・オブ・テラー」の略です)っぽくってキンチョーしようとしたら、本物のヤギが出てきて笑わせてくれたりして、こうした、キモい→コワい→笑い、の繰り返しはさすがですね。(あ、「ホーンテッドマンション」も出てきてました)

 

↑なんか笑えます。笑い泣き

 

↓でも次の瞬間にはこーんな怖くなってます。

 

 で、最後の最後、誰をいけにえにするか、って話になります。そうこなくっちゃ、ですよね。観客もみんな考えますよ、きっと。死にそうな老人とか、実は悪事を働いていたレジー・リーとか。そう、ここからがサム・ライミのほんとうの腕の見せどころ、なんでしょうね。

 

 けっきょくいけにえに選ばれたのは、「あ、そうきたか」となりました。ちょっと反則っぽいですけど、まあそれはそれでアリではありましたかね。

 

 で、ラストはまあ、そらそうやわな、でエンディングロールへと突入したのでした。

 

 あまりにキモいのと、エンディングが読めてしまったので☆6つとしましたが、キモいの平気な人は観てみるのもいいかもしれませんね。ウインク

 

 

今日の一言

 「留学中にハワイの映画館で『死霊のはらわた』観たとき館内大爆笑だったけど、この映画はそれ以上なんだろな、きっと……」

 

 

レビュー さくいん