
玄関で寝るようになってからというもの、たいてい眠りはすぐ訪れた

なのに、今晩に限って、目は冴えたままだった

顔の上に手を置くと、閉じたまぶたの上で淡い光がちらちらした

追いかけてもその光をしっかり捉えることはできず、まるで逃げ水のように
逃げていくばかりだった

家の中には、賑やかな気配がちょっとだけ残っていた

晩酌相手を得たお父さんはずいぶんお酒を飲んだし、巧君も顔が真っ赤になるまで飲んだ

巧君とお父さんは、ずっとスポーツの話をしていた

「清原、どうなんですか?」
「駄目だな、清原は

西武で甘やかされちゃったんだ

でもいい選手だよ

もうちょっと努力すれば、すごい選手になったね
」「30代後半とかですよね?」
「そう、38
」「38で現役ってのもすごいですよね
」「うん、すごいんだ

本当にすごい選手になれたんだよ、清原は
」そんな感じで最初はずっと野球の話をしていたけれど、そのうち巧君はサッカーの方が好きなんだと気付いたお父さんは、話題をサッカーに切り替えた

こういうことを普通にやれるから、お父さんは出世できるのだろう

「ほら、彼、なんて言ったっけな

フリーキックがうまい選手
」「中村ですか?」
「いや、そっちじゃなくて

もっとベテランの
」「あ、三浦淳宏?」
「そうそう

三浦だ、三浦アツ

カズと同じ名字なんだよな

三浦って選手は、あれはどうなんだい
」「いい選手ですよ

でも、三浦、惜しかったんですよね

怪我しちゃって

その前だったら、世界でも通じる左サイドだったと思ってるんですけど

テクニックはあるし、キックもうまいし、フィジカルも強いし

でも怪我しちゃって
」つづく