上田市街地でイノシシ目撃 | 幸せ信州

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上田市街地でイノシシ目撃


 報道によると、1月31日午後3時40分ごろ、上田市材木町の市東小学校付近でイノシシを目撃したとの情報が市に寄せられた。その後、上田駅に近い上田市中央1でも目撃情報があった。上田署員が捜したが、見つからなかった。上田署によると、けが人の情報はない。

 

 

 

 

『ともぐい』 河崎 秋子著(かわさき あきこ、1979年 - )

 

  >>>熊と対比される人間の暴力性

 人間、そして獣たちの業と悲哀が心を揺さぶる。山奥の小屋で一匹の犬と暮らす孤独な猟師、熊爪(くまづめ)の目線で物語が展開する。熊爪は、アイヌの里で育った義父から山で生きる術を学んだ。森の歩き方、獲物の探し方や仕留め方、鉄砲の扱いや傷の手当て、犬の使い方。山暮らしが描写されている。
 熊を狩る。それはたやすいことではない。糞や毛の臭いから雄か雌か子熊かを嗅ぎ分ける。冬眠を終えて穴から出る雄熊の臭いは独特だ。それを知らずに熊を狩りへ身を守ることはできない。

 人間からみれば、熊の世界は残酷である。成長した雄は単独で行動し、複数の雌と交わろうとする。縄張り争いで、力ある雄だけが生き残る。繁殖のために子熊が殺され、食べられることもある。母熊は必死に子を守ろうとするが、圧倒的な力の前には無力だ。
 熊爪はそんな熊の世界に憧れを抱いている。熊のように一人」山に生き、山で死にたい、と。だが人間として生きていくには他人との交わりは避けられない。銃弾や塩や米を買うために町で獣肉や毛皮を売る。熊爪は何度も「面倒臭え」とつぶやく。そして人間社会の煩事に巻き込まれていく。
 さらに家族をもてば、その矛盾は深まる。雄熊のように割り切った生き方はできない。互いに気遣い、養い合う家族という人間的なケアの関係。そこは潜在的な暴力の現場でもある。著者は、山に生きる猟師の世界をロマン化して終わろうとはしない。語られてこなかった女性たちの姿から、熊と対比される人間の暴力性を浮かび上がらせる。
 時代は日露戦争の開戦前夜。町には不穏な空気が漂う。雄熊は自分の生存をかけ「ともぐい」する。人間の男たちは功名を競っておとしめ合い、関わりもない敵を殺すよう兵士を戦場に送る。誰も熊の残酷さに眉をひそめる資格はない。家族から戦争まで。熊のようには生きられない人間の逃れがたい暴力の根源が、冷徹に見据えられている。   (新潮社)
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 著者は1979年北海道生まれ、作家。「土に贖(あがな)う」で新田次郎文学賞受賞。